第2話 朱色の海

海辺の宿に入る。

静かに抱き合う。


部屋に食事が運ばれる。

一品、そして一品、皿が空になっていく。

やがて片付けられ、

テーブルには何もなくなる。


砂時計は進む。


慈しむような長い夜。

髪、肌、唇、、、記憶に刻みながら。


男は不確かな意識のなかで、

カーテンの隙間からもれる光に気付いた。

立ち上がり、

カーテンを少し開けて外を見る。


黄金の太陽が水平線から昇り始めていた。

海はあたかも夕陽のように朱く染まっていた。

波もない朱色の鏡。

砂時計は尽きた。

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砂時計 猫乃なみだ @kanete2

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