第34話 二人旅はまだまだ続く

怖くて冗談も言えない。これ以上ここに居ては警察に通報される恐れがある。

アキラと早紀は気絶している三人を、そのまま残し車をスタートさせた。

「松野さん大丈夫ですか。あいつ等は松野さんの知り合いみたいだが訳を言って下さいよ。俺は刃物を出されちゃ黙っていられないでね」

まだアキラの怒りは収まってないようだ。身体は大きいけど、ホテルで見た気弱そうなアキラとは別人に見えた。車を急発進させた。アキラは、まだ苛立っていた

助手席に座っている早紀はアキラを見て怖さよりも男の逞しさを感じた。

早紀は知らないがこれで二回目だ。あの銀行強盗の時と同じだ。

アキラは浅田美代にケガをさせた事を未だに悔やんでいる。まだたまたぁ。

彼女の温情を踏みにじってしまって後悔している。


謝りたくても美代の電話番号も知らないし、職場に電話しては迷惑掛けるだけだ。そんな事を考えていたら助手席に座っている早紀が言った。

「あの~~本当に迷惑ばかりかけて御免なさい」

早紀が遠慮がちに言葉をかけた。

「いや、成り行きですから気にしないでください。それより事情を話してくれませんか、このままだと又、同じことが起きますよ」

「そっそうですね。先ほどの人達は主人の……組の人達で」

「組って? あのヤクザの組ですかぁ」

ほら見ろ、アキラやはり怪しい匂いプンプンしただろう。


早紀は組の話は出したくなかったらしいのだが。ネイさんとかアネサンと何度も呼ばれては察しが付いたろうと諦めてアキラに本当のことを話し気になったらしい。

「長崎で小さな組員二十人ほどの梵天(ぼんてん)組の組長が私の主人なんです。最初の頃は主人も優しかったけれど、最近では私に暴力ばかりで他に女を何人も作って、嫌になって逃げ出したんです。それで多分、組の人達を探しに来させたと思うのです」

 驚きはしなかった。普通ならヤクザと聞いて関わりたくないと思うのだがアキラは組と喧嘩する気はないがチンピラ二-三人なら恐くもない。 

「まぁ、そうかなと思ったけどね。でっこれからどうするのです」

「高知に友達がいるので其処にと考えていたけど、まさか組の人にこんなに早く見つけられると思ってなかったのよ」

どうもアキラは困っている人は、ほっとけない性格だ。特に女となれば尚更のこと、それに自分にはタップリ時間もある。

「じゃ松野さんは、どうしれば満足出来るのですか。俺がその願いを叶えてやりましょうか」

 あ~あ、アキラ本当にいいのかい知らんよ。ホントに。

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