第13話 解雇寸前、救世主 浅田美代

 ソフアーに座るように進められ、社長が前にアキラはその女性の隣に巨体をソフアーに沈めた。総括部長は社長の斜め前に立ったままだ。社長が言い掛けたとき、横から総括部長が口を挟む

 「社長の許可が戴ければ早速に解雇処分の手続きに入ります……ハイ」

 すると社長の顔色が変わった。総括部長を一喝する。

 「余計なことを。君は黙っていなさい!!」

 社長はムッとした顔をして部長を睨んだ。

 「もっ申し訳ありません!」

 総括部長は、またまた腰を百十度折り曲げ冷や汗をかいた。

 「実はだね。こちらのお嬢さん知っているかね、君の為にわざわざ、お見えになったんだ」

 そう言われて隣に座っていた女性が立ち上ってアキラに向き直り、お辞儀してからアキラに言った。

 「先日は助けて頂いてありがとう御座いました。翌日新聞を見て驚いたのです。貴方のミスを強調して悪く書いてあったので私、黙っていられなかったのです」

 アキラはやっと気づいた。自分がドジをやって怪我をさせた女性だ。

 「私もね、お嬢さんの話を聞いて本当に安心したよ。そして君のやった事は間違ってなかったのだよ。お嬢さんはまごころ銀行さんの上司の方などに、君が庇ってくれなかったら、どうなっているか分からなかったとね。更に新聞では見ていた関係者の証言を鵜呑みにして状況を知りもせず間違った報道していますと銀行の頭取に訴えたそうだ。お嬢さんはね、君への名誉挽回の為ならどんな協力でもすると言っておられるんだ」


 社長の説明に拠ると彼女は上司だけならともかく銀行頭取に直接訴えたとはどういう事だろう。一介の女子行員がどうして雲の上の存在である頭取と話しが出来たのか、また彼女の説明をキチンと聞きいたとの事、本来なら一介の行員が直接訴えるなんて出来ない事だが? それどころか顔を合わせるのも難しい存在である。また銀行の責任者は女子行員が怪我をしたとして西部警備に抗議したと聞いたが彼女から真相を聞いた頭取が、アキラの行ないは正しかった悟り西部警備の社長に直接謝りの電話が来たと言った。いったい彼女は何者なのか? ただ普通の女性にしか見えないが。

ともあれ彼女に救われた。解雇覚悟で来たのに逆転満塁サヨナラホームランだ!

 アキラは立ち上ってソフアーに座るように進められ、社長が前にアキラはその女性の隣に巨体をソフアーに沈めた。総括部長は社長の斜め前に立ったままだ。社長が言い掛けたとき、横から総括部長が口を挟む

 「社長の許可が戴ければ早速に解雇処分の手続きに入ります……ハイ」

 すると社長の顔色が変わった。総括部長を一喝する。

 「余計なことを。君は黙っていなさい!!」

 社長はムッとした顔をして部長を睨んだ。

 「もっ申し訳ありません!」

 総括部長は、またまた腰を百十度折り曲げ冷や汗をかいた。

 「実はだね。こちらのお嬢さん知っているかね、君の為にわざわざ、お見えになったんだ」

 そう言われて隣に座っていた女性が立ち上ってアキラに向き直り、お辞儀してからアキラに言った。

 「先日は助けて頂いてありがとう御座いました。翌日新聞を見て驚いたのです。貴方のミスを強調して悪く書いてあったので私、黙っていられなかったのです」

 アキラはやっと気づいた。自分がドジをやって怪我をさせた女性だ。

 「私もね、お嬢さんの話を聞いて本当に安心したよ。そして君のやった事は間違ってなかったのだよ。お嬢さんはまごころ銀行さんの上司の方などに、君が庇ってくれなかったら、どうなっているか分からなかったとね。更に新聞では見ていた関係者の証言を鵜呑みにして状況を知りもせず間違った報道していますと銀行の頭取に訴えたそうだ。お嬢さんはね、君への名誉挽回の為ならどんな協力でもすると言っておられるんだ」


 社長の説明に拠ると彼女は上司だけならともかく銀行頭取に直接訴えたとはどういう事だろう。一介の女子行員がどうして雲の上の存在である頭取と話しが出来たのか、また彼女の説明をキチンと聞きいたとの事、本来なら一介の行員が直接訴えるなんて出来ない事だが? それどころか顔を合わせるのも難しい存在である。また銀行の責任者は女子行員が怪我をしたとして西部警備に抗議したと聞いたが彼女から真相を聞いた頭取が、アキラの行ないは正しかった悟り西部警備の社長に直接謝りの電話が来たと言った。いったい彼女は何者なのか? ただ普通の女性にしか見えないが。

ともあれ彼女に救われた。解雇覚悟で来たのに逆転満塁サヨナラホームランだ!

 アキラは立ち上って隣に座っている女性に深々と頭を下げて語りかけた。

 「あの思いがけない言葉を頂き、貴女に怪我をさせたにも関わらず勿体ない言葉です。僕は何を言われても返し言葉がないと思っていました。でも貴女にそう思って頂けただけで僕は救われました。社長にも貴女にも迷惑をかけたのに、思いもかけぬ言葉を頂戴して僕はもう解雇されても悔いもなく満足です」

 大きな身体を震わせアキラは心から嬉しかった。まだ世の中、捨てたものじゃない。

 「おいおい山城くん、早まってはいかんよ! そんな事したらなんの為にお嬢さんが来て下さったか分からなくなるじゃないか。そうですねぇお嬢さん」

 「ハイその通りです。そんな事は仰らないで下さい。私の上司も必死になって行員を庇ってくれた事に感謝しています。社長さんも約束してくれました是非これからも続けて欲しいんです」


アキラは隣に座っている女性に深々と頭を下げて語りかけた。

 「あの思いがけない言葉を頂き、貴女に怪我をさせたにも関わらず勿体ない言葉です。僕は何を言われても返し言葉がないと思っていました。でも貴女にそう思って頂けただけで僕は救われました。社長にも貴女にも迷惑をかけたのに、思いもかけぬ言葉を頂戴して僕はもう解雇されても悔いもなく満足です」

 大きな身体を震わせアキラは心から嬉しかった。まだ世の中、捨てたものじゃない。

 「おいおい山城くん、早まってはいかんよ! そんな事したらなんの為にお嬢さんが来て下さったか分からなくなるじゃないか。そうですねぇお嬢さん」

 「ハイその通りです。そんな事は仰らないで下さい。私の上司も必死になって行員を庇ってくれた事に感謝しています。社長さんも約束してくれました是非これからも続けて欲しいんです」


つづく



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