第26話  アキラ高級クラブで150万円使う

 二人は高級クラブに入った。しかし二人とも初めてだ。店内の豪華さと華麗な姿のホステスに圧倒された。しかし一流どころ、その辺は客の扱いはプロだった。

『貴方達、来る場所間違ったじゃない。ここは一流クラブよ』なんて事は言わない。

ひときわ、際立つ美女に二人は案内されて豪華なソファーに座る。

「いらあっしゃいませー」

アキラと真田小次郎の間に一人とアキラの隣に一人。

銀座の夜にふさわしい美女たちに持て成された。

「お客さま、お飲み物は何をお持ち致しましょうか?」

まぁ、なんて上品のしゃべりかただろう。居酒屋とはまったく別世界だ。

「そっ、そうだな。ドンペリ(ドンペリニヨンシャンパン)でも持ってきてくれ」

「おっおい山ちゃんいいのかぁ」


小次郎は驚いた。十万程度から百万程度まである。それは一般販売の値段で高級クラブトもなれば最低五十万は覚悟しなくてはならない。

「まぁ、お客さま。よろしいでしょうか。少しお高いですよ」

ホステスはやんわりと言った。やはり一流のホステスともなれば客の観察力は優れている。どの程度の地位の人間か、すぐに見抜く。

つまりアキラと真田は身の丈に合わない場所と言うことだ。何か良い事があったか競馬で儲けたか? ホステスにはそんな事はどうでも良い。

金を沢山落して満足して帰ってくれれば良いことである。

多分二度と来店しないと思うがリピートもない訳ではない。しかし客に対しては決して嫌な気分にさせない事でも一流である。

多分この店ではドンペリ一本五十万円は下らない飲み物だ。今日のアキラは、ほとんどヤケになっていた。

オードブルも豪華なものばかり注文した。

小次郎は支払いが気になって、もう酔うどころか心臓の鼓動が波うっていた。

しかしアキラは一向に、気にすることもなく陽気に飲みまくった。ホステスとどんな会話したのか覚えていない。いつも下品な話しをしている居酒屋ではない。

ホステスもどんな会話をして良いか悩んだ事であろう。だがアキラは一向に気にせずホステス達を笑わせた。確かにアキラの話しは面白い。

ホステス達の態度から見て本当に楽しんで会話しているようだ。新しいアキラの魅力に真田小次郎は驚き『この男、人を惹きつける魅力を持っている』そう感じた。

お陰で(貴方達場違いよ)思われる事もなく楽しめた。


一時間半ほどして、アキラと小次郎は帰ることにした。小次郎はアキラに小声で語りかけた。

「オイッ支払いどうすんだ俺三万しかないぜ」

もっとも高級クラブではとても三万じゃ座るだけで消えてしまいそうだが。

「とっつぁん心配すんなって、今日は俺にまかせとけって!」

「しっしかし、山ちゃん……」 

「大丈夫! まかせろって」

なんとアキラは、胸のポケットから会計の百五十万円を現金で支払った。

小次郎はアングリと口をあけたままだった。

ホステスの笑顔に見送られて二人はクラブをあとにした。

「やっ山ちゃん、どっどうしたんだい。その大金は? そうか競艇で大もうけしたのか」

しかし、アキラはニャツと笑うだけで「まぁそんなところだ」

「ごちそうになっても悪いんだけど、生きた心地しなかったよ」

「まぁ一生に一度くらい、いいじゃないか。これも人生さ!」キザなセリフを吐く。

しかし心は癒された訳でもなく、ややアキラの歯車が狂い始めていた。飲んでも飲んでアキラはスッキリしない。

そしてハシゴ酒となり結局はアキラと小次郎はいつもの居酒屋で飲み直しことになった。


つづく


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