第32話 現れたヤクザ3人

二人は名古屋名物のキシメン専門店に入った。しかし、しかし目線を合わせる事もなく二人は食べ終わった。

あのホテルでの騒動からは考えられない程、別人に見えた。まったく名を考えているやらサッパリ分からない。

何か物思いに更けて過去を思い出しているのであろうか。気性の荒い女であることは間違いないようだが。

アキラが支払いを済ませている間に早紀はアキラの車の方に向かっていた。

そこに突然、早紀の前に黒いベンツが急停車して男が三人出て来た。

「姉さん、探しましたぜぇ」

アキラは支払いを済ませて出てきたが見た光景に唖然とした。

「なんなんだ、こいつらは?」

どうも見ても堅気には見えない。多分ヤクザだろう。早紀の顔色が真っ青になっている。恐れていたものがやって来たかのように。

アキラの姿を見た早紀は、アキラの後ろにサァーと隠れた。こんどは驚いたのは三人の男の方だった。


突然ゴリラが現れたから、いやいや百九十八センチの巨体が現れたからだ。

「おっなんだ? テメェ姉さんのなんだぁ」

「姉さん? じゃあアンタは弟か」

「ふ、ふざけた事を言ってんじゃないぜ兄さん」

「兄さん? 俺には弟なんかいないぜ!」

相手は三人、しかもヤクザと思われる怖い男達にアキラは一歩も引かない。

 人相の悪い男達を怖がるどころか逆に、おちょくるアキラを無視して早紀に語りかける。

「この馬鹿と話しても無駄だ。姉さん帰りましょうや、組長が心配しておりますぜ」

「じょ冗談じゃないわ。帰ったら殺されるに決まっているんじゃないのよ」

穏やかじゃない言葉が飛び出した。どうやら危険な匂いがプンプンする。

 今度はアキラに向って男は吠えた。三人いるから有利と見て威勢がいい。

「でっ、オマエかぁ姉さんを連れ出した色男は」

「なんだぁ~? そんなに俺は色男かぁ、まぁそうかもな。やっと俺の魅力が分かったらしい」


アキラの冗談とも本気とも取れる言葉に三人の男は、おちょくられた事を知った。

「ふざけんじゃねぇ!!」

いきなり一人の男がナイフを取り出した。

「オイ! てめえらっ俺を本気で怒らせるんじゃないぜ、何があったか知らんが俺様に刃物を向けやがって刺せるもんなら、やってみな!」

「何を言ってやがる。オメィが少しデッカイからって甘くみてじゃないぜ!」

互いに啖呵を切った男のメンツに掛けても後に引けない。アキラは元々ケンカには強かったが、短期間とはいえ空手を身に付け更にパワーアップしたのだ。


つづく

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