第22話 親孝行しに来たのに母に疑われ嘆くアキラ
時間も夜中の十二時を過ぎて〔居酒屋、秋子〕も閉店の時間になりノレンを下げた。
そんなお袋の姿を見てアキラも『お袋も苦労しているなぁ』と呟く。 年々衰えて行く母の姿にアキラは哀愁を感じるのだった。やっと一息ついて、母と子は店の二階にある居間で久しぶりと対面だ 。
「どうしたんだい? アキラ急に来るなんて。でも本当に助かったよ。酔っ払い相手はねえ疲れるよ」
そんな母を見て、もう楽をさせてやらなければなぁとアキラは思う。
しかし三億円、当ったなんて言ったら、お袋は『良かったね』で済む訳がない。
きっと金のせいで又、親子関係が崩れるのを恐れた。三億円当ったことでアキラはなぜか、物事を冷静に考えるようになった。 人間の心理は周りの環境、自分を取り巻く人などで左右されるが今回は自分大金を得たことで逆に落ち着かなくてはと言う冷静差が生まれた。
『親父も、お袋も俺もいい加減な処があったけど、やはり親子だなぁ』
逢う度に年老いて行く母に、この先どんな幸せがあると言うのか苦労している母に若かった頃の母の笑顔が見たい。親孝行してやらなければ……
「アキラ……ところで仕事の方は、ちゃんと頑張っているのかい。母さんは心配いらないよ。親の勝手で離婚してお前には迷惑かけたし」
母の優しい言葉だった。アキラは思った。『やっぱりお袋はいいなぁ』と。
「母さん、今日は親孝行のマネ事をしょうと思って来たんだ」
「ハアー? なんだぁ今、親孝行と言ったのかい? お前熱でもあるのかい」
「俺だって、たまにはそう思う事だってあるんだ。チャカスなよ」
「アキラお前、本気で言っているのかい。気持ちだけ受け取って置くよ」
「あのさぁ気持だけ伝えにくるんだったら来やしないって!」
「そうかい、じゃお土産でも買って来てくれたのかい?」
相変わらず気が強いお袋だ。それとも息子の前だけは弱気をみせたくないのか
アキラはバックから三百万円入った封筒を取り出した。B四サイズの膨らんだ封筒をお袋の前にアキラは黙って差し出した。
「なっなんなんだい! これ、どうもお菓子じゃなそうだねぇ」
母は怪訝な顔をしながら、袋を開けて中身を取り出した 。
何か硬い紙のかたまりが三束出て来た、母は目を剥いた。
「なっなんなのコレ。アキラ! お前……まっまさか」
母は三百万の札束を見て、ついにアキラが悪いことをしたと思った。
「アキラ……いくら馬鹿でもこれだけは許せないよ」
母の顔は青ざめて肩が震えていた。
「アキラ、けっ警察に母さんが一緒に着いて行ってあげるから行こう」
母は何を思ったのだろうか、アキラの手を取って立ち上がろうとした。
「母さん! そんなに俺が信用出来ないのか? なんだい自分の息子も信じられないようなお袋……なさけないぜ!!」
「じゃあ悪い事した金じゃないと言うのかい」
「当たり前だろう。俺はただ親孝行したかっただけなのに。どうして疑うんだ。悲しいよ。そんなに疑うのか、分かったよ。もう来るもんか」」
今度はアキラが真っ青な顔して立ち上がった目が潤んでいる。 アキラはひと時の親子の再会も一瞬にして冷めていった。金を置いたまま、襖を思いっきり開けて母の経営する居酒屋を飛び出した。
つづく
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