第88話 草原ダンジョン
「馬鹿言うな! レタッチは誤魔化しじゃないんだ! 被写体の魅力を引き出す行為なんだよ!」
ガバっと上半身を起こす俺、いつもの俺の部屋だな……。
昨日あれだけ最高のセクシー画像群を見たのに、何故か夢はそれらの調整作業を編集長として指揮する物になってしまった……夢を操るのって難しいなぁ……こっそりハーレム系のエチエチな夢が来るんじゃないかと期待してたんだけどな……。
「おはようございますご主人様」
「おはようリルル」
横からリルルの声がしたのでそう返事を……あれリルル? 急いで顔を声の聞こえた側に向けると、浮かんで居るリルルとその側に倒れているサキュバスが一人、うん、ポニテ姉さんだね、何してんの?
「ポニテ姉さんはなんで寝てるの?」
「昨日の約束通りいつもの調整が終わった後の私が吸精する部分を姉さんに変わって貰ったら寝てしまいました、私もいつも寝ちゃいますので気持ちは判ります」
なるほど? ……なぁそれって気絶だよな、とは思うが特に問題も無さそうなので突っ込まずにいる。
それならそのうち起きるだろ、んじゃまぁ飯の準備の前にシャワーでも浴びにいくかぁ。
――
せっかくなのでと朝食を一緒に食べているポニテ姉さん。
「
そんな風にリルルに注意をしている、リルルはよく判ってないようだが、俺は危険物か何かなのだろうか。
「あーんもぐもぐ、ジャージや靴の対価になりますかね? ポニテ姉さん」
リルルからのあーんでパンを食べながら、そんな風に聞いてみるとポニテ姉さんは。
「あのねご主人ちゃん、十分だから……正直今回の分だけでも多いくらいだからね? これで終わりにしてもいいのだけれど……地獄で待ってるサキュバス達の事を考えるともうちょっと続けて欲しい所なのよね……」
「いやでも地獄産のジャージや靴って丈夫なんでしょう? 俺の装備と同じ様に、それならこの程度では対価にならないと思ってるんですが、ほいリルルもあーん」
リルルはハチミツ塗ったパンが好きだよな。
「ああ、ご主人ちゃん勘違いしてるわよ、確かに地上の服よりは丈夫だけど、ご主人ちゃんに送ったツナギや靴と比べちゃだめよ、あれはまぁそこそこ? かなり? あーいやまぁ気にしないで使ってね、ってありがとうあーんっパクっおいしっ」
ポニテ姉さんは言葉を濁した、普通の素材で作ったって言ってたような気がしたけど実はそれなりにすごい物だったりするのか? 破れないとかじゃなくてスライムの体当たりの衝撃がほとんど無い時点でおかしいもんな……うむ、気にしないでおこう。
「じゃえーと木三郎さんの予備服や姫乃の分のジャージとかをお願いする事で吸精を続けるって感じでどうでしょうか? ポン子もいるか?」
姫乃は興味持ってたし欲しいだろう、ポン子は首を横に振っていたがリルルのお揃い宣言を跳ね返せずに首を縦に振った、普段はこのままの服でいきますとは宣言してたけど。
「ありがたいわご主人ちゃん、何なら食事の用意も全部こっちでやるわよ?」
いやさすがに全部ってそれは……ってこらポン子! イチローヒモ化計画とか呟くな失礼だろ、そんな事考えて……ませんよね? あれ? なんで返事せずに横のリルルと急にどうでも良い事話しだすんですか? ちょっと? ポニテ姉さん?
