第92話 買い物と教育
「じゃぁ鐘有さん達を助けたのはお兄ちゃん達って事なの?」
「まぁそうなるな」
「帰ったらそのウッドゴーレムを見せてね、お兄ちゃん」
「了解だ」
俺と姫乃はリサイクルショップで雑貨やらを選んだ後に俺丼屋に向けて歩いている途中だ、その道中に木三郎さんや救助の事を軽く教えておいた。
姫乃は溜息を吐きながら俺に。
「あんまり無茶なダンジョン探索はして欲しくないんだけどね、秘密にしないといけない事やらでお兄ちゃんも下手にパーティを組める状況じゃないみたいだし……家のの名を上げるなんて本家との約束なんてもう守らなくてもいいし、私が学校を辞めてお兄ちゃんとパーティを組むっていうのはどうでしょうか?」
「折角良い学校に入学したんだからそれは無しだよ姫、それに学校ってのは友達を作る場でもあるだろう? 家の名とかどうでもいいが仲の良い友達が出来るチャンスかもしれないじゃないか、俺が進学出来なかった分も学校行事とか色々聞かせてくれよ」
後ろ盾の無い施設出身の成人は高校進学なんでせずに探索者に成るしかねーからな……すっげー頭が良いとかだと補助金が出たりもするらしいが……まぁそういう人間は養子の話が先に来る物だしな。
「それをお兄ちゃんに言われたら行くしかないじゃないですか……まぁ友達は難しいと思いますけどね、エリート校だからなのか自分と同じ格の家柄ならライバル、自分より低いなら駒にしようと引き込み交渉をしてきますし、高いならゴマすりの相手って感じなんですよね、すべての学生がそういう訳でも無いんですが、得てしてそういった考え方をする人間は声が大きかったり行動力があるので目立つんですよね……」
ふーむ、普通の高校より面倒くさそうというか上流社会の縮図みたいになってるのかね?
「じゃぁあの鐘有さんとかどうだ? ちゃんと謝ってきたし性格は悪く無さそうだったじゃないか、第一印象は悪かったけどまぁ……悪党って感じでも無かったしよ」
俺がそう言うと姫乃は少し呆れながら。
「……お兄ちゃん……鐘有グループの事気づいてないですよね?」
なんじゃそりゃ初耳だな、姫乃に向かって頷いておく。
「やっぱり……あまりに反応が無いのでそうじゃないかと思ってました、鐘有の家は古くからある魔法名家達と違って、元々は裏世界に関係ない只のお金持ちだったんですがダンジョンが出来てからその力を利用して表でも裏でも大きく勢力を伸ばした家です、口さがない者の言葉を借りるなら成り上がりの家なのです、お兄ちゃんが普段利用しているスーパーとかコンビニとかも系列会社のはずで、すっごいお金持ちだと思って下さい、近づこうとしてる者も多いので私が下手に寄ろうとしたらそういった者達に嫌がらせされるでしょう……そもそも私は彼女に興味ありませんけどね」
ふーん……あれ? 鐘有……カネアエンターテインメント?
「なぁ姫、もしかしてゲームや玩具業界でトップクラスのカネアか?」
「確かそれも系列会社だったと思いますよお兄ちゃん」
ふぉぉぉぉ! まじか!
「やっべぇじゃんか! すごい人だったのかあの人! うはー握手でもしておけば……某カードゲームの限定特殊スターターセットの予約とか頼めないかなぁ?」
「テンション爆上げの所申し訳ないのですけど、あの人そういう事言ってくる相手には冷たいですよ、自分を家の付属物みたいに見られるのがすっごい
あらま、女性を怒らせちゃ駄目だな、姫乃や施設の子らもそう言ってたしな。
「いやまぁ半分冗談だ、お金持ちなんだな、それならもっと護衛連れてダンジョンに行けばいいのにな」
「半分は本気だったんですねお兄ちゃん……普段はもっと居るっぽいですよ、授業サボったのがバレない様に護衛を
守る側からすれば最悪の護衛相手だな……てーか姫乃が気づいたというその他の護衛に俺はさっぱり気づかなかったな……気配察知スキルとか早く欲しい。
「お金持ちはお金持ちで友達を作るのや行動するのも大変そうだな、俺は金を持ってなくて良かっ……いやお金はやっぱ欲しいかもしれん」
「さっき横に居た護衛の方もクラスメイトの同級生でお互いに結構仲が良いみたいですよ、まぁしばらくすれば取り巻きから誰か選ぶのではないでしょうか?」
そうこうしてる間に俺丼屋に着き、姫乃と一緒にお弁当を選んでいる。
「お兄ちゃん、ここのお弁当屋さんはメニューの種類が一杯ですねー、あ、この〈あなたこにつくしたい弁当〉って美味しそうじゃないですか?」
え? その弁当の前に置いてある説明のポップを読むとメニュー考案にP氏が助力してくれたと書いてある……これポン子の事だよね? その事を姫乃に説明してあげる。
「へーポン助やるじゃない! じゃぁじゃぁこれを皆の分買って帰りましょうお兄ちゃん!」
リルルは食べる量少な目だし三つ買っていくか、まぁそれだけだとポン子が足りないから……〈春のかき揚げ丼〉とデザートにイチゴ大福を十個ほど買っていく、かき揚げはたっぷりの桜エビと、新タマネギにタラの芽や、ふきのとうやアスパラガスなんかも入ってるらしい。
俺と姫乃は買い物を終えて仲良く帰宅していく。
――
――
side 妖精ズ
留守番をしている妖精達は二人で会話をしている。
「では後輩ちゃん次はこの〈俺の姉妹がギャルに成った〉を読んでいきましょう」
「了解ですポン子先輩! さっきの〈隣のギャルは純情派〉も面白かったですね~」
スライム椅子二つにそれぞれ腰掛けている妖精は、壁掛けディスプレイに権利を買ったであろう漫画やアニメ作品を映し出し鑑賞しているようだ。
「後輩ちゃんも最近は私やイチローのノリにぼちぼち付いてこれる様にも成りましたし、そろそろこういった方面の知識を蓄積していくもいいでしょう、幸いダンジョンに行くたびにお小遣いを貰ってますしね」
「そうだ先輩、権利を買うのに私のお小遣いを使っても良いですよ? まだ先輩の分しか使ってないですよね?」
「あーいや、私の分からでいきましょう、後輩ちゃんの分は貯めておいて研究用のスクロールとか買ったらいいですよ」
それを聞いたピンクツインテ妖精は立ち上がり、隣のスライム席にいる金髪ロング妖精に飛びついて抱きしめる。
「ありがとうございますポン子先輩! やっぱり先輩は優しいです~お友達です~」
「にょわ! 顔がポヨポヨ圧力で潰されるから! 離れましょう後輩ちゃん!」
しばらく抱き着いてワチャワチャしてた妖精ズだが、離れる様に言われたピンクツインテ妖精が離れたと思ったら金髪ロング妖精の隣に滑り込み腕を組んでニコニコしている。
「あの……後輩ちゃん? スラ蔵さんが寂しそうだしあっちに座りませんか?」
スラ蔵さんは気にしていない。
「たまにはいいじゃないですかポン子先輩、お友達はこうする物なんです! ふふーふ」
ピンクツインテ妖精はニコニコと、金髪ロング妖精は困惑顔で
「後輩ちゃんと腕を組んでるだけで圧力がすごいんですよ……私が組んでも相手はスカスカでしょうけどね! って何で私が心にダメージを負わないといけないんですか……」
「では続きを一緒に読みましょう先輩!」
「……まぁいいか、えっとですね後輩ちゃん、元々ギャル性能の高い〈
――
「えーそんな事も判らないのキャハッ……こんな感じですか? 先輩」
「そうじゃないんです後輩ちゃん! 相手を馬鹿にしては駄目なんですよ、相手に親愛の情を持ちつつも茶化していくという……うーん言葉で説明をするのが難しい……兎に角さっきのは駄目ですNGです」
「難しいです~、台本下さいですポン子先輩」
「確かにいきなりアドリブは難しかったかもですね、では今度使えるセリフ集等を作っておきましょう、微妙に下ネタを絡めたりすると良いかもしれませんね」
「はい頑張ります!」
その時ガチャっとドアの鍵が開く音がする、そしてドアが開き。
『ただいま』
『ただいま~ポン助リル助帰ったわよ~』
「では今日はこれで終わりにしましょう後輩ちゃん」
「了解です先輩、またお願いします」
金髪ロング妖精は壁に映していた各種漫画や情報等を消してから玄関に向かい、それにピンクツインテ妖精も追随する。
「お帰りなさいイチロー、姫ちゃん」
「お帰りなさいですご主人様、姫様~」
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