第110話 撮影後の話
ふぅ……今日の撮影は今までで一番だったかもしれん……撮影が遅れに遅れてかなり遅い夕ご飯に天使さん達も招待をして今は食べ終わった所だ。
撮影が遅れたのは撮影してる途中で思ったからだ、あれ? 揉みじゃないんだし翼出して貰ってもよくね? と新たな被写体の登場に俺の中の火は業火となり消えるまでだいぶ時間がかかってしまった、飯を食い終わった今でもう十時だしな……撮り過ぎたかもしれない。
浜辺の固有結界には巻き込まれて居なかったリルルもご飯を食べたらささっとロフトへ逃げて行ってしまった。
そして今はお茶をしている所なんだが、金髪天使さんとピンク髪天使さんがテーブルに顔を乗せる様に臥せっていて、お互いにああああだのうううううだの呻いている。
どうやら恥ずかしがっている様だ、ポン子いわく『テンションが元に戻ったのでしょう』という事らしい、救護室長天使さんはまったく恥ずかしがる事なく木三郎さんが淹れてくれたお茶を美味しそうに飲んでいる。
「貴方は恥ずかしがらないんですね?」
俺がそう救護室長天使産に聞くと。
「あれくらいの事で何を恥ずかしがる事があるのでしょうか? まだまだ若いですねこの子達も」
まるで何事も無いとばかりに応える救護室長天使さんだった。
今は普通の恰好に戻って青い髪の毛をうなじあたりで纏めていて、他の二人も普段着に戻っている、翼は撮影の時から出しっぱなしだ。
ピンク髪天使さんががばっと顔を上げると俺に近づき。
「今日は最高の癒し揉みをありがとうございました先生! また予約をするのでその時もお願いしますね! 撮影の方はその……次は大人しい恰好でお願いしますね? 可愛い服とか一杯あるのでそっちでやりましょう」
俺と握手をしながらそう言ったピンク髪天使さんはお暇しますと転移魔法で帰って行った。
残る二人の天使さん達、金髪天使さんも起き上がりお茶を飲み始める、もう十時だしそろそろ帰らんでいいのだろうか?
「それでは私もそろそろお暇しますがその前に、いくつかお伝えする事があります」
お茶を飲み終わった救護室長天使さんが俺に向きながらそう言った。
「あ、はいなんでしょうか?」
「山田一郎さん、貴方の情報は拡散しない様に情報封鎖をしていたのですが今回の件でその封鎖に穴が開きました、一度漏れ出した情報を再度抑える事は出来ないでしょう、それを理解しておいて下さいという事と」
金髪天使さんがお茶を飲みながら肩をビクッっとさせていた、そのまま横を向きながらもズズッっとお茶を飲み続けている所は……なんというか遠回しに怒られる事への慣れを感じるな。
救護室長天使さんの話は続く。
「それと大天使様からの伝言です、さきほどの件の謝罪とそして『お誕生日おめでとう、人の生を楽しんで下さい』だそうです」
ああ、あの人は俺の事も気にかけてくれているんだなぁ……俺の今の暮らしはあの人に出会ってから始まったとも言えるしな……。
「それと大天使様からはまだ続きがあってですね」
まだ話が続くみたいだ大天使さんの言葉だしちゃんと聞いておかねばな。
「『私は地上に行けないので昇天屋の神界出張とか出来ないかしら?』だそうです」
「は?」
俺はつい聞き返してしまった。
「『私は地上に行けないので昇天屋の神界出張とか出来ないかしら?』だそうです」
同じセリフを二回も言わせてしまった。
大天使さんってそんな事言う人だったの?
