第42話  一路、淡路から鳴門へ

「ゴメン遅くなりました。松野さん怪我はなかったですか」

早紀はあまりにも突然の救出に声もでなかった。

「いや昨夜はちょっと気分を変えて飲みに行ったら松野さんが居ないんでね」

早紀はヤクザの亭主の舎弟に捕まった以上、もう無理だと諦めていた。またあの夫の監視の下で玩具のような扱いを受けた生活に戻るのだと。

「ほっ本当に何度も助けてもらって……でもどうして分ったの」

アキラは困った。どうしてと言われても信じてもらえる訳がない。まさか占い師に占って貰ったなんて、しかも電話でだ。

「まぁそれは勘ですよ。ただの勘ハッハハハでも巧くいって良かったです」

車は花園から嵐山を左に曲がって川添えに走る西京極から国道一号線へ、其処から三十分ほど走り高速道路に乗った。

もうすぐ大阪に入る。またまた渋滞にはまったが、なんとか大阪から神戸に入って来た。まさか奴らは此処まで来ないだろうと思ったが、あの執念深さは侮れない。

彼等も組長の女を逃した。なんて事になったら手ぶらで帰れないだろう。


多分それほど怖い組長かもしれない。早紀でさえ怯えているくらいだから。

車は淡路島に入った。あの阪神大地震で多くの人が犠牲になった。もう十年以上が経つのに今も当時の凄さを物語る爪あとが残されている。

高台の原っぱには地震の亀裂が所々に見られる。淡路島は東京二十三区かシンガポールの面積とほぼ同じである。

その淡路島を一気に抜けると四国の玄関口、鳴門海峡に架かる鳴門大橋。

あの鳴門の渦潮で有名な場所だ。遊覧船が出ているがいつでも渦潮がある訳じゃない潮の流れによって違う。遊覧船は大人千五百円くらいで乗れるが決して高くはない。

それほどに見る価値があると言う事だ。アキラと早紀は船には乗らなかったが渦潮が見える高台の公園で車を降りて休憩を取った。観光地らしく沢山の店がある。

つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る