第43話 VS大天使
ルシーファが翼を広げ、ふわりと宙に浮かび上がった。
だが翼で浮遊しているようには見えない。何か別の力で空を飛んでいるのだろうか。
俺は彼女を鑑定してみた。
しかし、バチンッという音が頭の奥で響き、鑑定に失敗してしまう。
「あれ? 鑑定できない?」
『いえ。確かに高位存在である天使に通常の〈鑑定〉は効きませんが、マスターの〈鑑定・極〉であれば可能です。ただしより集中が必要になります』
俺は再度、鑑定を試してみた。
ルシーファ 824歳
種族:天使族
レベル:‐
スキル:〈天力・極〉
生命:9999/9999
魔力:9999/9999
筋力:999
物耐:999
器用:999
敏捷:999
魔耐:999
運:999
全能力カンストしてんじゃねーか。
さらに詳しく見てみると、カンストどころか限界突破(リミットブレイク)していた。
本当のステータスはこっちだ。
ルシーファ 824歳
種族:天使族
レベル:‐
スキル:〈天力・極〉
生命:20000/20000
魔力:15000/15000
筋力:2000
物耐:2000
器用:2000
敏捷:2000
魔耐:2000
運:2000
『どうやら並みの天使ではないようですね』
「レベルがフィリアと同じように空欄になってるのは?」
『天使は最初から完成体として生まれてくるため、成長することはありません』
〈天力・極〉というスキルは、天使の固有スキルらしい。恐らくこの力で宙に浮いているのだろう。
「ふふふ、泣いて許しを請いて、大人しく彼女たちを渡すなら今の内ですのよ? 天界にいた頃のわたくしの位階は最上位の熾天使。人間ごときでは一秒たりとも持ちませんわ」
全身を煌々と輝かせながら、ルシーファは最後通牒とばかりに宣言する。
こんなのが最上位の天使だったのか……天界、大丈夫か?
『同感です、マスター』
俺は不敵に笑って、
「生憎と負ける気はさらさらないんでな」
「ではその自信に免じて、痛くないように一瞬で消滅させて差し上げますわ」
ルシーファは右手をこちらに向けてきた。
刹那、掌が光ったかと思うと、レーザーのような一撃が俺目がけて放たれていた。
「ふん!」
俺の敏捷値を持ってしても反応不可能な攻撃だったが、〈未来予測・極〉スキルで読んでいたため対応することができた。闘気を纏わせた拳で閃光を薙ぎ払う。
「なっ? わたくしの攻撃に反応した!? いえ、それよりも拳で打ち払うなんて、あり得ませんわっ!」
ルシーファが目を見開いて驚愕している。
てか、拳が痛い。闘気で護っていたというのに、皮膚が焼け焦げている。まぁ〈自然治癒・極〉のお陰ですぐに治ったが。
「今度はこっちから行くぜ」
俺は地面を蹴り、軽く音速を超える速さで天使との距離を詰めた。
「は? 速過ぎ――」
唖然として何かを言いかけた天使の腹部へ、蹴りを叩き込む。
ルシーファは吹き飛んで部屋の壁に激突した。
『2371のダメージ』
思ったよりダメージが通ったな。相手の物耐値は2000もあるし、せいぜ三ケタ程度かと思ったのだが……。
『これまでの戦いにより、マスターのレベルも上がっているからです』
カルナ 22歳
種族:人間族
レベル:59
スキル:百個
生命:43982/43982
魔力:48756/48756
筋力:3752
物耐:3521
器用:3362
敏捷:3670
魔耐:3544
運:4023
……ちょっと上がり過ぎじゃないか?
『〈経験値上昇・極〉と〈成長率上昇・極〉の効果です。十倍の速さでレベルが上がりますし、レベルアップによる成長量も十倍です』
つまり普通の人より百倍の速さで成長していくらしい。
そんな俺の異常チートのことなど知らない天使は、めり込んだ壁から飛び出してきながら、
「に、人間にしてはできるようですわねっ……。ですが、残念ながら今のでわたくしを怒らせてしまいましたわ! おいでなさい、〝天槍イブリース〟!」
ルシーファの手に神々しい輝きを放つ槍が出現した。
・天槍イブリース:ルシーファ専用の槍。攻撃力+1000 天力倍化。
さすがは天使の槍だ。攻撃力が半端ない。
それをくるくる回しながら躍り掛かってくる。
一方の俺は素手。〈無限収納〉の中には魔物からドロップした武器が幾つか入ってはいるが、あの槍とまともに打ち合えるようなものはさすがになかった。
「はぁぁぁっ!」
「どりゃ」
俺の手刀と槍の切っ先が激突。
闘気と天力がぶつかり、押し合った。
「何で普通に受け止めていますの!?」
「女の子の好意を受け止められずして何が男だ」
「意味が分かりませんわ!」
槍と拳が幾度も交錯する。その度に凄まじい衝撃波が発生して、観戦しているティラたちが吹き飛ばされそうになっていた。
「くっ……このわたくしが押されている……? 何という闘気の量っ…………ですが、人間の闘気には限界がありますわっ。わたくしの膨大な天力を前に、いつまで持つことか……」
「あと一年くらいは持つと思うけど?」
「出鱈目にもほどがありますわっ!」
そう叫んだ天使は、高く舞い上がって両腕を掲げてみせた。
「でしたら、これで確実に消滅させてあげますわ!」
先ほどより遥かに強力な光が収束していく。
『マスター、あの攻撃は危険です。闘気を全開にしても防ぎ切れない可能性があります。死ぬことはないでしょうが、転移魔法等による回避、もしくは〈絶対防御・極〉スキルの使用を推奨します』
〈絶対防御・極〉は一定時間、ありとあらゆる攻撃を無効にすることができるスキルだ。制限と使用後のインターバルがあるものの、百個ある中でも最高レベルにチートなスキルだろう。
しかし今回は別のスキルを使うことにした。
「〝聖光滅球(エーテルストライク)〟ッ!」
「スキル〈反転・極〉」
暴力的なエネルギーを秘めた光の塊が、俺のすぐ目の前で突然向きを変え、放った本人目がけて飛んでいく。
〈反転・極〉は、あらゆるものの性質を反転させることを可能にする特殊スキルだった。
熱を冷気に変え、硬い物を柔らかい物へと変える。
意図して特定の性質だけを反転させることもでき、今のは光球の運動量の向きだけを反転させたのである。
「ちょ、戻って――」
目を剥くルシーファに光球が直撃する。
「あああああっ!」
悲鳴を上げる天使を巻き込みながら、光球は部屋の天井へと激突。大理石でできているはずの天井が抉れ、そのまま外まで突き抜けていった。
「あー、やべ。死んでないよな?」
『はい。そもそも天使は光に耐性がありますので』
生命値を調べてみたが、まだ半分以上残っていた。
空が見えるようになってしまった天井の穴から、ボロボロになったルシーファが戻ってくる。
「あ、あり得ません! あり得ませんわ! どうして人間がわたくしの必殺技を跳ね返してくるのです!?」
「俺のイケメンオーラにビビって逃げてったんだろ」
「どこがイケメンですの!」
そう怒鳴ってから、ルシーファはがっくりと肩を落とした。
「はぁ……わたくしの負けですわ……まさか、人間相手に敗北を喫することになるとは思ませんでしたわ」
負けを認めたようだ。
「彼女たちを好きにする権利はあなたのものですわ」
「よし、じゃあ早速」
「だから私たちを勝手に賞品にしないでくださいってッ!」
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