疑惑が少し残ったが、たまにクィーン姉さんの差し入れも貰う事になった、いやまぁ美味しいから嬉しくはあるんだけど……。
それと揉み屋専門になったら年間億の給料を払っても良いと言ってるサキュバスが居ると話を振られた……その人は何でそんなに稼いでいるんですか? ほほうキャバクラ嬢ですか……男達の汗と涙の結晶なお金がその人を通して俺に流れ込むと……。
「それはまぁ将来的にもっと強い探索者になって引退する頃にでも考えますね、今は自分や身内に暗示のハゲ中年の時のような悪意が来た時に立ち向か……いえ大事な人らを抱えて逃げれるくらいの強さを得ておきたいんです」
そう答えておいた、立ち向かうのは物語の主人公やら強い人にまかせます、俺は俺と大事な人の安全を守れる事に注力しますね。
ご主人ちゃんらしいね、と笑いながら帰って行ったポニテ姉さん
――
やってきました〈草原ダンジョン〉ここはダンジョンの入口が四つの中規模ダンジョンで白夜ダンジョン程では無いがそこそこ人は多い、広大なフィールド型ダンジョンはリポップ時間がゼロの個体が居るとされ肉を求める探索者がかなり居る、安全な資源フィールドが無いダンジョンなのでみんな戦闘用装備をしている人達ばっかりだ。
まず協会の受付に行き昨日モバタンで注文しておいた物を受け取る、生産系スキル持ちが作った初級者にお勧めの薬セットって奴だ、状態異常に多少なり効果がある物とかが色々含まれるセット商品だ、初級者用と銘打ってあるがセットで二十万したんだけどね! 命がかかってるお薬セットだからそこそこ評判の良い奴を選んだらそうなった、ほんと探索は準備に金がかかるなぁ……。
初級者用とされている入口から入っていく、ダンジョンの階段を降りると石の通路がまっすぐ伸びており途中に階層転移魔法陣部屋がある、周りに人が居ない事を確かめて転送部屋で木三郎を召喚、そそくさと出て先に進む。
そして突き当りの入口を潜ると、そこは広大な草原だった……入口の横は壁がずっと続いておりそこに景色が投射されているらしく、近くに寄ると壁だと判るが遠くから見たらまだまだ先があるようにも見える。
中側を見ると微妙に地面が波打って丘とかあるし多少木々が生えてたりもするがそれなりに見通しが良く安全に狩りが出来るらしいが……。
「モバタンの情報通り、初級探索者っぽいパーティが一定間隔ごとに固定狩りしてるな碁盤の目みたいに間隔空けてる……」
情報で見た限り一階は角ウサギがメインでたまにリトルボアや草原ウルフが出る階層らしい、リポップ時間ゼロの個体がそれなりに居るらしく固定狩りパーティがフィールドを埋め尽くすと効率がかなりよくなるとか……空いてる部分があるとそこに魔物が貯まってしまうらしい、草原と付いたウルフは単に毛皮が草と同じ色で認識し辛いってだけの相手で単体脅威度は武器持ちゴブリンより低いとされてる。
まぁいつまでも入口に居る訳にもいかず壁にそって移動する事に、移動してる間にも魔物はポップしてるが、このダンジョンのローカルルールで魔物がタゲを取るまで攻撃しないという物がある、破るとペナルティが有る訳じゃないが評判は確実に悪くなるそうなのでこちらに来るまで待つしかない。
四つ角が見えるあたりでパーティが居ないスペースを見つけたのでそこを基点とした狩りをする事に、死角を作らないように四人で別々の方角を見つつ敵が湧くのを待つ、……木三郎ってどうやって視界を得てるんだろうな? 気になったので周囲を警戒しつつ聞いてみると今は視覚器官を顔の前面からお面の目の部分に移しているらしい、木肌から全てが見れる訳では無いようだ。
――
「よっと、ほいっとな、後よろしくー」
『シャッ!』
ウルフの突撃を受け流して転ばして木三郎方面に流す、後はそっちにまかせて次は角ウサギっと……。
「あんまり湧かないのな? ゴブリンを探すよりは楽なんだが……こんなに人が次から次に来るほどの狩場かね?」
俺らが固定狩りをしてる間も入口方面からパーティが次々とやってきて空いてる場所を探して奥に向かっていく、こんなに来るのにこの湧きじゃ儲けも微妙じゃね?
――
……と、思ってた時期もありました。
お昼がもうすぐといった頃だろうか、湧きが止まらなくなった、一定数が常に湧くといった感じで休む暇が無くなる。
「ウインドショット! イチローあんまり離れないで下さい! ウインドショット! それと〈救世〉で魔力回復したいです ウインドショット!」
「判ってる! 〈救世〉! こないだリソースを使い切ったからそんなに余裕ないからな、ってドロップ拾う暇がないな、こなくそっ」
リルルが出した幻に突撃してきていたリトルボアの足をすくって転ばせる、後は木三郎にってウルフに腕を噛まれてる……がそのまま地面に叩きつけてからマラカス鈍器アタックでトドメを刺している、俺もボコンボコンとリトルボアに棒を叩きつける。
ドロップの肉はラップのような物に包まれていてこれに包まれていると腐らない、ラップは永遠にはもたず、最初は全部透明だが段々と半分くらいラップ部分の色が変わっていき青から黄色そして赤へ、最後はラップのような物は消えてしまう、だいたい半年くらいと言われている、地面に落ちてもまったく平気な訳だが、牙やら毛皮も合わせてすっげー邪魔だ、ああまたウルフが来た、リルルも一生懸命幻を出す合間に回収してくれているが単独で離れさせる訳にもいかず敵の湧きが止まらないので足元がごちゃごちゃしてきた、これやばいか?
