第113話 お化け屋敷ダンジョン二階
「平原だなぁ……」
「平原ですねぇ……」
「平原です」
「まっ平だね……」
『シャシャーシャ』
一階の墓場フィールドを通り抜け見つけた階段を降りるとそこは見渡す限りの平原だった。
「これ進むと骨が一杯出てくるんだろ? ポン子頼む」
「あいあいイチロー、ロックショット! 曲射バージョン」
俺の詳しい説明もない声掛けでも、やって欲しい事をやってくれるポン子。
ポン子が撃ったロックショットが遠く離れた地点に落ちると、その周囲の地面から骨が湧いてくる、湧いてきた骨はガチャガチャと音を立てて岩が落ちた地点へ移動をしてしばらくウロウロしている、しばらくして何も無い事に気付いたのかまた地面へと潜っていく骨達。
「スケルトンって奴だな、色んな形がいたな、人間型とか犬型とか」
「馬っぽい骨とかも居ましたよ」
「ネズミみたいな小さいのも居ましたご主人様」
『シャシャシャ……』
「動物標本パラダイスだね、お兄ちゃん」
標本は襲って来ないけどな。
地球上に存在する全ての動物のスケルトンが居ると言っても良い、なんならゴブリンやオークの骨もあるっぽいんだよな、どれくらいの種類があるのか調べようとした学者はあまりの種類の多さとじっくりと調べられない状況に匙を投げたそうだ。
「たまに武器を持ったスケルトンも出るから注意なそれ以外は正直じゃれついてくるペットみたいなもんらしいが……骨にじゃれつかれて嬉しい奴はおらん!」
「歯が鋭かったり牙を持っている動物系のスケルトンもそこそこ危険……なはずなんですがイチローのツナギは特製ですし、木三郎さんの体を傷つける程の威力は無いと思うんですよね、後は姫ちゃんですね」
ポン子の最後のセリフと共に俺も姫乃を見る。
リルルは心配そうな声色で。
「姫様は大丈夫ですか? スカートとすねあて装備の間に肌が見えちゃってますけど……」
「心配してくれてありがとうリル助、これはね姫武将シリーズ装備のセット効果で透明な防御フィールドが張られてるから全身鎧を着てるのと同じなの、まぁ魔法金属鎧を貫ける様な攻撃とかはまずいけど……さすがにこんな階層だとね?」
姫乃は自分の肩に座っているリルルの頭を撫でながら説明をしてくれる。
すげぇな姫乃の姫武将シリーズのセット効果、俺も勇者シリーズ防具とかあったら欲しいな。
「骨が地面から出てくるのが遅いから一気に駆け抜けたい所なんだけどな」
「それをやると大トレインになりますし禁止されてましたね、地道にやりましょうイチロー」
そうなんだよ……ポン子の言うダンジョンの規約的にも倒す気の無いトレインは基本的に禁止されてるしな。
「それじゃいくぞー木三郎さん先頭で湧きが止まるまで倒しまくる!」
「私は物理衝撃を考えてロックショットで行きますね」
「骨だと何で敵を認識しているのでしょうか?」
『シャシャッシャ!』
「私も斬撃飛ばしより直接鉄扇で殴る衝撃系のがいいのかな? お義母さんならなぁ……拳で大地をワンパンして全滅とか出来そうなのにぃ……この階面倒だね」
俺は最後の姫乃のセリフにちょっと恐怖を覚えた、お母さんワンパンで大地ごと全部倒すとか意味が判らないんですけど……。
おれ達が平原の中を進むと周囲から足元から少し離れた地点から、もうそこら中から骨が湧いて合体してスケルトンとして攻撃してくる、湧く時にめくれた地面がすぐまっ平に戻る所はさすがダンジョンだと思った、不思議で一杯だよな。
突っ込んできた牛型スケルトンを軽くいなして足の骨を折り、転ばせた所で頭蓋骨をズドンッ。
「骨は砕けばいいから六角棒と相性いいなぁ」
「そのうち斬る必要のある敵とかも出てきそうですけどね、ロックショットダブル!」
ポン子の撃った岩は一つの体に二つの頭があった犬っぽいのを倒していた。
「甘い甘い甘い! お義母さんの拳に比べたら貴方達の拳は豆腐で殴りかかっている様な物だよ!」
姫乃が鉄扇を畳んで鈍器の様に使い、近づくゴリラ型のスケルトンとかオークっぽいスケルトンとかを次々と砕いている、動きが素晴らしいな、戦闘系スキルは俺より多そうだ……。
ドゴッ! ドバンッ! グワシャッ! ドラセイッ! ドッカン!
