第3話 テツと、男と。(2)

「そんでまぁ…いろいろとツッコミどころはあるが…まずそのヤクザみたいな格好はなんだ?」

「あ、自分、形から入るタイプなんで!昨日のあなたの服装を真似したんです!」

「いや普通のスーツだったけど!?」

こいつの目には俺がどんな風に映ってるっていうんだ…

「そういえば昨日は随分ときっちりしたスーツでしたよね。もしかして就活ですか?」

普通のスーツってことは分かってたのかよ…

「情けない話だがな。前の職場…職場って言っていいのか分からねぇけどな?そこに嫌気が差したんだよ。そこを辞めて、今は就活中ってわけだ」




「あー、やっぱりヤクザなんですね?」




「…なんで俺がヤクザだと思うんだよ?」

「その顔の傷…ラグビー選手みたいなガタイ…そして何よりその口調と立派な日本家屋…これがヤクザ以外の何に見えるっていうんです?」

「言っておくが俺はもうヤクザじゃねぇからな。あんな汚ぇ組織、二度と関わらねぇと誓ったんだ」

もうこいつには隠したって無駄だろう…


「あ、本当に元ヤクザなんですね。適当に言っただけなのにまさかのカミングアウトだ」

「え、俺が元ヤクザだって最初から分かって言ったんじゃなかったのか?」

「違います。それはそうと、あなたにお願いがあるんです」

「なんだよお願いって」


「あなたの弟子になりたいんです」

「なんだよ弟子って。というかこの際だから言わせてもらうけど、お前さっきからめちゃくちゃ怪しいんだよ」

「そんなっ…ひどいですよ師匠!」

「師匠って呼ぶな」

俺の居場所を特定したなどと自慢げに本人に言うくらいだ。ろくな奴じゃないのは確かだろうよ。

「そもそも俺の弟子になってどうする気だよ。何を学ぶってんだ?」

「生き様そのものです。強く優しくかっこいいあなたみたいになりたいんです!」

「褒めるな変質者。俺は認めねぇからな」

「ただの変質者じゃありませんぜ…炊事に洗濯、特定に夜のお世話に…」

「ちょっと待て。まず変質者だってことは認めるんだな。そんで炊事洗濯はまだしも残り2つはなんだよ?」


「特定と夜のお世話です」

さも当然のように口にするこいつはなんなんだ?宇宙人か何かか?

「特定はまだ分かるよ。現に俺を特定したんだからな。…夜のお世話ってなんだ?」

「ちょっと…それをあっしに言わせるつもりですか…?」

モジモジしてんじゃねぇよ変質者。

「気になるんだよ。なんなんだよ夜のお世話って」

「ところで、今日はどこかに行かれる予定でしたか?」

話逸らしやがった…


「別になんでもねぇよ。面接も終わったし、久々に街に出てリフレッシュしようと思っただけだ」

「そうなんですね。ご一緒します!」

「やめろ。お前がいると休める気がしねぇ」

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