「初めて出会った時の畏敬の念を返してくれ……」
俺の中の大天使さんのイメージが壊れていく。
「あれは演技していたそうですよ? 天使や神のイメージがあるからとかなんとか」
救護室長天使さんはさっくりとネタばらしをしてくれた、金髪天使さんやポン子も有り得ると頷いている、そうかぁ……そういう人だったかぁ……。
「大天使さんには機会があるようなら出張する事もあるかもとお伝えください」
そんな機会が来るかどうかは判らんけど、それで大天使さんが嬉しくなるならやってやりたいな。
「判りました伝えておきます、では私もそろそろ帰りますね、次の予約抽選でも絶対に当てますのでまた素晴らしい揉みをよろしくお願いしますね、それと」
帰ると言いながら立ち上がった救護室長天使さんは座っている俺の耳元へと口を寄せると。
「次の撮影はコスプレもおーけーですのでどんな衣装が良いか考えておいて下さいね……少しならエッチな奴でもいいですよ」
そう俺の耳元で囁くと笑顔で手を振り転移魔法で消えていくのであった。
まじか? いやでもあの人の雰囲気だとヴィクトリアンメイドさんとかもいいかもなぁ……楽しみが一つ出来てしまった。
「相変わらずですねぇ救護室長も……」
「大天使様に付き合える器ですし……」
ポン子と金髪天使さんがそんな話をしている、もしかしてさっきの囁き聞こえてた?
そんな中ポン子がモバタンを出して俺に渡して来た、あ、姫からのメールか、どれどれと確認をすると……〈お化け屋敷ダンジョン〉? なんかすごい名称だなえーと正式なダンジョン番号はこれだから検索をしてっと。
俺が姫から来たメールを元に次に行くダンジョンを調べていると金髪天使さんがモバタンを覗き込もうとして。
ポン子がブロックをしていた。
「貴方は見ないでください!」
「なんでよ〈底なし腹〉、ちょっと見るくらいいいじゃない、モミチロー先生の事をもっと知りたいのよ」
「駄目です、貴方が認識する事で事件が起きる確率が上がります、ほら帰った帰った」
ポン子が酷い事を言いながら金髪天使さんを追い出そうとしている……だがこいつがそんな酷い事を嫌がらせで言うとも思えない、てことはまじで事件が起きるのか?
ただなんというか二人の間が気安いというか仲が良いというか……問題を起こす奴と規模を大きくする奴、仲良く二人そろって大天使さんに怒られている所が想像できてしまった……成程、俺は二人の仲の良さに納得をしてしまった。
「判ったわよ……それじゃぁモミチロー先生また優先予約で一番に来ますからね! その時はよろしくお願いします、撮影のコス……コスプレは……詳しい天使に聞いておきますね……エッチィのは無理かもですが……頑張って可愛いのを選んできます!ではまた」
そう言い残すと金髪天使さんは転移魔法で消えていった。
「さっきの救護室長天使さんとの会話はやっぱ聞こえていたんだな……」
「そりゃ救護室長様はわざと私達に聞こえる様にしてましたから、あの
わざと聞こえる様にしてたのかよ!
「ってもどかしい?」
「こっちの話です気にしないで下さい、姫ちゃんは何と言ってきたんですか?」
そうだな姫乃の話をしておかないとだった。
「ああ、えーと金曜は〈お化け屋敷ダンジョン〉に決めたってさ、今検索かけた情報を出すから」
俺はやりかけて居た正式なダンジョン番号を打ち込んで検索をかけた結果を壁のディスプレイに飛ばしてポン子と一緒に確認をしていく。
そこは通称〈お化け屋敷ダンジョン〉というらしい、屋敷と言っているが別に室内型ではなく、お化け関係の魔物が色々出るからそう呼ばれている場所っぽい。
「これはまた……苦手な人とか居そうなダンジョンですね……」
「そうだなゾンビとか臭いのだろうか? 変な汁とか飛んできそうで嫌だよな〈生活魔法〉でその都度汚れの浄化を頼むかもしれん」
『シャ!』
天使さん達が居なくなった事で台所方面で存在感を消していた木三郎さんもやってきた。
「あーいえこの世界のダンジョンに出て来る魔物はそこまで映画の様なリアルさを追求はしていないはずです、大抵の魔物はアニメに出て来る様な少しデフォルメされた感じにしてますし…‥匂いはどうなんでしょう? まぁ調べてみましょうよイチロー」
「そうだな、おーいリルルも降りてこーい!」
『シャシャーシャ』
皆で次に行くダンジョンを調べるべく、ロフトの上に居るリルルにも声をかける。
今日はちょっと寝るのが遅くなりそうだな。
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