第127話 四匹の変態、ヌーディストダンジョンに挑む
門を潜った先は脱衣所になっていた。
奥には扉があって、
『〝ヌーディストダンジョン〟入り口。 ※裸にならなければ入れません』
と書かれてある。
「おいおい、マジで脱ぐのかよ……」
オレは思わずそう呟いた。
ヌーディストダンジョンなど、ここにくるまでどうせ冗談だろうと思っていたのだが、どうやら本当らしい。
周囲を見渡してみると、屈強な冒険者たちが戸惑いながらも、素直に防具や下着を脱ぎ始めていた。
しっかし、男ばっかだな……。
ちょっと期待してはいたのだが、まぁさすがに男女別々になっているわけじゃねぇし、女冒険者には抵抗があるだろう。
「ギースさん! 早く行きましょう! って、まだ脱いでいないんですか!」
「お、おう」
そんなことを考えていると、アルクに咎められる。
金髪のイケメンはすでに真っ裸になっていた。
「って、お前……案外でけぇんだな……」
アルクのアレはなかなかに立派だった。
イケメンでAランク冒険者のくせに、ソコまで強力とか……お前、どんだけ恵まれてんだよ?
まぁさすがにオレの逸物ほどじゃねぇけどよ。
「ちょ、あんまりジロジロ見ないでくださいよ……」
いやそんなに見ちゃいねぇし、恥ずかしそうに頬を赤く染めるんじゃねぇよ!
オレにそっちの気はねぇから!
「これはなかなか開放感がありますな」
弛んだ身体を惜しげもなく晒しているのは、ライオネルのじいさんだ。
こんなクソジジイの裸なんざ、誰も見たくは……
「何だこのでかさは……っ!?」
ジジイの股の間にぶら下がっているソレに、オレは目を見開く。
圧倒的巨根がそこにあった。
「ま、負けた……オレが……ち〇この大きさで……」
見比べるまでも無い。
それほど彼我の戦力差は明白だった。
「いや、若い頃はもう少しあったのですがね……。やはり歳には敵いませぬな」
マジか。
オレはこのとき初めてこのジジイに尊敬の念を覚えたのだった。
「まったく、ただ服を脱ぐだけだというのに、一体何を悠長にやっているんだい? この奥にカルナ君がいるかもしれないんだ。早くしてくれ」
と、そこへ紫苑がやってくる。
「っ!?」
オレは思わず息を呑んでしまった。
女みてぇな顔立ちをしているとは思ってはいたが……身体の方もなんて綺麗なんだよ、こいつは。
華奢な体躯に、柔らかそうな白磁の肌。
股間にアレが付いていなければ、マジで女と見間違えてもおかしくはない。
そんな奴が、一糸まとわぬ姿で堂々と立っているのだ。
自然と下半身に血液が集まり……って待て待て待て!?
こいつは男だ……こいつは男だ……!
オレはそう必死に自分に言い聞かせながら、息子をどうにかこうにか宥めると、急いで服を脱ぎ捨てた。
「ほう。これはこれは、ギース殿もなかなかのものをお持ちのようで」
「お、おう」
「……しかし心なしか、少し硬くなっておられるような……」
「オレほどになると年中発情してるからな! これがデフォなんだよ、デフォ!」
やべぇ、収まり切れてなかったみたいだ……。
てか、このクソジジイ、人のち〇こを観察すんじゃねぇよ!
苦しい言い訳をしながら、オレは先に進もうと歩き出す。
服を着てはダメだが、武器は大丈夫らしいので、愛用の剣を手にしている。
やがて奥の扉を潜り抜けた先は、鬱蒼と木々が生い茂る森林型のダンジョンとなっていた。
「すげぇな。ここまでの規模のダンジョンはなかなかないぜ」
草木を掻き分けながら、奥へと進んでいく。
色々と怪しげなダンジョンである上、まだ情報も乏しい。
どんな魔物が出現し、どんな罠が仕掛けられているのかも分からないため、細心の注意を払っていかなければならないだろう。
この雰囲気からして、獣系や昆虫系、植物系、あるいは鳥系の魔物が多そうだが。
と、そのときだった。
オレたちの前にキノコの化け物が現れる。
大きさは人間の子供くらいだろうか。
毒々しい、いかにも危険な色をしている。
この手のキノコモンスターは、ヤバイ息を吐き出すと相場が決まっていた。
「毒息を撒き散らす前に仕留め――うおっ!?」
しまった! もう吐いてきやがった!
