夢日記
同じ夢を見始めて10年。
最初にこの夢を見てから数ヶ月後、あかりは夢の詳細をノートに書くことにした。
ノートの表紙には『夢日記』とつけた。
季節、周りの景色や色、建物の特徴をできる限り細かく書いた。その夢を見た日もメモに残していた。
あかりは大学卒業後、地元の小さな広告代理店に勤めた。毎日が忙しく残業は当たり前で、週に一度の休みはほとんど寝て過ごしていた。
元々体がそんなに強くなかったから、体に無理がたたり一年ほどで会社を辞めてしまう。
一ヶ月ほど体を休め体調を戻し、弥生の職場のコールセンターを紹介して貰い派遣社員として働く事になる。
前職より給料は下がったが、休みも取りやすく無理なく働けるのであかりには合っていた。
ここで働き出して5年が過ぎていた。
彼女には以前から夢の話を相談していた。あかりと同じ大学出身で在学中もよく遊んでいた。弥生に『夢日記』を見せたこともある。
夢で見る国は一体どこなのか、なぜ何度も何度も見るのか、夢を見る度に二人はこの話で持ちきりになった。
本格的に秋が来て、街の木々が彩り始めた頃、弥生があかりにある提案をする。
「ねぇ、あの何回も見る夢の事なんだけどさ。会社近くの旅行会社に仲良くなった人がいて、この前チラッとその話したのね。そしたら、あかりの夢日記を見たいって言うの。もしかしたらそこの場所が分かるかもって。」
「ほんと?探してくれるの?いつ行ってもいいって言ってた?」
「水曜の20時過ぎならほとんどお客さんいないみたいだからその日はどう?後で聞いておくけどさ。」
「うん、わたしは大丈夫。後で都合教えてね。」
仕事が終わって家に帰り、簡単に夕食を済ませたあかりは『夢日記』に書いた夢の内容を分かりやすく書き直す。
色を付け、見えた景色をできる限り夢と同じく再現して、男の子と母親の行動を見えた順に書いていった。自分が夢で感じた感情も書き足す。
「よしっ、夢日記完成!これで分かりやすくなった。」
その夜あかりが見た夢は、いつものあの夢だった。
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