第78話 絆創膏は水着ですか?

 変態天使がいなくなってから、数時間ほど。

 NABIKOがゆっくりと停車した。


『海に到着いたしました』


 外に出ると、そこには見渡す限りの大海原が広がっていた。

 水が澄んでいて、めちゃくちゃ綺麗な海だ。


「うみーっ!」

「お、大きいですね……」

「これが海か……確かに強そうだな……」

「ん」


 四者四様の反応を示すマイファミリー。


「せっかくの海だし、海水浴を楽しもうぜ!」


 という訳で、俺は〈製作・極〉スキルを活かして水着を作成した。


「はい、ティラ用の水着」


 早速着てもらおうと、ティラに手渡す。


 マイクロビキニである。


「こんなの着れるわけないじゃないですか――――ッ!」


 受け取るなり、ティラは床の上に叩きつけた。


「大丈夫大丈夫。ちゃんと大事なところは隠れるし。はい、落したよ」

「大事なところしか隠れないのが問題なんですよ! あと落したんじゃなくて、投げ捨てたんですけど!? 察してください!」

「おかしいなー。俺が昔いた地域だとみんな普通に着てたんだけどなー」

「嘘言わないでください! こんな破廉恥なもの、一体誰が着るっていうんですか! 騙されたって着ませんよ!」

「ほら、そこに」


 俺はティラの背後を指差した。


「くっ……ほ、本当にこんなものを着て泳ぐのが一般的なのかっ……?」


 ちょうどエレンが脱衣所から出てきたところだった。

 俺が渡したマイクロビキニを着てくれている。


 うん、あれはもうほとんど裸だな。


 布面積ほぼゼロ。

 当然ながらエレンの巨大な双丘を支えきれるはずもなく、少し動くだけでぼよんぼよんと肉感的な大振動が起こっていた。


 そして下は―― 自 主 規 制 


「着ている人がいた――――ッ! ちょ、エレンさんっ! 何で着ちゃってるんですかっ?」

「こ、これを着れば強くなれると言われて……」

「なれませんから! 騙されてますから!」

「なっ……。くっ、謀ったなぁぁぁっ!」


 エレンは脱衣所へと慌てて引き返していった。

 いやぁ、良いものが見れたなぁ。


 ティラがジト目で俺を睨んでくる。


「……あんまりエレンさんで遊ばないでください。頭が弱い人なんですから」


 その発言、ちょっとエレンに対して辛辣過ぎやしないか?


「こっちの水着なら大丈夫だろ」


 俺はティラに別の水着を渡す。

 今度は普通のビキニだ。

 だが彼女は眉根を寄せて、


「これも露出多すぎじゃないですか? ほとんど下着です」

「いやいや、水着ってそういうもんだから」


 と訴えるものの、もはや狼少年状態でティラは不信の目を向けてくる。

 仕方なく俺はさらに用意していた別の水着を取り出した。


「……まぁ、これなら」


 ティラはしぶしぶといった様子で頷き、脱衣所へ。

 入れ替わりでエレンが出てくる。


「さ、最初からこっちの普通のやつを渡してくれればいいものをっ」


 今度はスリングショットの水着だった。

 サスペンダー型のビキニで、胸と股間部分をY字型の布地が覆っているのだが、谷間や横乳がバッチリと見えている。

 これもぶっちゃけかなりエロいのだが、前のがあれだったせいか、どうやらこれが普通だと思ってくれたようだ。お馬鹿さんで可愛いなぁ。


 少しして、ティラがフィリアと一緒に脱衣所から出てきた。


「ママとおそろい!」

「うん、お揃いね」


 二人は同じ種類の水着に身を包んでいた。

 胸部にはゼッケンが付いていて、それぞれ「ふぃりあ」「てぃら」とマジックで書かれている。



 すなわち、スクール水着である!



 うっは、いいね、いいねぇ。

 露出度は少ないってのに、何でこんなに興奮するんだろうな。


 しかもエルフのスク水姿って、貴重だぜ?

 実を言うと、ティラには最初からこれを着てほしかったのだよ!


 そんな俺の興奮を察したのか、ティラが両手で胸部を隠した。


「……なんか、すごくイヤらしい目で見られている気がするんですけど……。あれ、そう言えば、シロはどうしたんです?」

「ん。準備できた」


 そう言いながら姿を現したのは我が家のペット、シロだ。


 彼女はその透き通るように白い肌を余すところなく晒していた。

 要するに全裸である。


「できてませんよね!? 水着はどうしたんです!?」

「これで泳ぐ」


 シロが断言する。


「ダメですから! ちゃんと着てください!」

「なぜ? お風呂は裸。なら海も問題ない」

「問題ありますから!」


 地球にはヌーディストビーチっていう素敵な場所もあるんだけどな。

 一度でいいから行ってみたかった……。


「気にしない。わたしはドラゴン。人と違ってそもそも服は着ない主義」

「それでも人の姿をしてるときは着てくださいって、いつも言ってるじゃないですか!」

「俺もぜんぜんまったく気にしないぜ!」

「カルナさんには訊いてません!」


 仕方ないなぁと嘆息しつつ、俺は別のものを提案することに。


「じゃあ絆創膏はどうだ?」

「ん。それでいい」

「絆創膏!? 今、水着の話してるはずですよね!? どういうことです!? でもたぶんロクでもないことだと思うので説明しなくていいです!」


 結局、ティラの説得もあって、シロはマイクロビキニを着用するということで落ち着いた。

 さらにちなみに言うと、俺はブーメランパンツである。

 ……え? その情報要らない? 知ってた。


「よっしゃーっ、泳ぐぞーっ!」


 俺は真っ先に駆け出した。

 誰もいない白い砂浜を走り抜け、海へと飛び込んだ。


「うっはーっ、気持ちいい!」


 遅れてティラたちが波打ち際まで追い付いてきた。


「わーい! どぶーん!」

「……とう」

「っ、けっこう冷たいですね」

「ぺぺっ、何だこれは! すごくしょっぱいぞ!?」


 フィリアとシロは俺と同じように大胆に飛び込んできたが、ティラとエレンは恐る恐るといった様子で海水に入ってくる。


 それから俺たちは水を掛け合ったり、ビーチバレーをやったり、砂でお城を作ったりして遊んだ。

 シロだけはずっと水の上にぷかぷか浮きながら寝ていたが。


「さて。そろそろあいつの出番だな」

「……何の話です?」


 俺の予言めいた呟きに、ティラが首を傾げたときだった。


「ひゃっ!? あ、あ、足に何か絡み付いてきたぞ!?」


 突然、エレンが悲鳴を上げた。

 見ると、彼女の足にぬめぬめと光る太い縄のようなものが巻きついていた。


 直後、水面が大きく盛り上がったかと思うと、海中から巨大な影が姿を現す。

 それは無数の柔らかな突起物を持つ、イソギンチャクのような生き物だった。



 そう、我らが触手モンスターのご登場である!!



「次回、ヒロインたちが触手攻めでめちゃくちゃに……!? 乞うご期待ッ!」

「誰に向かって何を言ってるんですか!?」

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