水

ちいろ

のどが渇いた。

水を買いに行こう。

そう思って足に力を入れる。

いつものように筋肉に力を込めているのに、まるで動かない。

まるで足が石になっているかのように。

なんで動かないんだろうか。そんなことを思いながらふと気づく。

別にのどが渇いているわけではないのではないだろうか。

そう思えてきた。


だって体を隅々まで見渡してみたときに、

おなかから下は深海よりも深い水が広がっているのだから。

のどがヒリヒリしてきた。

でも水なんてもう飲む気なんておきやしない。

だっておなかの中は今にも水であふれようとしているんだから。


思わず唾を飲み込む。

それにつられて、のどにいたがコロコロとおなかの中へと落ちてゆく。



そんな決して重くない音が聞こえたと思ったら、

おなかの中にいたはずの水たちがグイグイせせり上がってくるのを感じる。

まるでコップからあふれた水のように、濁流のように、のどをめがけてどんどん迫ってくる。


その水たちを抑えようとして、慌ててもう一度唾を飲み込む。


そしたら今度は

さびなんかじゃなくて

僕が、

その水の中に

落ちていた。

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 水 ちいろ @tiiro

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