第105話 誕生日だった
「待って! これはお茶の間で見せられないから!」
がばっと上半身を起こす俺、いつもの俺の部屋の天井だな。
横を見るとポニテ姉さんが俺に向けて手をヒラヒラさせて。
「おはようご主人ちゃん、良い夢は見れた?」
良い夢どころかあれはまずいでしょう? 映像にしたら海苔が何枚必要になるか判らんですよと俺の魂が叫んでいる。
「なんであんな夢を? いつもなら水着で浜辺特訓やら、水着でバスケの試合やら、水着専用の図書館やら……水着就活やら……なんか今思い返すとポニテ姉さんの夢操作って水着多くないですか?」
疑問をぶつけようとしたらやたら水着に偏っていた事に気づいてしまった。
ポニテ姉さんはいたって真面目に。
「だってご主人ちゃんはサキュバス達の水着姿大好きでしょう?」
「はい、大好きです」
しまった、あまりに当たり前の質問についつい本音を言ってしまった。
取り合えずお礼を言っておこう。
「何でか知らないですけど今回の水着でサキュバスvs天使の大運動会は最高でした、ありがとうございます、特に障害物競争が秀逸でした! でもいつもある様な落ちが無かったんですが何故に?」
いつもならこうギリギリ惜しい感じで攻めてくるんだよな、浜辺ならサンオイルの塗りっこでは無く特訓だし、バスケならラインズマンだったので真剣にボールの行方を見てないといけないし、図書館ではお静かになので動きがまったく無いし、就活では面接官が複数いたので順番に相手の視線に合わせる必要があって見たい部分を見る余裕が無かったし……。
「ご主人ちゃんが今日誕生日だって
そう言いながら布団の上に座っている俺に徐々に詰め寄ってくるポニテ姉さん。
んん? 何かポニテ姉さんちょっとおかしくね?
「ねぇご主人ちゃん、丁度良くお布団もあるし私で色々卒業しちゃいましょうよ、ね?」
俺の肩をがっちり両手でつかんだポニテ姉さん、ぐいぐいと押し倒そうとしてくる彼女の目はちょっとおかしい……瞳の中にハートマーク? 取り合えずっと。
俺はポニテ姉さんの両腕を掴み返して、ごめんポニテ姉さん〈ナデポ〉最大出力!
「むぎゅ!」
ポニテ姉さんは気絶して倒れ込んできた。
俺が寝てた布団に寝かしてやりながら近くに浮いているリルルに問う。
「ポニテ姉さん様子がおかしかったよな? リルルは理由判るか?」
リルルは空中に浮かびながら顎に手をあてて少し考えると。
「姉さんはたぶんご主人様の精力に酔ってしまったのだと思います、連日吸ってはサキュバス達に配る為に自身の中に貯め込んでいましたから、許容量をオーバーしてしまったのではないでしょうか、人間が毎日お酒をたくさん飲み続ける様な物ですね」
リルルはそう言うと、ちょっと減らします、と言ってポニテ姉さんに触っている。
恐らく貯め込んでいる精力を吸い出してリソースに変換しているのだろう。
酔ってしまうって事は俺の精力はアルコールだった?
「んん……これで……大丈夫です……」
リルルが吸い終わったのか顔を赤くしながらこちらを向いてそう言った。
そういやリルルは慣れたのか気絶しなくなったよな。
「まったくお騒がせな精力ですねぇイチロー」
ポン子が欠伸をしながらロフトから降りてきた。
まるで俺の精力が悪者みたいな言い方は止めてくれよ! 俺の精力さんは悪くないってば、ただちょっと普通の人の数十倍あるだけなんだって!
……言葉で表現すると酷い字面だな俺の精力!
