第117話 ハ○ーポッ○ー
○×問題の後も、俺たちは知恵(というよりほとんど物理)を駆使して試練を突破していった。
「というわけで、次が最後の課題でござる!」
今度も前回同様、マスコットがラスボスとして立ちはだかるのだろうかと思っていると、
「これがその舞台でござるよ!」
巨大な四角いリングへと連れて来られた。
リングは白黒の市松模様になっており、両側に向かい合うようにして複数の人間大サイズの〝駒〟が並んでいる。
「……しょーぎ?」
「違うわよ。チェスよ、チェス」
「ちぇす?」
「え? 茜、チェス知らないの? ボードゲームよ。西洋版の将棋みたいなやつ。あたしもやったことないけど……」
「……わ、わたしも無いよ……」
チェスの駒の種類は、ボーン、ナイト、ビショップ、ルーク、クイーン、そしてキングの六つ。
ボーンは八つあるが、その他の駒は二つずつ。
ただしキングとクイーンは一つずつだ。
相手のキングを追い詰めればチェックメイトとなって勝ちである。
「片方のキングがいないぞ?」
「ふっふっふ、これはただのチェスではないでござるよ! お主らのうちの誰かがキングの駒になって戦うのでござる! 名付けて、リアルバトルチェス! どうでござる? なかなか面白い趣向でござろう?」
ハ○ーポッ○ーのパクリだろ……
と、誰もが思った。
あと、ござる口調でチェスの説明をするのは致命的に合ってない。
「ちなみに他にも普通のチェスと違うところがあるでござる。各駒にはHPとと呼ばれるものが設定されていて、実際に攻撃することによって相手の駒を倒すのでござる。ただし攻撃にはワンターン必要で、攻撃できる範囲は移動範囲と同じでござる。駒のHPがゼロになると盤上から自動的に消えてしまうでござるよ。そして当然、キングも攻撃を受けるでござるし、死んだら負けでござる」
長々と説明してくれる。
……死ぬところまでやるのかよ。
「ちょ、そもそもチェスの基本ルールすら知らないんだけど!?」
「そこにルールブックがあるでござる」
「……い、今から覚えて、しかも命を懸けて戦えと……随分と酷い試練ですね……」
「これくらい乗り越えることができずして、魔王を倒せるはずがないでござろう?」
俺はお盆で股間を隠しながら前に出た。
「よし、俺がやろう」
「あんたチェスのルール知ってんの!?」
「知らん」
「知らんって……」
「だが昔よく婆ちゃんとオセロをやっていたが、8割は俺が勝っていた」
「……それ別に自慢にもならない気が」
「まぁ俺に任せておけって」
ボードの上、キングの位置に立つ。
「それでは対局開始でござる! 先手はお主に譲るでござるよ!」
チェスは先手の方が大きく有利だと聞いたことがある。
そこは少しハンデを付けてくれるようだ。
「ま、どっちみち必要ないけどな。必殺、お盆チョップ」
そう呟きながら、俺は目の前にいるポーンにお盆を叩き付けた。
説明しよう!
必殺、お盆チョップとは、その名の通りお盆を縦方向に持って相手にチョップを見舞うというものだ。
なおこのとき俺の股間のガードは甘くなっている。
『甘いどころか丸見えです』
HPがゼロになったらしく、ポーンはあっさり消滅する。
「「「……は?」」」
初手、自駒が邪魔だったので倒しました。
キングの駒である俺は真っ直ぐ突き進んでいく。
一手で一マスしか進めないのでちょっとまどろっこしい。
「キング自ら向かってくるなんて、何を考えているでござる!? しかも自駒を破壊するとか意味が分からんでござるよ! そもそも幾ら最弱の駒であるポーンと言えど、一撃で倒されるとかどういうことでござるか!?」
さすがのコカン君も驚いている。
いや、何も考えてないけど?
〈思考加速・極〉スキルを使えばチェスなんて楽勝なんだが、面倒だし。時間かかるし。
前進を続ける俺の前に敵のポーンが立ちはだかった。
剣を手にする兵士の駒。
俺のターンでこいつの目の前に移動したので、次は相手のターン。
「……こんなに簡単に決着が付いてしまっていいのかとは思うでござるが、これも勇者のための試練。手心は加えぬでござる! ポーン、攻撃でござる!」
ポーンが剣を振るって攻撃してくる。
背後からJKたちの悲鳴。
「秘技、お盆ガード」
パキン!
俺がお盆で受け止めた瞬間、ポーンの剣が真っ二つに折れた。
「「「へ?」」」
説明しよう!
秘技、お盆ガードとは、その名の通りお盆を盾のように扱って敵の攻撃をガードするというものだ!
なおこのとき俺の股間はガードされていない。
「どうだ? 凄いだろ、俺のお盆は。攻撃にも防御にも使える最強の武器だ」
「いやいやいや!? そんなお盆があって堪るかでござる!」
「じゃあ、次は俺のターンだな。必殺、お盆チョップ」
お返しとばかりにポーンの脳天にお盆を叩き込み、消滅させる。
「また一撃で!? どうなってるでござる!? 第二の試練の段階で、勇者がここまでの戦闘力を有しているなど、完全に計算違いでござるよ!」
コカン君が驚いているが、気にせず敵陣に突っ込んでいく。
キングは一マスずつしか動けず、また攻撃もすぐ隣のマスにしかできないルールなので、ルークやビショップから遠距離攻撃をされると反撃もできない。
当然のごとく集中砲火を受けるが……しかしダメージゼロ。
「ちょっ、最大の攻撃力を誇るルークでも無傷!? お主一体、何者でござる!?」
「俺か? 俺はカルナ100%、遊び人の勇者だ」
「遊び人!?」
ついにはクイーンまで攻撃してくるが、無視して敵のキングへと一直線。
王冠を被ったおっさんの駒だが、追い詰められて一瞬、頬が引き攣ったようにも見えた。
「奥義、お盆首狩り」
お盆でおっさんの首が飛んでいく。
説明しよう!
奥義、お盆首狩りとは、その名の通りお盆で敵の首をチョンしちゃうというものだ。
なおこのとき俺の股間は(ry
敵のキングが消滅する。
チェックメイト(?)である。
「うーむ……最後の試練がほとんど知恵(物理)で攻略されてしまったというのは残念でござるが、クリアはクリアでござる」
アンアンマンのとき同様、試練を乗り越えた俺たちに、コカン君はあるものをくれた。
「〝知恵の杖〟でござる」
「これは【魔法使い】のアカネ用だな」
「わーい!」
アカネは〝知恵の杖〟を装備した!
「試してみる! ファイアーランス!」
「ぎゃっ!? ちょ、何で拙者目がけて撃つでござるか!?」
「すごい! 威力が上がってるよ!」
こうして無事に〝知恵の塔〟をクリアした俺たち。
だが塔を下りて次の試練に向かおうとしたところ、やはり立ちはだかる影があった。
「私は魔王軍四天王が一人、仮面ライ――――
――――ぷちっ。
「ふえ? さっき何か声が聞こえた気が?」
「どうしたの、茜?」
「うーん…………何でもないよ!」
◇ ◇ ◇
「どうやら蟲王までもが勇者どもにやられたようだ。……だが心配は要らない。よく考えてみたら、あいつこそ四天王最弱だしな」
「まぁバッタだからな……サイズも……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます