12月23日

 今日は年内最後の登校日だ。明日から冬休み。出かける予定の人も多いみたいだ。僕も

明日は久山さんと出掛ける。今日まで別れ話をされなかった。僕は胸をなでおろす。これで明日の朝までに何事も無ければ無事デートできる。


 取り敢えず何事もなく放課後になる。改めて久山さんに明日のデートに向けて予定を確認しに行こうとか考えながら帰り支度をしていると、声をかけられた。宗像むなかた君だ。別にお互い顔を知ってる程度の仲だ。今更何か会話したりする事は無いはずだけど……何だろうか?


 「君が小竹君だよね?」爽やかな笑顔で宗像君は聞いてきた。敵意なんて一切感じさせない表情だ。実際僕を害する気なんてさらさら無いのだろう。


 「そうだけど……何?」でも、僕は宗像君が久山さんに告白しているのを知っているからどこかトゲのある言い方になってしまう。……僕は随分と性格の悪いヤツのようだ。


 「いや、ちょっとね。俺の想い人と君の想い人が同じ人だってうわさを耳にしたからさ、見に来たんだ。……恋のライバルがどんな人かを、ね。」


 「……宗像君なら僕なんて楽勝でしょ。」思わず皮肉っぽい言い方になってしまう。別に宗像君は悪くもなんとも無いのに。


 「いや、君を一目見て思った。俺は勝てそうに無い。」


 「……褒めたって何も出ないよ。」


 「おだててる訳じゃない。俺の本心だよ。」さっきまでのにこやかな顔とは打って変わって真剣な表情だ。


 「……宗像君とお付き合いできる女の子はきっと幸せだろうね。人を褒められる人って意外と貴重だからさ。」


 「それは小竹君も同じだと思うよ。……少しお話できて良かった。それじゃあね。」そう言った宗像君は颯爽と去って行った。……こんな人にだったらなびかれたとしても文句の一つも出せない。だからこそ……ジェラシーを抱いてしまったりする。……なんとも矛盾しているものだ。


−−−−−−−−


 宗像君と話している間に久山さんは先に帰っていた様だ。久山さんには待っていて欲しかったけど、僕達が付き合っているのは一応秘密の事。だから一緒に帰れるわけではない。そんな訳で引き留めて置くことはできなかった。明日の事で少し話をしたかったけど、まぁそれはしょうがない。


 スマホのメッセージアプリを使って改めて明日の予定を久山さんに確認してみる。すると『ちゃんと空けておいたよ。明日のデート楽しみにしている。』と返してくれた。ほっとしていると続けざまにもう一つメッセージが送られてきた。『明日、デートが終わったら話したい事がある。』と送られて来た。デートが終わったら話したい事。その文言で嫌な想像が頭を駆け巡ってしまう。ある訳が無いと考えつつも、もしかしたら別れ話かとどうしても思い浮かんでしまう。状況としても久山さんは宗像君に告白されて保留の状態のハズだ。多分明日のデートでどう振る舞うかで決めるつもりで言っているんじゃないか。そう思えてしまう。


 それなら、僕は全力で明日のデートを楽しんで貰えるよう頑張らねばならない。どんな結果が待ってようとも。

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