「朝ごはんにするか、今日もダンジョンで稼がないとだしなー」
「そうですねー、また一杯稼いでダンジョンラーメン食べに行きましょう! いや……他のダンジョンの側にも似た様なお店があるかも? これは調べないと!」
「私はダンジョン産の魔果物を使ったお店が良いです!」
ポン子はまだしもリルルがすごい元気に主張をしている、研究以外でこんなにグイグイ来る事なんて無かったのにな……ダンジョンラーメン美味しかったもんなぁ。
モグモグアーンと朝ご飯を食べ終わり、木三郎さんを召喚してお茶を入れて貰い食後のノンビリタイムを過ごしているとポニテ姉さんが起きてきた。
「うう……ごめんなさいご主人ちゃん……迷惑をかけたわね、末妹ちゃんもごめんねぇ」
ポニテ姉さんが珍しく弱弱しげに謝っている。
「元気ないですねポニテ姉さん、何かあったんですか?」
「……握手会がね……終わらないの……」
ポニテ姉さんがポソっと呟く。
「握手会? ポニテ姉さんは芸能人にでも成ったんでしょうか?」
まぁ美人だし愛嬌もあるし芸能人に向いていそうではあるけども。
「そうじゃなくて……いえまぁいいわ、今日はご主人ちゃんの誕生日を私達サキュバスの皆でお祝いするからね? ダンジョンからは早めに帰ってきてね? 妹達も差し入れ用のご飯とか一杯用意してるはずだから」
表情を一転させて笑顔になったポニテ姉さんがそんな提案をしてきた。
「ありがとうございます、なら今日はダンジョン休んじゃうか? 距離的に移動時間とか考えると午前だけってのも難しいしな」
「イチローがそれでいいなら私は賛成しますよ、ご飯一杯差し入れしてくれる様ですし」
「お休みですか? ならポン子先輩もジャージになりませんか?」
『シャシャ!』
『『『ピョンピョンッ』』』
反対者は居ないって事で今日は急遽お休みにする事に、最後のピョンピョンしているのはクッション代わりにしているビックスライムの大次郎さんやスラ蔵さんやスラ衛門さん達だ! いつも部屋に居るのに何故か影が薄そうな気がするんだよな、なんでだろうか?
ポン子はリルルのジャージ攻勢から部屋の中を飛びまわって逃げている、部屋の中の空中鬼ごっこは勝負がつかず、リルルの世界ジャージ化計画は一向に進まない様だ。
一旦帰っていったポニテ姉さん、人が来るなら掃除でも思ったが木三郎さんやスライム達がこまめにお掃除してくれているので部屋はいつもピカピカなんだよな。
そして壁の魔法陣が光り二人のサキュバスが現れる。
「こんにちは、また厨房借りるわね」
クィーン姉さんはまた料理を担当してくれるらしい。
「ありがとうございますクィーン姉さん」
趣味みたいな物だからいいのよ、と言いつつエプロンを装備すると早速とばかりに調理を初めていた、見た目は派手なレースクィーンなんだけどなぁ……すごい家庭的な人だよね。
「ご主人君お誕生日おめでとーまた遊びにきたよ!」
格ゲー姉さんはちょいちょい遊びに来る様になっている。
「ふっ! また最強決定戦をしに来たんですね格ゲー姉さん、いいでしょう俺のゲームの腕を見せつけてあげます」
「ふふー、私だっていつまでも負けてばかりじゃないからね! 勝負だよ!」
いつもの様に大次郎さんクッションを背に二人並んで壁際に座り、モバタンからディスプレイに情報を飛ばして新たに自分達用に買ったコントローラーを手にゲームで対戦をしていく俺達。
「じゃぁ私達も参加しましょうか後輩ちゃん」
「判りましたポン子先輩」
ポン子とリルルも参戦して来る様だ。
「お、おれの最強伝説が崩れる予感がしてきた……」
俺の嘆きを聞いたポン子が
「最強って……そこの二人対戦で勝ち越してるだけじゃないですか、今日も仲良くビリ決定戦を決めて下さいね」
「ごめんなさいご主人様、遊びでも勝負事で手を抜いてはいけないって姫様に注意されたので……」
リルルはすでに俺に勝ったような事を言って来る、まだゲーム始まってないよ?
