第30話 謎の女登場

 かくして濡れ衣が晴れたアキラは再び車で一人旅が始まる予定だったが?

ホテルの駐車場に向かって歩き出したアキラの後ろから声が掛かった。

「ちょっと待ってえ~~~」それは先ほど問題を起した女性だった。

「さっきはゴメンナサイ。私、気が動転していて本当にゴメンナサイ」

 アキラはその女性をマジマジと見つめた。

年の頃は三十ちょっと。水商売でもしいる雰囲気もあるが、さっき怒鳴った時の態度は怖いお兄さんで尻ごみするくらいの迫力があった。

 多分、ホテル側もこの迫力に押されたのではないか。

先程まで、ムカついていたアキラも(ごめんなさい)に態度がコロッと変った。

もともと単純だから、すぐに許す。いい男……かは分からないが。


「いやなんとも思っていませんよ。なんなら近くの駅まで送りましょうか」

「えっ、よろしいのですか? じゃお詫びに私、御馳走するわ」

かくして、謎の女性を載せて車は東海道を西へ西へと走るのだった。

「ところでサイフは見つかったのですか?」

「それが見つからなくて……アタシ付いてないわ」

「じゃあホテル代は、それとこの先どうするのですか?」

「だってホテルの責任でしょ、警察呼びなさいよ! てっ言ったら向こうが落ち度を認めてタダにして貰ったわ。ネッ! 当然でしょ」

「ホテル代がタダでも、この先どうするんですか。電車代とか必要でしょ」

「それは大丈夫。旅をする時はサイフを二個持って歩くから。でもそれを言ったらサイフを無くしてないと誤解されるでしょう」

「それは用意周到で宜しいですが……」

「いいのよ。あっちはほんの少しだし、ただね、あのホテル感じ悪いから騒ぎ立ててやったのよ」

さすがのアキラも返答に困った。どうもこの女は自己中心的な発想だ。

「まっまあ、そうかも知れませんねえ」 

なんとアキラ! 同調してどうする。

「でっ、どこか近い駅で降ろしますか?」

「そうねぇ京都駅でいいわ」 

「えっ京都って」

「ウフッだから京都まで乗せて行って……オ ネ ガ イ」


つづく

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