第23話   母に疑われ嘆くアキラ

『なんでぇーお袋の奴、まったく信用してないんだから二度とくるかぁ俺だって利口じゃないが、馬鹿でもない善悪は心得ているよ。少しは自分の息子を信じろよ。バカヤロー 』

 人からはゴリラと言われる巨体の目から大粒の涙がしたたり落ちる。

 真夜中の路上にゴリラのような、なげき声が響きわたる 。      

 一人残された母、秋子はアキラの真剣に怒った表情を見て本当親孝行しに来たのか 。

 アキラが悪いことはしていないのかと悟ったが、あとの祭り……。

 秋子は畳の上に残された三百万の金を眺めていたが何を思ったか、二階の階段を駆け下りて、路上に出てアキラの姿を捜す。

 「アキラ~~~ゴメンよ! アキラ~~~母さんが悪かった! アキラ~~」

 静まり返った下町の冷たい夜更けに、秋子の声は吸いまれて行く……。

 「アキラ~~~行かないで! 訳も聞かずにゴメンよ、アキラ~~~」

 息子を信じない愚かさを恥じて、秋子の悲しげな声が闇夜に響き渡った。

 しかしその嘆きはアキラに届く事はなかった。それがこれからアキラの人生を大きく変えて行く事なるとは母は知らない。汗水流して稼いだ金ではないが不正を働いた金でもない。苦労したお袋にやっと親孝行出来ると思ったのに母は信じてくれなかった。


 体は大きいがまだ二十五才の青年だ。図体に似合わず母に喜んで欲しかった。少しは誉めて貰いたかった。アキラの心は三億円当った喜びよりも、母に疑われた事が辛かった。

「お袋、見て居ろよ。この金を元手に俺は大金もちになってやる。その時は外車の後部座席に座り、お抱え運転手付きでお袋を迎えに行ってやる。その時は腰を抜かすなよ」


つづく


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