しかも大量だ。
辺り一帯に紫色の怪しい煙が一瞬にして広がり、咄嗟に呼吸を止めたが、幾らか吸い込んでしまった。
オレだけじゃねぇ。
四人全員が、まともに毒息を浴びてしまった。
クソキノコめっ!
って、いねぇ!?
キノコの魔物は毒を撒き散らすだけ撒き散らして、どうやら逃げていったらしい。
戦闘力はなく、毒だけが厄介なタイプの魔物だったのだろう。
すでに毒を受けてしまった以上、キノコが逃げたところで事態が好転するわけではない。
オレたち冒険者は毒への耐性を持っているが、それでもあまりに強い毒だとあっさり耐性を越えられてしまう。
命に別状がないタイプでも、麻痺や睡眠の状態異常に陥り、無防備になっている間に魔物に喰われちまう可能性もあった。
まだこの毒がどういった種類か分からねぇが、効果の弱いものであってほしいと願うしかない。
「こ、これは……?」
「か、身体が熱く……!?」
早速、毒が回って来ちまったらしい。
全身がやたらと熱い。
だが痛みはなかった。
耐性を越える猛毒だとしたら、もう意識を失っている頃だろうし、どうやらその手の毒ではないようだ。
眠気も無いし、身体が痺れる感じも無い。
なんだ、この感じ……?
ただ身体が熱く……呼吸が荒くなって……むしろやたらと目が冴えて……股間が……って、何で股間が!?
ギンギンだった。
……これと似た感覚を知っている。
ちょうどアレを飲んだときの、異様な興奮。
そう、精力剤だ!
「……ぎ、ギースさん……僕、なんかもう、我慢できそうにないです……」
「おおおおっ!? すごい、すごいですぞおおおおおっ!? これほどまで猛ったのは一体何年ぶりのことでしょうかぁぁぁぁっ! わしも我慢できそうにないですぞおおおおっ!」
おいやめろ!
オレたちは男同士だ!
「くっ……まさか、カルナ君以外で発情するなんて……」
紫苑が性欲に耐えるように、ぷるぷると裸体を震わせている。
その様はか弱い乙女にも見え……
……この際、綺麗なら男でも良いか?
「ハァハァ……」
「ま、待てっ! なぜ鼻息を荒くしながらこっちに近づいてくる!? ちょっ、やめっ……」
「……危ないところだったぜ……」
オレは安堵の息を吐いていた。
キノコの化け物が吐き出した毒息のせいで、性的に興奮してしまったオレたちは、あろうことか男同士で互いを襲おうとしてしまったのである。
どうにか理性で打ち勝ち、その場から逃げて一人で処理をしたため事なきを得たのだが。
「酷い目に遭いましたね……」
「今後はあのキノコの魔物には特に気を付けなければいけませんな」
「まったくだよ……彼と再開するまで、僕は絶対に綺麗な身体のままでいなければならないんだからね!」
その後、再び合流したときには、四人ともぐったりしていた。
「それはそうと、こんなものを見つけたんですが」
アルクがそう言って取り出したのは、いかにもお宝が入ってそうな箱だった。
蓋の上にはプレートが張り付けられていて、何やら文字が刻まれている。
「宝箱と書いてますな」
「なんじゃそりゃ」
何で宝箱が自ら宝箱と主張してんだよ。
「いえ、このダンジョンには随所に宝箱が設置されていると、手引書に書かれています。中には貴重なアイテムが入っているとか」
「手引書って何だ、手引書って?」
「入り口に置いてありましたけど?」
アルクは何やら冊子みたいなものを手にしていた。
ますます意味の分からないダンジョンである。
「罠じゃねぇのか?」
「匂い的には大丈夫そうけど……」
「お前もう本格的に犬になりつつあるな?」
話し合った結果、十分に注意しつつ開けてみることとなった。
ガチャ、と蓋が開く。
「……どうやら罠ではなさそうですね」
「何が入ってんだ?」
箱の中を覗きこむと、そこにあったのは――――ち〇こを模した謎のアイテムだった。
「こんなもん要るかあああああああああっ!」
思いきり圧し折ってやった。
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