第25話 アキラ 銀座の高級クラブヘ

 かくしてアキラは九月一日より無職成金は二十六歳の誕生日を迎えた。

 依然として宝くじが当った事は誰一人として知らせてはいない。ただ宝くじ売り場のおばさんと、受け取りに行った銀行関係者以外は……

 アキラは、あの宝くじのおばさんに百万円相当の商品券を渡そうとした。もちろん謝礼など一切渡し義務はないのだが、アキラはその辺の気配りは心得ていた。

 処がおばさんは頑として受取らなかった。夢を売る商売が当った人から御礼されては、商売が出来なくなると拒んだ。分るような気がしたアキラは食事くらい一緒でもと誘った。それには、おばさんも喜んで応えてくれた。それ以来、宝くじ売り場に顔を出しては冗談を言い合う仲になっていた。ここでアキラに関わった人物を整理してみると。

 占い師の真田小次郎 推定年齢六十才

 銀行員の浅田美代、推定年齢二十四才

 西部警備社長 相田毅 推定年齢五十八才

 勿論、母である秋子は当然であり、他にも沢山いるが、この先の人生に関わるかどうか疑問なので省いておこう。


 アキラはインチキ占いこと真田の、とっつぁんを適当な理由を付けて誘った。

 それがいつも行く安い居酒屋ではなく、銀座の高級クラブだった。

 その前に、とっつぁんに今日は何も言わず一番いい背広を着て来てくれと言ってあった。待ち合わせた有楽町の駅前に、とっつぁんは、まったく似合わない背広を着て待ち合わせ場所にアキラが来るのを待っていた。

 その姿を見たアキラは「ひゃあはっはっは! 良く似合うぜ」とからかった。

 しかし、とっつぁんは悪びれることもなく。

「あたりまえだ。こう見えても昔はオナゴを泣かせたもんだぜ」

 アキラは百九十八センチの長身、それに似合う背広はイージーオーダーしかなく、いつもピッタリとフイットしている。もっとも高くはついたが、そのゴツイ顔を除けば、なかなかのダンディである。


つづく

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