第44話 坂本竜馬の末裔竜馬隊

 類は友を呼ぶと云うがヤクザの友はヤクザだった。

両側に整列した恰幅のいい男達、どう見てもその筋の人間達だ。

「ご苦労様です」と大きな声で、応援団のように両足を広げて腰を折り曲げ歓迎の儀式を受けて中に入った。

だが、そのヤクザ達より更に威圧感のあるアキラの大きな体格に彼らもきっと驚いている事だろう。中に通されると応接間と思われる立派な和室があった。

その広さは三十畳もあろうかと思われるほど広く床柱も黒光りしている。

上座にあたる正面には大きな掛け軸に『任侠道』と書かれていた。

大広間を通り過ぎて入った部屋は一転して二十畳ほどの洋室だ。豪華なソファーとテーブルが置かれてある。落ち着いたところで松野早紀が話し始めた。

「改めて紹介するわ。私の友人の坂本愛子。彼女とは高校時代からの親友なの。見ての通り愛子は私と同業者よ。でも彼女は六代目隊長よ。でも普通のヤクザ組織とは少し違うけど。あとは愛子が説明して私には難しいわ」


「山城さんって本当に大きい方ですねぇ、早紀も安心していられたでしょう。そうねぇ、訳があって父が亡くなってから私が引き継いでいるけどこの『竜馬隊』明治時代から、坂本竜馬の末裔と言われているの。同じ坂本の姓だから、竜馬隊になったかは分らないですが、まぁヤクザと言われてもしょうがない家業ですが表向きはテキヤ家業です。私達は任侠道を大事にしているわ。一般の方に迷惑かけない主義よ。地元にも貢献しているし街の人達にも信頼されて居るから今日まで続いてるのよ」

 「なるほど静岡の清水次郎長みたいな感じですね」

 「面白い例えね、同じ任侠でもあれほど町民に愛された人はいないでしょうる。私達も同じく街に愛される任侠を目指しています」

どうもアキラはヤクザと縁があるのか学生時代からだから、それほど驚く事もないが敵に回さなければ悪くはない人達だ。むしろ遊び相手としては飽きることがないだろう。

何はともあれアキラの役目は終った。松野早紀の旦那がこのあと、どんな行動を取るかは知れないが、なんたって坂本竜馬の末裔と言われる竜馬隊が付いてる。問題ないだろう。

きっと早紀を竜馬隊の威信に掛けて守ってくれるだろう。

坂本愛子から名刺と、立派な添え状を貰った。その添え状は山城旭なる男は『竜馬隊』の客人であり竜馬隊同様に手厚く、御持て成しを願います。と書かれてあった。

つまり何処か地の組に行っても厚い持て成しを受けられる有り難い添え状である。

 だがヤクザでもないアキラが、一宿一飯で世話になる事ないだろう。ただ最大の厚い誠意は嬉しかった。アキラは坂本愛子の丁重な御持て成しを後に竜馬隊を出た。

後にこの竜馬隊一行と再会する事になるのだが、それはまだ先の話。かくしてアキラは自由の身となった。アキラも色んな意味で収穫があった。

 旅に出る前のモヤモヤも消え、一路アキラは東京に帰る事決めた。


第二章 終 次回 第三章へつづく


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