第114話 お化け屋敷ダンジョン三階
二階の骨平原を超えて階段を降りる、ついた三階はオーソドックスな石壁型のダンジョンだ、古き良きゲームみたいな迷宮だね、通路の広さはパーティ全員が横並びでも歩けるし六角棒を振り回しても石壁に当たらないくらいには天井も高い。
「さて、三階はゾンビと人間型スケルトン、それと人型ゴーストとたまにリビングアーマーだ、姫の目的以外で問題はゴーストくらいか?」
ゴーストは物理攻撃が効き辛いとか情報にあったが。
「木三郎さんに一度物理で殴って貰いましょうか?、私の魔法があるので問題ない相手だとは思うんですけど」
俺の頭上からポン子の提案が聞こえてくる。
『シャァ!』
木三郎さんは了解を示している。
「私の斬撃って魔力も帯びてるからゴーストくらいなら一撃だってお母さん言ってたけど、まぁやってみれば判るわよね」
「さすが姫様です、ゴーストカードとか出しましょう! 研究の甲斐がありそうな対象です」
姫乃とリルルは緊張すらしてないな、まぁ俺もそうなんだけどよ、うちのパーティって遠近も揃ってるし物理と魔法もいけるし支援も居る、足りないのはバッファーとか回復系くらいでバランスが良いんだよなぁ……むしろ俺と木三郎さんの役割が被ってるうえに俺の方が弱いという……。
のんびりと石壁の通路を皆で歩いていると、壁の方から気配を感じる、皆も気づいた様で少し距離を取っている。
壁の中からスゥっと人の姿を薄くぼやけさせた様な存在が出てきた、これがゴーストか、人って言うけどぼやけてるし表情とかは判んねぇな。
「木三郎さんゴー、ポン子は援護の用意」
『シャァ!』
木三郎さんがマラカスアタックをゴーストに振り下ろす、ポン子は射線の通る位置で浮かびつつ身構えている……。
ズリョッ……ゴーストは消えていった、なんで?
カランッ、Dコインが石畳に落ちる音が響く。
「今マラカスがゴーストの体を削っていかなかったか?」
Dコインを拾ってリルルに渡しながら皆に疑問をぶつけてみる。
「そうですねぇ……魔力を帯びている武器なら攻撃出来るとありましたが、イチローが前に使っていたダンジョン産の木の棒で殴ってもダメージが与えられるのかもしれません、しかも木三郎さんの武器は地獄産のそれなりの物を使っている物みたいですし」
魔剣とかそういう物じゃないと駄目かと勘違いしてたな、まぁ俺のスライムスレイヤーⅣとかでは無理そうだが……だから新人は最初にダンジョン産の武器を手に入れろって事なのかもしれん、ちゃんと説明しろよ協会さんさぁ……。
「一番の懸念が消えたのでガンガン進んでいくぞ、移動速度上げていこう」
「了解お兄ちゃん、次にゴースト出たら私に斬撃飛ばさせてね」
「私も魔力でタゲを逸らせるか試してみたいです」
姫乃とリルルの要請に許可を出しつつ通路を進んでいく。
ゾンビが来たら木三郎さんがズドンッ!
スケルトンが来てもズドンッ!
ゴーストが来たら姫乃がザシュッ!
敵が混合でたくさん通路の前と後ろから来たらリルルが魔力誘導で操って片方が壊滅。
俺とポン子は予備戦力として控えている。
ドンッドカッドゴンッザシュッザシュュ!
音が通路に鳴り響く中武器を構えつつも暇な俺は横に浮かんで居るポン子に声をかける。
「暇だなポン子……」
「暇ですねぇ……たまにこうやって前後から敵が来た時に湧くゴーストがちょっとうざい、ウインドショット! くらいですかねぇ」
ポン子が足元の石畳から現れたゴーストに魔法でトドメを刺していた、ポン子の魔法でも一発で消えていくゴーストさん、皆が気配察知あるからいいけどさっきみたいに足元から湧かれると普通のパーティだとやばいかも?
ドンドガンッザッシュドカンッザッシュ!
「ゴーストのエナジードレインってのがどの程度なのかが判らんよな、攻撃食らわねーし」
「試しに食らってみますか? イチロー」
ドガンッザッシュッザシュッドコンッ!
