第118話 モヒカン骸骨
「まさかオラが負けるとは思わなかったな。てぇしたやつだ」
〝力の迷宮〟で、バナナではなく人参を食っている猿という謎のマスコットキャラクターを倒し、俺たちは三つ目の試練をクリアした。
「……この武器、誰が装備すればいいのよ?」
「重そう!」
クリア後に貰ったのは〝力の鉄球〟とかいう重量武器だった。
鎖に巨大なトゲトゲの鉄球がくっ付いた武器で、振り回して敵を攻撃するのだろう。
「【遊び人】の俺には装備できそうにないな」
「あんた、片手が常に塞がってるものね……」
「じゃ、じゃあ……私、ですかね……? 基本、何も持ってないですし……」
【治癒士】のメグミは武器らしい武器を持っていなかった。
護身用のナイフを腰に付けているくらいだ。
「使えるの?」
「試しにやってみたらいいんじゃないか」
「……は、はい」
「ヤホホホホホホ!」
おっ、ちょうどいいところに敵っぽいのが現れたぞ。
「泣く子も漏らすルルンバ海賊団船長代理! ――だったこともある現魔王四天王が一人、冥王ブルドックとはこの私! 皆さんのお命頂戴に参りました!」
身長三メートル近いモヒカンヘアーの骸骨だった。
「三人目の四天王……?」
「えっ? 二人目じゃないの?」
いや二人目はアカネが倒しちゃったからね。
ぷちっ、って。
それはそうと、プ〇さん、仮面ラ〇ダーと続いて、何でブ〇ックなんだよ。
そこは主役のル〇ィが出てくるところだろ。
「まだお若い方の命を奪うなんて、とても尻が痛みますが……まぁ私、尻なんてないんですけどね! ヤホホホ!」
いや、まんまブ〇ックのスカルジョークじゃねーか。
ただし慣用句は間違えている。
「こう見えて私、実はアンデッドなんですよ!」
「いや、見りゃ分かる」
「……えい」
メグミが手に入れたばかりの〝力の鉄球〟を振り回し、モヒカン骸骨目がけて投げ付けた。
「ヤホホホホ! 皆さんが死んだら、ちゃんと骨を拾って――グボア!?」
横合いから飛来した鉄球が直撃し、モヒカン骸骨が吹っ飛んでいく。
「つ、使えそうです……」
「すごーい! メグっちパワフル!」
「しかも相手、骨だけだからか、簡単に吹き飛ばされたわね……」
モヒカン骸骨が起き上る。
鉄球を喰らった側の骨がバキバキに折れていた。
「ちょっ、まだ台詞言い終わる前だったのにいきなり何するんですか!? びっくりし過ぎてう○こ漏れそうでしたよ! いえ私、う○こなんてしないんですけどね! ちなみに今のはスカトロジョー――ギャウッ!?」
もう一発喰らい、モヒカン骸骨は再び吹っ飛ばされる。
「だから台詞の途中はやめてと!?」
「……すいません……ジョークがつまらなくて……つい……」
「ガーン……」
モヒカン骸骨はショックを受けたのか、頭を抱えた。
「酷い……もう私、生きていけない……いえ、すでに死んでるんですけどね! おっと、さすがに鉄板ネタ過ぎましたか? ヤホホホホ!」
「えい」
「ノォォォォッ!?」
三度、鉄球を喰らうモヒカン骸骨。
「ぐぬぬっ……あなた方は私を怒らせましたよ! 出でよ、スケルトンたち!」
あちこちの地面が盛り上がったかと思うと、五十匹以上もの骸骨たちが地中から這い出してきた。
「逝け! ホネホネ部隊! もう逝っちゃってますけどね? ヤホホホホ!」
「……えい!」
メグミの鉄球がスケルトンたちをまとめて薙ぎ払った。
モヒカン骸骨より遥かに脆いようで、あっさり粉砕されて粉々になる。
「ノオオオオオオオオッ!? ちょ、私のホネホネ部隊が! なんてことを! 遺族になんてお詫びしたらいいのか! 考えるだけで禿げそうですよ! こんなときこそ育毛剤を頭皮にしっかり塗り込んで……って、私、頭皮なんてありませんけど! ヤホホホホ! これぞスカ○プDジョーク!」
こいつ、うぜぇ。
「ヤホホホホ! 冗談はここまでにしておきましょう! 私、本気を出しちゃいますよ!」
メグミにやられたスケルトンたちの骨が動き出した。
そしてモヒカン骸骨の身体に集まっていく。
やがてそこに現れたのは、身長十メートルを超す巨大骸骨だった。
「これぞ私の奥義、骸骨合体! こうなったからには、もは手加減なんてできませんよ! ヤホホホホ!」
「手加減も何も、お前、さっきから一方的にやられていただけだろ」
それからは意外と普通のバトルになった。
キョウコ、アカネ、メグミが戦い、俺が後ろで裸芸を披露する。
ここまで一緒に戦ってきただけあって、随分と連携が良くなってきた。
『マスターは別に連携などしていないのでは?』
「いや、こう見えてすげぇ力になってるんだよ」
「ノオオオオオオッ!?」
モヒカン骸骨の身体が断末魔の悲鳴と共に崩れていく。
どうやら倒せたらしい。
「……ヤホホホホ……私を倒すとは、さすがは勇者……。しかし、それでは魔王様には太刀打ちでき――」
「次が最後の試練だね!」
「〝運の神殿〟ってここから南西の方角よね?」
「……運の試練って、どんな感じなのかな……」
「運なら【遊び人】の俺に任せておけ」
「――ちょっ、無視しないでくださいよおおおおっ! あとまだ生きてます! しばらくしたら復活します!」
物理攻撃では倒せないようなので魔法で浄化しておくことにした。
「イヤアアアアアアアア!?」
◇ ◇ ◇
「冥王ブルドックもやられたか……」
「まったく、どいつもこいつも四天王の名に泥を塗りおって……」
「だが俺様は他の連中とは違う」
「四天王最強の名をほしいままにするこの私が、今度こそ勇者どもを血祭りに上げてくれよう」
「ところで何で一人なのに台詞が分かれているかって?」
「くくく、我ほどになれば一人で何人もの役を演じ分けることが可能なのだ!」
「……一人って、寂しいな……」
◇ ◇ ◇
俺たちはついに最後の試練となる〝運の神殿〟にやってきていた。
神殿というだけあって、神聖さを感じさせる荘厳な外観だ。
果たしてどんな試練が待っているのか、緊張とともに俺たちは神殿内へと足を踏み入れる。
「なっ……」
「これが……」
「……最後の試練……?」
そこで俺たちが見たものは――
天井からぶら下がる巨大なシャンデリア。
いかにも高級そうな大絨毯に覆われた床。
ずらりと並ぶ様々な形状のテーブル。
勢いよく回転するルーレット。
そして、無数のスロットマシン。
「……カジノ?」
そう。
そこは巨大な賭博場だったのだ。
「ぼくウサえもん!」
……何かウサ耳の生えた某青い狸みたいな生き物が現れたんだが。
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