第41話  アキラ,ヤクザから早紀を救出成功

 おもわぬ朗報だった。アキラは心の中で彼女の事がモヤモヤと燃え上がっていた。

真田小次郎の占いはあまり信用出来ないが人間は信用できる。しかし今は真田を信じて、また逆戻りして京都に向うしかない。アキラは車に備え付けてあるカーナビを見た。

 京都の川が流れている所、そして川が交わっている場所……今出川・出町柳この辺しかなかった。アキラは目的地をナビに登録して京都へと車のスピードをあげた。

 車は今出川通りに差し掛かった。左に京都大学、右に知恩寺が見える。

 そこを過ぎたら私鉄の出町柳の駅がある。その先に鴨川? あった! ここで川が交差している駅、駅? もしかしたら。アキラは車を端に寄せると駅に走った。

辺りを見渡した……居ない? ……いや何処かで見た顔が? 居た! あの時の三人組の一人だ。まさに奇跡。いや天才真田占い師様。今はそんな気分だ。

アキラは、その男の後ろに廻り背中越しに肩を抱いた。仲間のように「おい俺だ」


 男は驚いて声をあげそうになったが。仲間どころか、あの時の大男が不気味な笑みをして立っていた。

「オイッ元気か! 動いたらこの場で絞め殺しぜっ」

 その一言で男はおとなしく首を縦に振った。蛇に睨まれた蛙と同じだった。まさか、まさかの大当たり。真田小次郎の占いが当った。大まぐれか、はたまた神業か。

占いは当るも八卦、当らぬも八卦と云われる。それが当ったのだから、不思議と云えば不思議だ。

「オイッ、姉さんは何処に居るんだ。案内しろ!」

どうして分ったのか、男は信じられない表情でコクリと頷いた。

アキラの怖さは充分に知っている男は逆らうことさえ出来ず素直に歩き始めた。

居た! この男の仲間一人が時刻表を見ている。長崎までの特急の時間を調べているのか? もう一人が松野早紀の腕を抑えている。早紀は顔を強張らせている。

アキラは小走りに二人に近づくと電光石火の如く早紀の手を取っている男の腹に強烈なパンチを浴びせた。駅には二十人ばかりの人が居た。余り見せたくない光景だ。アキラ男を殴っておいてこう言った。

「オイッ大丈夫か!」と酔っている友人を快方しているように見せかけた。


 意識が朦朧としている男を構内の隅に寝かせた。周囲の人は気分が悪いのかと思うだろう。もう一人は時刻表に気をとられていて気がつかない。アキラは素早く後ろに忍び寄った。

すかさずアキラの得意技が飛び出す。頭を取って自分の方に引き寄せ頭突きを喰らわせた。男は声を発する事も出来ずアキラの前に崩れ落ちた。この間数秒の出来事だった。

 早紀は何が起きたのかと後ろを振り返った。そこには大男が不敵な笑みを浮かべ手招きしている。アキラと早紀は脱兎のごとく走り出して停めてある車に辿り着いた。

周囲の人は唖然として倒れている男達とアキラ達を見比べた。まさにアキラの超が付く早業救出劇である。


つづく

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