第46話 眞田小次郎と居酒屋へ

とにかく次も逢う約束する事が出来た。また会える、アキラにとってこれ以上の喜びはない。赤羽のマンションに帰ったアキラは、美代とのひと時の余韻に浸っていた。その広いリビングのソファーに横になって旅の出来事を思い浮かべてみた。その旅も松野早紀に振り回されて、なんの収穫にもならないような気がした。宝くじで大金を得たが為に本来の自分を取り戻せないでいる。ともあれこのままではいけない。こんな生活を続けて居たらいずれ美代に嫌われてしまう少し焦りもある。

もっとも宝くじが当ってなくても、あの警備員で長い年月と共に年を重ねて行くだけで、将来が明るい人生とは言えないだろうが。


 アキラは誰かに相談したかった。こんなにも貧乏人が大金を手にする事は辛いものなのか、いや辛いと言うよりも、この金を有効に使える方法に苦悩しているのである。他人から見れば、そんなは贅沢な悩みだ。の一言だろう。

 旅行に行く前に二千五百万円を使っていた。二週間弱の旅行で百五十万円の浪費。

あまりにも無謀な使いかたであった。

 こんな使い方をしていたら数年で使い切ってしまいそうだ。当選金額の一割近く使った事になる。それもまだ四ヶ月で。翌日に久し振りに真田小次郎と一緒に飲む事にした。

 真田小次郎の要望で、いつもの居酒屋に決まった。

 やはり銀座で超一流のホステスに囲まれてドンペリを飲む柄じゃない。いつものように、気さくに焼酎割りを飲む方が性に合っているらしい。長年親しんだ生活レベルを変える事は身体に変調をきたすだろう。子供の時に育った環境はなかなか抜け出せないもの。アキラはそれと同じで金の使い方が分らない。やっかいなものだ。居酒屋で待ち合わせ先に入っていたアキラは、そんな物思いにふけっている時、真田が居酒屋に入って来た。


「よう~とっちぁん久し振り! いやいや先日驚いたよ。よっ日本一のいや世界一の占い師」

「やっと俺の凄さが分かったか。久し振りじゃのう。相変わらずデカイのう」

「何を言ってんだ。身長が変る訳ないだろう。どうせ言うなら一段と男前になったなぁと言って貰いたいもんだぜ」

 二人は相変わらず冗談で再会が始まった。親子ほども年が違う二人だが呼吸が良く合う。アキラはビールを真田は焼酎の梅割りでグラスをカチンと合わせた。

「しかし驚いたなぁ、とっつぁんの占いにはピタリと当てるんだもの」

「だろう。こんな占い師、世界中探しても居ないぜ。正直、俺も驚いているけどな。ハッハハ」

「それってどう言う意味だい。あれはやっぱり、まぐれか」

「ヘッヘッヘどう思う? あのなぁそれ以上は聞くなよ」

どうやら予想通り、まぐれらしい。アキラは結局まぐれでも助かった訳で、真田に花を持たせる事にした。

「そうだ。あの彼女から電話がいったか」

「あっあ~帰りの船に乗っている時に、ヘヘッまぁとっつぁん飲めや」

「そうか、今時珍しいくらい、しっかりした子よなぁアキラと丁度いい組み合わせだと俺は思っているいけどなぁ」

 真田の言葉は、息子に彼女が出来たような言い方だった。決して、面白半分にアキラをからかって居る訳ではないようだ。アキラもその真田の優しさが嬉しかった。


つづく



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