第89話 角ウサギ実食
少し買い物をしてから家にたどり着き木三郎さんを召喚し、部屋の中ほどで大次郎クッションに腰掛ける、このふわふわポヨポヨ椅子は癒されるわー。
「は~、今日の狩りは疲れたよなぁ……固定狩りってのは移動狩りより楽なのかと思ってたが別の大変さがあるんだな」
ポン子もテーブル上のスラ衛門さんクッションの上で脱力しながら話す。
「そうですねーイチロー、固定狩りなのに効率が良いという言葉に疑問を持つべきでした、私達のパーティだと殲滅力が少し足りない感じでしたね」
リルルもスラ蔵さんにモバタンを設置しながら答える。
「私に攻撃力があればもう少し楽かもなのですが……」
「いやいやリルルの幻のお陰ですげー助かってるから、俺の武器が弱いせいもあるかもな」
『シャシャシャ……』
「いや木三郎さんを攻めてる訳じゃなくてな、むしろウルフに噛まれても何とも無い硬さやマラカスで殴った時の威力がえぐいんだよな……ゴブリンと戦ってた時はパコンッて感じだったのが今はドカンッ!」
『シャシャー』
「そんな照れるなよ、これからも頼りにしてるからな木三郎さん!」
『シャ!』
「……イチローは木三郎の言いたい事が判ってて会話してるのですか?」
「さすごしゅ、です」
いんやさっぱり判らんから、フィーリングで適当に会話してるだけだ、そしてリルルに変な単語教えたのはポン子だろ。
「まぁ取り合えずだ、まず帰り路に相談してたモバタンで肉の簡単な調理の仕方を調べようぜ、リルル頼む」
リルルは了解ですと言ってモバタンを操作しながら壁のディスプレイに情報を飛ばす、ふむふむ、肉の簡単お料理レシピ記事がずらりと並ぶ、かたっぱしから調べて回る。
「へー生活魔法で油無しで揚げ物って出来るのか、ポン子やリルルでも出来るって事かね?」
「いえイチローここに調理スキルも持ってないと美味しくするのは難しいとあります、私も単純にご飯を温めるだけとかなら出来ますが……やってみます?」
「二度揚げ? 状態にする感覚やらはお料理系スキルが必須と書いてありますね、ご主人様」
『シャーシャ』
「クィーン姉さんは調理系スキル持ってるのかもな、素人でも出来る方法で検索しようぜ」
色々調べてみたが、一口大に切って下味を付けて焼くだけの簡単なやつで試してみる事にした、角ウサギの肉を切る訳だが骨がついてないドロップを選んで来たので簡単に切り分けは出来た、それらをボウルに入れて醤油とニンニクで味付けをして、下味を馴染ませる時間がないがそこに片栗粉をバサッと入れて混ぜてから多めの油を入れたフライパンで焼いていく。
非常に簡単だがまぁ料理の素人ならこんなもんからやっていくべきだよな。
うーん肉多すぎだなこりゃ山になっちまった……料理の素人だからどれくらいの素材の量が必要なのか判らんかったんだ、まぁ余ったら冷蔵庫にでも入れて明日の朝にでも食べればいいか。
「焼きあがったぞー、今日は帰りに買ってきたオニギリと角ウサギの揚げ焼きって奴だ、暖かいうちに食べちゃおうぜ頂きます」
「良い匂いですね、お料理お疲れ様ですイチロー早速頂きましょう」
「すごいお肉の山ですね……頂きますご主人様」
『シャシャーシャ』
木三郎が飲み物を用意してくれている、ありがとう。
「……美味いなこれ……普段弁当とかで食べてる肉より格段に美味い、これで一番安い方の肉なのかぁ……俺の素人料理でここまで美味いとはなぁ……高級弁当もここらの肉が使われてたのかもしれないな」
「異世界焼肉よりは味が落ちるけど十分美味しいですねー、イチローこれはお肉を確保しにまた狩りに行く必要があります、半年くらいはもつらしいので一杯確保しましょう!」
「あーんハグッモグモグ、美味しいです~ご主人様、私は魔力の宿った果物とかも取りに行きたいです」
うーん果樹園とかは死角が多いから、魔物が襲ってくる事を考えると気配察知系スキルを覚えてからにした方がいいかもしれんな。
そんな事を説明しながら食事を続けているとモバタンのチャットアプリで姫乃からメッセージが来ている、明日の土曜日はお休みなので朝から遊びに行ってよいですか、と来ていた。
「明日は土曜か……そういやポン子、探索は適度にお休みを取って揉み屋もやるんだよな? 日曜あたりを揉み屋にしとくか?」
「そうですねー決まった曜日とかにはせずに、疲れたら休むという感じにしましょう、まぁ今回は姫ちゃんと土曜日に遊んで日曜に揉み屋でいいんじゃないでしょうか? 命がかかってる狩りは体力だけで無く精神的にも疲れてるでしょうしね、狩りは何日も連続でやると危険だと思います」
「ご主人様、私はお休み中に木三郎さんの記憶領域拡張なんかをしたいです」
「じゃまぁ土日はそうするか、リルルも研究おっけーだ、モバタンで姫に連絡しておこう」
えーと、了解だ土曜は仕事をお休みにするから遠慮なくおいで、っとこんな感じでいいかメッセージ送信っと、うぉ! 三十秒もたたずに返信が来た、早すぎでは?