「ここは撤退した方がいいか? 湧きの量は一定だからこなせない訳でもないが、とりゃ! 後お願い、もう少し人数欲しくなるな、ほいっっとこなくそ!」
『シャ!』
「ウインドショット、常に一定の量が襲ってくるっていう、ウインドショット、情報はありましたがこんなにとは、ウインドショット、思いませんでした倒せなくはないんですけどね、ウインドショット」
「い、いそがしいですー生活魔法でばばっとドロップを集めたいですが魔物の湧きが止まらないので使えません~」
うーむこれは撤退も……と思ったらなんか湧きが止まった、チャンスだ!
「今のうちにドロップ回収!」
みんなでドロップを集めてここのダンジョンの為に買った前使っていたよりも丈夫で大き目のバックパックに仕舞っていく、肉がかさばるんだよな、肉は受け付けに売るから空間庫使えないしさぁ、他パーティが見ていない事を確認し木三郎の陰で肉以外を空間庫に仕舞って貰う、っとなんだ民族大移動ばりに奥からパーテイが入口に向けて移動してる……なんじゃこりゃ……ポン子! モバタンプリーズもっと詳しく調べるべきだ、ついでに壁際に移動してあの集団の後に続いて一旦撤退しよう。
最後尾を歩きながらモバタンで調べていると、どうもパーティが一定間隔でフィールドを埋め尽くすと効率が良くなるってのはさっきの状態の事の様だった、即湧きの魔物がすごい勢いで巡るらしい、鬼湧きモードは稼ぎ時らしいがドロップがすごい量になるのである程度の時間でみんな一度外まで売りにいくそうで、そこで自然と湧きが止まるから持久戦が出来るパーティにはお勧めなんだと。
集団の後に続き木三郎さんにバックパックを背負って貰い協会の受付に行く、そこで肉をひたすら売る訳だ、午前中の肉だけで十万を超えた、まぁ少数のパーティだと湧きに押しつぶされる事故もあるみたいだし、これくらいないとやってられんかもしれない、ただちょっと俺らは疲れたので午後は壁際固定狩りで湧きを少な目にする事にした、他のパーティも人数が少ない人らは壁を背負ってたしな。
昼食後も壁際で空いてる場所を確保してしばらくするとまた湧きが止まらなくなった、でもまぁさっきの半分くらいの湧きかな?
『ッシャシャー!』
ドゴンッと木三郎の一撃で沈むリトルボア。
「ちょいっとな! 後はトドメよろしく~、ふぅ壁際の湧きが俺らには丁度いいかもな、お代わりきたっと」
「ウインドショット! ですかね~、さっきはちょっと危うかったかもしれません、ウインドショット! 効率が良いという言葉の裏をもっとちゃんと調べるべきでした」
「この数だと私の幻は要らないかもですね、アイテム拾いに専念しますです」
『シャシャ?』
そんな止まらない湧きもしばらくすると止まり、また民族大移動、空間拡張されたバックとかスキルが無いと嵩張るし重いドロップは大変だよな、安いドロップは上級探索者とかは無視するって話も判る気がする、俺らも周りに合わせて売りにいく、どうもこの波は午前一回午後二回あるのがこの一階の流れっぽい。
二回目の肉は四万円ちょいでした。
三回目も同じくらいで全部合わせて肉だけで一日十八万以上稼げるんだな、他の毛皮やらは協会と石板で価値がほとんど同じなので、種類の違う物を数個づつを受け付けで売って実績の足しにし、残りは全部石板で処分、合わせると二十万以上、フィールドの中側で頑張れば三十万は超えるんじゃないかな? 大体六人以上のパーティが多かったから……一人四万前後は確実に稼げる狩場って事だね、これだとスライムソロの三倍以上になるかな? ポーション系がドロップしないのが残念だ、カードも出なかったしな。
一旦ダンジョンに戻り死角で木三郎さんをカードに戻してから帰宅をする、今日はお肉を何個か売らずに残しているのだ……楽しみやね。
大量に生産されているように感じる魔力の宿った肉だが国規模で見たら微々たる物で、一般庶民は資源ダンジョンから取れる普通の肉を食べている……魔物じゃない牛やらがポップする資源ダンジョンがあるらしい……角ウサギのドロップ肉は魔力の宿った肉の中では安めな方で庶民でも手の届く値段だったりして、高級なカラアゲとかで食べられる訳だ。
◇◇◇
ちょっと宣伝
異世界に行った大志さんの物語もちょろっと書いているので
そちらもどうぞよろしくです。
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