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空気のようにふわっと触れたジョシュアの唇。それはあまりにも柔らかくそして一瞬の出来事であったために、幻覚だったのか?気のせいだったのだろうか?そんな風にさえ思えてくる。
ドラキュラ
「殴るなよ………!」
サっとジョシュアが防御姿勢を取った。だが一向にクリスからの拳は飛んでこない。不思議に思ったジョシュアが両腕の隙間からクリスの顔を覗くと、彼はジョシュアを見つめたまま固まっていた。
ドラキュラ
「え……クリス?大丈夫?」
ミイラ男
「ジョシュ、どうしよ俺……」
眉を困らせ、泣きそうな顔をしてジョシュアに言った。
ミイラ男
「ドキドキする……。」
ドラキュラ
「うわぁーそんな可愛いこと言っちゃうのお前。」
ミイラ男
「もう何でもない、忘れろ!」
顔を赤らめたままプイっとそっぽを向いて腕を組むクリス。そんな彼を背中から抱きしめ、その耳元でジョシュアはこう囁いた。
ドラキュラ
「もう一回してみる?」
ミイラ男
「やだよ!恥ずい。」
ドラキュラ
「じゃあ、目瞑って。」
ミイラ男
「ほんとにすんの?」
ドラキュラ
「うん。」
キョロキョロと周りを見回し、誰も居ない事を確認するとクリスが目を閉じた。クリスの頬に、そっとジョシュアの手が触れる。包帯の生地に沿って、段々と唇に向かって親指を這わせていく……。ほんの少しだけ、部分的に見えているクリスの肌がジョシュアの本能をくすぐる。さっきの一瞬の不意をついた様なキスではなく、今度はゆっくりと、そしてしっかりと、クリスの唇を感じるながらキスをする。その柔らかさ、心地よい弾力、時より当たる歯の感触、そして温かく、いやらしくジョシュアの唇を濡らすその唾液……想像以上の快感を得る。ジョシュアの頭が段々とボーっとしていき、手が勝手にクリスの服をまくり上げ、その腰に巻かれた包帯を緩めていく……。
ミイラ男
「……ちょ、待て!それは無理だろ!」
瞬きをした直後、目の前にジョシュアの顔が迫る……。そしてジョシュアは、もう一度やさしくキスをした。
ドラキュラ
「クリス……俺のこと好き?」
ミイラ男
「好き………かな。」
ドラキュラ
「じゃあ、一緒になろうよ。」
なぜそこまでしてこの吸血鬼はミイラである自分にこだわるのだろうか?悪い男では決してない、だがはっきりとした理由も告げられぬまま、成り行きで付き合える関係でもない。こちらを見つめるそのグレー色の魅惑的な瞳が先程から答えを待っている。
ミイラ男
「……こんな俺でいいなら。」
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