『シャシャシャーシャシャーシャシャ!』
木三郎さんはマラカス鈍器で無双をしていた、俺達とは違う次元の戦いだな。
だがしかし……だ、実は今回の戦いで一番活躍をしているのは……リルルだ!
「ふふ、ふふふふふふ、行動アルゴリズムが判りやすすぎます……これなら寝ながら倒せそうです」
リルルは眼鏡をかけて白衣を着て戦っている、なんでとは聞かないでくれ、いつのまにか着てたんだよ。
スケルトンは生身の目で見ている訳じゃないのなら何で相手を認識している? と研究モードに成ったがすぐいきついたのが魔力感知だそうで、ゾンビや鬼火や鉱山ダンジョンのロックンロールなんかも同じ能力を持っているのかもしれない。
リルルはいつもポン子を大量に幻で出現させているがあれは魔力の塊をポン子に見せかけて操っているらしい。
つまり魔力を感知しているスケルトンにも効くのだけど、魔力があればポン子の姿をさせる必要がない訳で、繊細な操作で偽装をしない魔力の玉だけならリルルは百個くらいなら軽く操れるらしい。
そしてリルルはその魔力の球でスケルトンを釣り、別なスケルトンの急所な骨の近くに魔力の玉を置く、すると? そう、同士討ちでスケルトンが倒されていく訳だ。
ポン子が最初に撃ったロックショットに釣られたスケルトンも音や振動では無く魔力に釣られた訳で、つまりリルルの魔力の玉が地面すれすれを移動すればどうなる?
うん、それに釣られてスケルトンが一杯湧いてくるよね。
そうやって新たにスケルトンを湧かしては同士討ちをさせて湧きが甘く成ったら移動をして、とスケルトンの動きを操るリルルさんは希代の人形つかい、いやスケルトンつかいとも言うべき存在に見えた。
とっくの昔に俺達の周りの湧きは止まっている。
リルルは俺達を中心に螺旋状に飛び回り次から次へとスケルトンを倒していく。
押さえた笑い声を零しながらスケルトンを倒しまくるその姿は……。
「リルルさんが研究モードハイになっておられるんだが……あれどうしようか」
「後輩ちゃんは色々な面を持ってて楽しいですよねぇ……私は個性の無さで負けてしまいそうです」
ポン子は止める事を諦めている、安心しろお前は十分個性的だ。
「リル助すごいわね……ちょっと動画を撮っておきましょう、こんな芸術的な倒し方は他では中々見られないと思うよお兄ちゃん」
姫乃はカメラマンになってしまい。
『シャシャシャ!』
木三郎さんはドロップ品を集めてくれる様だ。
木三郎さんがドロップをリュックサックに入れて移動をしている、たまに撃ち洩らしのスケルトンが湧くが木三郎さんなら一撃だし大丈夫だろ。
リュックサックはポン子が出して渡していた。
「じゃぁちょっと休憩しようか、平原の真ん中だけど」
「そうですね……なんというか台風の目に居るという感じですが、まぁ飲み物とお菓子でも出しますね」
姫乃はモバタンをリルルに向けながら顔だけポン子に向けて。
「あ、私チョコがいいな、動画撮るので忙しいからお兄ちゃん食べさせて~」
そう俺に懇願して来た、仕方ねぇなぁ。
――
―
モグモグとお菓子を食べながら休憩をしつつ動画を撮りつつアーンもしつつしばらく待っているとリルルが帰ってきた。
俺達の前まで帰ってきたリルルは白衣と眼鏡を外して仕舞い込み。
「ふー楽しかったですー、骨は動きが他に比べて単調なので釣り易くて、ついついこの間皆でやったリズムゲームみたいで嵌ってしまいました、魔力が切れてしまったのでしばらく回復に勤めますです」
俺にはスケルトンの動きのどこが単調なのかさっぱりなのだが……リズムゲームに例える所といいリルルには違う世界が見えているのだろう。
姫乃はリルルを褒めつつ動画を見せてキャイキャイ騒いでいる、仲いいなお前ら。
『シャシャ』
木三郎さんが戻ってきた、実はよく見るとドロップ拾いの取りこぼしとかもあるんだが……考えてみてくれ、俺が何も言わないでも時間効率を考えて安いDコインとか単独の物や遠くの物は拾いに行かないで終わらせるという判断の出来るウッドゴーレムさんだ……。
やっぱ木三郎さんは世の中に出せないだろ?
木三郎さんといいリルルといい、すげぇ奴らだよな、ポン子の言動じゃないが俺は個性の無さで負けてしまいそうだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます