第16話 第二章 億万長者 間違いなく3億円が当たった。しかし不安が。

 宝くじに当たった男

  第二章 億万長者


 現在、無職のアキラは三千八百円もタクシー代に使った。普通なら考えられない行動である。だがこの際ケチな事は言っていられない。なにしろ億万長者になったのだから。

 正しくは億万長者になれるはずだ。なれるかもと、なったでは大変な違いだ。

 アキラは狭く薄暗いアパートの部屋で興奮していた。

 その当った宝くじを大事に、ビニールファイルに入れて更にカバンに入れた。

 そして自分の前に置く、それでも不安だった。


 誰か後を着けてきて、いきなり襲われるかも知れないと思った。

 窓も確認して雨戸を全部閉めた。その時、部屋の近くで物音がした。

 アキラはドキッとしたが、それから何も音がしない。ふう~と溜め息をする。

 ある事を思いついた。念の為にデジカメに当たりくじを撮って置こう。そうすれば自分の物だという動かぬ証拠になる。デジカメ処か携帯電話さえ持っていない。ではインスタントカメラを買いに行こうと思った。

 アパートから百五十メーターほど行った所にコンビニがあるが、それには問題がある。またアパートから出なくてはいけない。

 そんな危険なこと出来る筈がない。困った、でも……万が一当った証拠がなくなったら大変だ。と、アキラはしっかり冷静さを失っている。たとえ証拠写真を撮ろうがそれは、なんの役にも立たないのだが頭に浮かべる事が出来なかった。

 それも無理もないことかも知れない。普通の精神状態でないのだから。

 すべてが悪い方に考えが及ぶ、まだその大金が自分の物になって居ない不安もある。

 

 人は極度に興奮する血圧が上がり心臓に負担がかかる。今のアキラとて、それに近い状態にある。夕飯すら忘れている。こんな時にボロアパートの防犯設備が無いことを悔やんだ。そんなのは必要の無い立派な体格に恵まれているのに何故かアキラは恐怖に震えていたのだ。ましてや自分が警備員なのを忘れている。試行錯誤の末にコンビニに行くことは諦めた。しかし眠ることは出来ない。完全に冷静を失っていた。


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る