砂時計
猫乃なみだ
第1話 鶯色の墓
ステーションワゴンは高原を縦断する自動車専用道を走る。
アップテンポのダンスミュージックとは裏腹に、
助手席の女は無言。
女と男の手は重なり合い、触れ合う。
これが最後の旅行。
半年前に決めていたこと。
結婚することを許されない立場の男は、
まだ若い女の人生を棒に振る罪をこれ以上負うことが辛かったのだ。
女もそれに同意した。
半年間の砂時計はみるみる残りわずかとなった。
パーキングにクルマを停める。
ふと振り返ると、
フロントグリルに薄茶色の陰が目に入った。
近寄ってみると、
それは一羽の鶯であった。
飛翔中にクルマに突っ込んだのであろうか?
手に取っても鶯は眼を開けることはなかった。
男はパーキング脇の樹の下に穴を掘り、
動くことのない鶯を葬った。
冬の鉛色の雲。
砂時計の終わりを確かに実感した。
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