「わざと食らう必要は無いだろ? 情報によると体力が減るってあったが……なぁポン子、モバタンで調べた時にあったあのうさん臭いサイトのゴーストダイエットって本当に出来ると思うか?」
「あーエナージドレインを食らうと脂肪が消費されるって奴ですか? さすがに冗談か嘘だと思うんですが……体力を吸うってカロリーを吸われる事では無いと……いやでも天使達が設定した部分だと怪しいですね……」
否定をしていたポン子が悩み始めた、この世界の神とかは適当だからな、あほな事もやりかねないとは思うんだよね、俺もダイエットじゃなく身長が伸びる話なら試すんだが……。
前方は木三郎さん無双、後方は姫乃とリルル無双だ、木三郎さんはまぁスタンダートにボコスカ殴っているのだが、後ろを見ると……。
「多重姫様の術!」
リルルがまた姫乃の分身を出して敵を攪乱している、正直姫乃が本気で斬撃を出せばすぐ終わるのだがあいつら遊んでるんだよね……。
「リル助! もっと胸を大きくしないと私に似ないでしょう? 後二センチお願い!」
「ええ!? これ以上盛ると別人になっちゃいませんか? 姫様……」
姫乃の注文が細かく飛ぶせいで最初はまったく同一で見分けがつかなかった分身達が、今はもうどれが本体か一瞬で判る様になってしまっている。
姫乃はリルルに『将来こうなる予定の姿だからいいのよ』とか説明をしているが……。
今の姿に似ていなかったら分身の意味ねーじゃんかと突っ込みを入れたい、入れたいのだが姫乃のあまりに必死な様子に俺とポン子は突っ込めずに居る、誰だよその長身でナイスバディなモデルさんみたいな姫武将は……。
てか楽しそうだなあいつら……等身大リルルとかの幻も出し始めてるし……。
その時木三郎さんの戦っていた前方からガチャガチャとした金属鎧の音が聞こえてくる、やっと現れたかリビングアーマー。
「姫! 目的の奴が来たぞ、木三郎さんと前後交代しろ!」
『シャッツ!』
木三郎さんは近くにいたスケルトンやゾンビを全て倒すと後方の姫乃の位置へと走り込み、姫乃は飛ぶ斬撃で一瞬にして後方の敵を一掃してから前方へ移動してくる、ほらな……あいつが本気出したら一瞬なんだよ。
「わー意外としっかりとした金属鎧なんだね、魔力も少し帯びてそうだし丁度良いね、じゃぁまずは挨拶代わりに」
「姫様がんばれー」
意外とというかガッチガチの全身金属鎧に見える。
リルルの応援を受けながら姫乃は前方から歩いてくる長剣を持った金属鎧なリビングアーマーに斬撃を飛ばす。
リビングアーマーにその斬撃がザシュッっと当たるも少しふらついただけで鎧に少し傷が出来ただけだった、さすがにがっちがちの鎧は厳しいのかね? チラッっと横の姫乃を見てみると笑っている、なんだろうお兄ちゃんはその笑みがすごい怖いんだけども……うちの妹がいつのまにかバトルジャンキーとかに成ってない事を祈る。
「その武器が邪魔ね」
姫乃はさきほどよりも大きく鉄扇を振り上げてから斬撃を飛ばす、いつもより体の動きが大きいかな……ってリビングアーマーの持っていた剣が手元部分から切り落とされていた。
今まで手加減した斬撃だったのか? 姫乃はそれを見届けると鉄扇を何処かに仕舞った、そして拳を握りしめ近づいてきた敵に向けて一瞬で懐に入ると金属鎧の一番分厚い胴部分に右の正拳突きを放って居た。
ドバパンッ!
始めて聞く様な音が響く、十メートル以上は吹き飛ばされたリビングアーマーだが何度か床にバウンドしつつも消える事はなかった、ガジャリと鈍い音を響かせて立ち上がるリビングアーマー、その胴部分はベコリとひしゃげている、すげぇな。
だが姫乃は正拳突きをした場所で自分の殴った右拳を左手でさすりながらしゃがんで居る。
「いったぁぁっぁぁぁぁーい! くぅ……やっぱ魔力を帯びた鎧をぶち抜くのはまだ無理かぁ、あーいたたたた、ごめんお兄ちゃんパスッ、うー姫シリーズ鎧の防御を抜けて衝撃が来るとは……イタタ……攻撃時に防御は期待するなってお母さんが言ってたのはこういう事かぁ……ふーふーあいたた」
しゃがみ込み右拳をさすりながら息を吹きかけている姫乃から救援が来たので取り合えずリビングアーマーに近づいていく、武器がすでに無い敵だ、殴りかかってくる動きも何処かぎこちない、相手の足を軽く払って転ばせてから思いっきり六角棒で叩きつける。
ドパンッ、いって、衝撃がもろに手に来るなぁ、しかも倒せてない、あーもう。
ドゴンッドガンッドキャンッドキュンッドゴンッ!!!!!
何度も何度も六角棒を叩きつけているとやっとリビングアーマーは消えていった。
「はぁはぁはぁ……堅い相手ってのはそれだけできついなこれ、魔法の方が効くかもか?」
「イチロー次は私が魔法で先制してみますか? どうします姫ちゃん?」
「ポン助にまかせる私の拳はまだまだ甘かった……斬撃ならワンチャン? いけると思うんだけどね……にゃー中華鍋なら拳でもいけたのに、やっぱり魔力を帯びてると別物だよね」
斬撃ならいけちゃうのか? てか中華鍋ってナニー? 妹の思ったよりもすごそうな強さに少し引いてしまう俺であった。
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