「そうそう毎度毎度負けてたまるかよ! 今日こそは勝ってやる!」
「頑張ろうねご主人君!」
――
コロコロ、ディスプレイの画面の中で六面のサイコロが振られる
「ぬぉ……なぁポン子なんでスゴロクゲームなのに俺の出目は三以下しか出ないのだろうか?」
しかもプラス収支マスは大抵避けていくんだよなぁ……おかしいよなぁ、これがバグってやつか?
「貧乏神でもついてるんじゃないですか? あ、起業ルートに行きました、悩みますがここはやっぱり食べ物関係の会社を立ち上げでしょうか」
ポン子は俺の質問に答えながらお菓子関係の会社を立ち上げていた。
「私は手堅くいきますねご主人様」
リルルはそう言っているが証券会社に就職するのは手堅いのだろうか?
「ありゃま、サイコロで誰かを選んで結婚しろだって、えぃ! ……ご主人君よろしくね?」
格ゲー姉さんと何故か結婚してしまった、しかもこれからの収支はお互いの資産に影響し合うらしい、妙にリアルだな……。
コロコロ、サイコロを振る俺。
「ギャンブルに溺れて借金が増えた……ごめん格ゲー姉さん」
「イチローは相変わらずですね……っと新商品が爆売れしたそうです、トップに躍り出ました」
ポン子が独走しかけている。
コロコロ、リルルがサイコロを振る。
「成績が良くてボーナスを貰いました、ポン子先輩を追いかけます」
証券会社のボーナスで億単位貰えるとか有り得るの?
コロコロ、格ゲー姉さんがサイコロを振る。
「あわわ! また子供が出来ちゃった……もぅ……頑張り過ぎだよご主人君は! 頑張って二人で育てていこうね、借金は……私が内職でもしてなんとかするよ!」
子供が一杯なのにギャンブルするって控えめに言って俺は最低なのでは?
コロコロ、次こそは良い出目を!
「……ごめん格ゲー姉さん愛人に子供が出来て慰謝料を払う、借金増えちゃった」
「さすがイチロー精力数十倍なだけありますね、コロコロっと次の商品は中ヒットって所ですか……まずいなぁ」
ポン子の伸びも頭打ちしてきたな。
それに比べて。
コロコロ、リルルがサイコロを振ると。
「あ、ついに証券会社のトップに成りました最高益も出して資産がすごい事に」
リルルさんの資産の桁がおかしい事になっている。
コロコロ、格ゲー姉さんがえいやっとサイコロを振る、気合十分だね。
「ああ! 今度は三つ子ちゃんが生まれた……もうご主人君頑張りすぎだってばぁ! そろそろ野球チームが出来ちゃうよ?」
――
そして終盤、俺が最後のゴール者だ。
最後のサイコロを振る。
「……また愛人との子供が出来たんだが……このゲーム確率おかしくないか?」
すでにゴールしていたポン子が。
「イチローが持つ業のせいでしょうかね、まぁ兎に角私は二位でした……なんでしょうか準優勝なのにあんまり嬉しくないんですよね」
そりゃなぁ……一位がなぁ……。
「一位でした、資産の数字が表示されないって事あるんですねぇ、ゲーム制作会社にバグ報告しておきますです」
リルルさんはもう世界を買い占められるくらいに成っていた、運が良いとかそういうレベルじゃないんですけどこれ。
「楽しかったねー皆、でもご主人君が凄すぎて僕は大変だったよー結局子供が十人を超えちゃうんだもの」
格ゲー姉さんが楽し気にそう語る。
サイコロの出目が凄かったんですよね、ちゃんと単語をしっかり入れて下さい違う意味に聞こえてしまいます。
格ゲーは無理でもスゴロクならいけそうなもんだと思ったんだが……次はRPGで勝負しようぜそれなら負け無い気がするんだ。
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