明日が楽しみ……いや今日からお泊りすればよかった姫乃一生の不覚です、というメッセージと共に、無念! とか叫んでるお侍の絵柄が来た、時代劇好きだしなあいつ……俺は特にメッセージ用の絵とか用意してなかったので、アプリのデフォルトに入って居る笑顔マークで返しておいた。
そして昇天屋の公式サイトに日曜の予約受付を出しておく、ただ月曜には狩りに行くつもりなので人数を減らして午前二人午後二人にしておいた、明日はまた揉み動画を見て練習しておかないとな。
ポン子に頼んで金髪天使さんを贔屓すべく連絡して貰ったんだが、なんか後始末とやらですげー忙しいらしく無理そうだとかなんとか、すっごい悲し気な返事が来たとポン子は言っていた。
さて、ご飯の続きだとお皿に目を移すと、揚げ焼きの山が丘に成って居た……。
「ちょーっと待て、山の様にあった揚げ焼きの山がいつのまにか丘になってないか?」
「非常に美味しかったですイチロー、いつもは手加減してたんですがついつい美味しいので……荒野に成ってないのでヨシ!」
「美味しいですもんね~私はもうお腹一杯です」
このままだと肉のお皿がポン子に草も生えない荒野にされてしまう、急いで俺も残りを食べる、ってかあの量でも足りないのかよ……。
結局一つすら残らず消えた揚げ焼きお肉、片付けが終わると部屋の隅っこで早速木三郎さんをカードに戻して魔法を使っている白衣リルルさん、本当に研究系の事が好きなんだなと思う、はよスクロールか魔道具がドロップしないだろうかね。
「草原ダンジョンは定期的に行きたいよな、次は他の食べ物が手に入る場所をピックアップしておくのいいかもしれないな、俺らが狩るのに楽そうな所で」
「見通しが良くて敵の強さが程々で美味しい狩場なんて他のパーティが一杯来そうですし、結局何処かしら問題のあるダンジョンを選ぶしか無い訳ですが、イチローパーティの弱点は手数や範囲攻撃の無さですかねー」
「俺のパーティ名ってそのままなのな、一撃の火力も木三郎さん頼みになってるのもあるな、幸いというか魔法攻撃があるのは他の初級探索者パーティに比べると優位な点かもしれないが」
「普通二名以上の探索者で固定パーティを組む場合、専用のパーティ名を協会に登録するそうなんですが……ボッチのイチローには必要ないのでシンプルにいきましょう、初級魔法とはいえ豊富な魔力と〈救世〉による魔力回復強化で弾数増し増し、そして状況によって四属性を撃ち分けるポン子ちゃんは最高って事ですよね?」
ボッチという言葉の矢が俺の胸に刺さる、そうか俺はまだボッチだったんだな……探索者としては一人だもんな……しかしポン子もリルルも木三郎も表に出せない事情が一杯あるしパーティ募集やら何処かに入る訳にもいかねーんだよな。
つまり俺は皆の為に望んでボッチで居るんだ! よし元気出た!
「そうだなポン子は最高だ、実際ポン子が居なかったら草原ダンジョンでも白夜ダンジョンでも終わってるバランスだったし、じゃまぁ月曜に行くダンジョン候補でも煮詰めていこうぜ」
素直にそのまま褒めたらポン子が照れてしまった、まぁ一人でも欠けてたら駄目だっただろうけども、そこは黙しておく。
壁ディスプレイに情報を映しながら相談していく。
「うーん鉱物系ドロップや採取を狙って〈鉱山〉ダンジョンはどうよ?」
「正直白夜ダンジョンの六階層とかにもう一度行きたいのですが……助けた相手が私達の事を協会からどの程度聞くかによりますよね、情報公開は拒否しましたが守られるなんて思わない方がいいと思いますし、さすがに個人名とかまでは教えないと……思いたいですね、〈鉱山〉ダンジョンは低階層なら行けそうですね」
木三郎さんがウッドゴーレムから進化した事を知られるのが不味いんだよな、彼女達は気絶してたし大丈夫とは思うんだが。
「一階は〈ロックンロール〉しか出ない階層っぽい、採掘用のツルハシは入口で借りれるらしいし買取実績の為に鉱石を売っておくのもありだよな、一階じゃほとんど鉄とか水晶くらいしか出ないらしいが二階は魔鉄が取れるポイントが出る事もあるって話だ、ゴブリンから出る武器とどっちが効率いいかは判らんけどな」
「一階で出る魔物の名前は〈転がる岩〉とか呼ばれてませんでしたか?」
正式名称なんて岩石型ほにゃらら何式の何型とかアホみたいに判りにくい名前だからな、ゴブリンも亜人目小人科なんとかなんとかって誰もそれで呼んでるのを聞いた事ねーし、みんなが呼んでる通称でいいじゃんか。
ロックンロール呼びを調べてみたら少数派だった……でもさ、今日もロックンロールを狩りに行くぜ! とか言う方が気分が上がると思うんだけどなぁ……ちぇ。
なんだかんだと話し合い、月曜日は〈鉱山〉ダンジョンの一階を試してみる事に成った。
さーて寝るまでは例の匠の揉み動画でも見直して復習しておこうかなっと。
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