第66話 転生担当女神が100人いたのでチートスキル100個貰えた
俺が発動した計二十の魔法が、ライトの魔法をあっさり押し返していた。
「……ど、どういう、ことだい……?」
しばらく呆然としていたライトが、声を絞り出すようにして訊いてくる。
「まさか、お前も無詠唱ができるのか……? くそっ……ならばこれはどうだっ!」
ライトは続いて超級魔法の魔法陣を展開させた。
まだやる気か。なかなか往生際の悪い奴だな。
「超級魔法〈|地獄ノ業火(ブリムストーン)〉」
「超級魔法〈|地獄ノ業火(ブリムストーン)〉」
俺もまったく同じ魔法で対抗する。
二つの火炎放射が激突し、凄まじい熱風が一帯に吹き荒れた。
うお、さすが超級魔法同士……むちゃくちゃ熱い……。
「っ……ば、馬鹿なっ……しかも、僕の方が押されているだと……っ!? ……くっ!」
ライトは全力で飛行し、迫りくる火炎の渦をギリギリ回避した。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……だ、だけど、超級魔法の魔力消費量は甚大! そう何度も放つことはできないだろう! しかし僕には〈魔力回復〉のスキルがある! ははははっ!」
息を荒らげながら、ライトが勝ち誇ったように笑う。
こいつ、この状況でまだ自分の方が上だとでも思っているのだろうか。どれだけプライドが高いんだよ。
俺はその希望を完全に打ち砕いてやることにした。
「神級魔法――〈大罪浄化ス煉獄ノ炎〉」
「し、し、し、神級魔法だとぉぉぉっ!? ぼ、ぼ、僕ですら使えない魔法だぞっ!? く、くははははっ、なるほど、ただのはったりだな! しかも超級を遥かに超える魔力消費量の神級魔法など、さっきから魔法を使いまくっている君に使えるわけが――」
虚空に超巨大な
「う、うそ、だろう……?」
「避けないと死ぬぜ?」
世界が真っ赤に染まった。
まるで太陽が地上に降って来たかのようだった。
魔法陣から吹き出した超々高熱の火炎の竜巻。
それが太陽フレアのような爆発現象を引き起こしながらライトに襲いかかった。
「ひぃぃぃぃぃっ! て、て、て、転移魔法……っ!」
ライトは必死に転移魔法で逃げた。こいつも一応使えるらしい。
次の瞬間、つい先ほどまで彼がいた場所を炎の大瀑布が呑み込んでいく。
初めて神級魔法を使ったけど、出鱈目な威力だな。
上方向に放ったから、たぶんそんなに被害は出ないとは思うが……。
「〈窃盗〉ッ!」
突然、背後から声がした。
転移魔法で移動したライトがそこにいた。
「は、はははははっ! 馬鹿め! 馬鹿め馬鹿め馬鹿めぇぇぇっ! 油断したな! 油断したなぁぁぁっ! お前のその規格外な魔法スキル、僕が奪ってやったよ! あははははっ!」
どうやら俺の〈自然魔法・極〉が奪われてしまったようだ。
そのせいで飛行魔法が使えなくなり、俺の身体が落下を始める。
「あははははははっ! 残念だったねぇぇぇっ! このまま地面に叩き付けられて終わりだよ!」
「じゃあ返してもらうわ」
俺は〈強奪・極〉を使った。
〈自然魔法・極〉が戻ってくる。
ついでに奪われたままだった〈呪術・極〉も返してもらった。
俺が再び飛行魔法で宙に浮かぶと、ライトはもう何度目か分からないアホ面で、
「……ど、ど、どういうことだ……?」
「俺が持っているスキル――〈強奪・極〉で奪い返したんだよ。ちなみにこれ、名前からも分かる通りお前の〈窃盗〉の上位互換だからな」
「な……ん、だと……っ?」
「あとついでに言っておくと」
愕然とするライトへ、俺はさらなる絶望を突きつけてやった。
「俺はお前の〈剣才〉の上位互換スキルである〈武神〉を持っているし、
お前の〈闘将〉の上位互換スキルである〈闘神〉を持っているし、
お前の〈無詠唱〉の最上位スキルである〈無詠唱・極〉を持っているし、
お前の〈大魔導師〉の上位互換スキルである〈自然魔法・極〉を持っているし、
お前の〈並列思考〉の最上位スキルである〈並列思考・極〉を持っているし、
お前の〈魔力回復〉の最上位スキルである〈魔力回復・極〉を持っている」
「な……な……な……な……」
「それだけじゃないぜ。
俺はお前の〈自然回復〉の最上位スキルである〈自然治癒・極〉を持っているし、
お前の〈威圧〉の最上位スキルである〈威圧・極〉を持っているし、
お前の〈怪力〉の上位互換スキルである〈身体強化・極〉を持っているし、
お前の〈索敵〉の上位互換スキルである〈探知・極〉を持っているし、
お前の〈動体視力〉の上位互換スキルである〈五感強化・極〉を持っている」
「な……な……い、一体っ……一体お前は幾つのスキルを持っているというんだぁぁぁっ……!?」
「――百だ」
「ひゃ、ひゃ、百だとぉぉぉっ!? ば、馬鹿を言うなっ! そんな多くのスキルを持っているはずがない……っ! 女神から貰えるスキルは、通常一つ、多くても二つか三つのはずだ! ……っ、そ、そうか! 君もその〈強奪・極〉で他人のスキルを奪ったのだなっ! この偽善者め! 貴様だって、所詮は僕と同じじゃないか!」
「そんなことしてねーよ」
唾を散らして喚くライトに、俺はやれやれと肩をすくめながら否定する。
「嘘を吐け! そうでないと説明がつかないだろう!」
「ちなみにお前、なんていう女神からスキルを貰ったんだ?」
「女神ソーナだ! それがどうした!?」
女神ソーナか……確か、いたよう、な……?
俺は〈博覧強記・極〉を使い、頭の奥底に眠る記憶を呼び覚ます。あー、こいつか。
そしてさも覚えていたフリを装って、
「ああ、覚えてる覚えてる。結構印象的なやつだったし。左右で目の色が違ってて、髪は虹色だろ?」
「っ、君も同じ女神だったのか……っ!?」
「確か、八十七番目だったな」
「八十七番目……? な、何を言っている……?」
まぁそうだよな。
普通は何言ってんだこいつってなるよな。
俺だって最初は訳が分からなかったし。
「俺さ、転生担当女神が100人いたんだよ」
「……は?」
またもアホ面を晒すライトに、俺は真実を告げた。
「転生担当女神が100人いたから、チートスキル100個貰えたんだよ」
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