第37話  有馬温泉

やがて四日市の怪しげな夜は、幻の如く平穏に終わった。朝食はバイキング式だった。早紀と顔があったが昨日の事など微塵もなかったように、「おはよう」と早紀。

まさに真夜中の顔と昼(朝)の顔は別の顔であった。何事もなく、何事もなく車は一路高知に向けて走り出した。アキラは四日市から高速道路に乗り入れた。

さすがに高速は早い。当初の目的地京都を通り過ぎた。本当はここで京都の秋を見物したかったのだが。でも車だと高知まで、あと一泊が必要だ。さて今夜は……

何故か、アキラは夜になるのが怖かった。早紀の夜の顔が怖いが嬉しい?

車は一気に京都を通過したが、そこから徐々に混みだした。

早紀がアキラの横顔を見つめる。その視線が熱い。

「ねぇ~お願いがあるんだけど少し寄って行きたい所があるの」

「えっ其処って何処ですか?」


  まぁよく引っ張り回し女だなぁ。それに付き合うアキラも暇だねぇ。

「あのね、有馬温泉なんだけど……駄目かしら?」

「いや僕は一向にかまわないですよ。暇ですから」

かくして予定変更、そう言えばまだ有名な温泉には入っていない。車で神戸から約一時間で有馬温泉に着くはずた。

その有馬温泉の付近で宿を探す。近く観光協会の看板が見えた。そこに行ったら親切に教えてくれた。アキラと早紀は今夜の宿となる真新しい観光ホテルに入った。

チェックインを済ませて取り敢えず、部屋に入る前にロビーで疲れを癒す為に二人はビールを頼み椅子に腰掛けた。その時、早紀と目が合った。

アキラはドキリとした。その瞳がメラメラと燃えているような怪しい視線?


つづく

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