第87話 価値と次なる予定

 ポン子がモバタンを見ながら俺に語りかけて来る。


「これガーディアン以外は同じ名前なのにガーディアンが付くだけで何で数百倍の値段になってるんですか?」


 俺もモバタンを手に入れてから色々と調べたんだが。


「産出されるカード量の問題らしい、珍しい物が高くなるってやつさ、ダイヤが石ころのようにそこらにゴロゴロ落ちてたら高くならんだろ? 戦力的な価値より希少さで高くなるらしいんだよ」


「なるほど……でもまぁあの棒を吸収したなら数百倍くらい……」


 ポン子はまだ納得し切れてないか、なら追加情報を。


「それに木三郎は見た目の変化が薄いよな、ゴーレム系のガーディアンは馬鹿みたいにでかくなって足元に居る人間に気づかない時とかあったりするらしいんだが、木三郎はカードに描かれている破れたツナギを見るに身長が十センチくらい上がったマッチョって感じだろ? つまり特殊個体だな、これで価値がさらに数倍になる」


「それはつまり……素のウッドゴーレムの千倍以上の価格がつくと?」


 甘い甘いよポン子さん。


「そして木三郎はありえないくらい頭がよくなった、それが加味するとさらに数倍以上でドン! あのラシルって言葉は亜種を示すと思うんだがそれの意味次第ではさらにドンッだ、ウッドゴーレムは五十万前後です、それが千倍からの数倍でさらにドンッだと仮定としても木三郎の価値はおいくらに? さらに謎の+1も有る、いやまぁこれは棒に掛けてた強化スクロールのせいなんだろうけども、モバタンでそんな情報見た事もないしなぁ……」


「最低でも十億以上にさらに知性やラシルや+1の価値……高級弁当何個買えるでしょうか?」


 驚いていたと思ったら食欲が勝るポン子だった、ちなみに最低値段でも一万個以上の弁当が買える訳だが……、あれ? ポン子が食べる量から考えるとそんな高い値段じゃない気がしてきた……。


「まぁ実際の強さが上がった訳じゃなく希少価値の値段って事なんだけどな、木三郎さんのカードは他人には見せられない物になった、ダンジョン以外で連れまわすにはポン子の時みたいに登録が必要なんだが……ってやべぇリルルの登録してなかった……モバタンで今やっちゃおう」


 会話中にすごい大事な事を思い出したのでリルルのテイマー登録をする事にした、ダンジョンの中というか入口の周りの壁で囲まれた広場までなら登録は必要なく召喚出来る、後私有地とかでもおっけー、車道に出るようなペガサスとかだと登録も面倒なんだけど妖精ならモバタンで情報送るだけでおっけーだ、忘れてたよ。


 リルルは、木三郎さんカードの前でじっとしている、心配しているのだろうか。


「リルルちょっとモバタンで一枚撮影いいか? そのジャージ姿のが欲しいんだが」


 リルルは俺を見ると。


「ご主人様? ごめんなさいどんな改造をするか考えてたら意識が飛んでました、えっと撮影ですね、ポーズとかいりますか?」


 改造の事を考えていたらしい、木三郎さんにちゃんと同意を取ってねと言いつつ、モバタンで撮影をし俺の探索者情報のテイマー部分に登録していく、妖精で幻惑系っとこんなもんかな、登録終了。


「リルルの登録は終了した、えっと何処まで話したっけか、そうそう木三郎はテイマー登録は止めておいたほうがいいな、つまり外で連れまわせない事になる、もしダンジョンとかでゴーレムとばれてもファイター系ウッドゴーレムの亜種って事で通すからよろしくなポン子」


「了解イチロー、誤魔化す事は大天使様相手に慣れている私におまかせですよ!」


 慣れる程何を誤魔化しているのやら……頼りにはなるんだろうけどな。


 よしじゃぁ取り合えず召喚してみようと、テーブルとかを端に寄せてっと。


「木三郎召喚」


 部屋の中央で現出する木三郎、うーん背が百九十くらいなってて筋肉モリモリあるくらいの太さの手足になっとるなぁ……ツナギが穴の空いた胸だけでなく全体的に破れちゃってる、銀髪カツラと狐面は進化した時に自身の体として吸収しちゃったっぽいな。


「いやこれ、服とかどうしようか……」


「困りましたねイチロー、普通に洋服を買ってもまた破れて内部の木肌を見られるのは嫌ですよね、前ならばれても只のウッドゴーレムでしたし……頭の悪い振りをすればどうにかでしたが……これはちょっと……どうしましょうか?」


 まじでどうしよっか。


 そんな俺達に手を差し伸べたのはリルルだった。


「姉様に頼んで地獄のお店で買ってきて貰うのはいかがでしょうか? 私のいきつけのジャージ専門店なら色んな種族用のジャージやらがありますし、素材は地獄産で破れにくいと思います」


「なるほど……しかしサキュバスさん達に甘える事を覚えてしまうと堕落しそうでなぁ……」


「イチローの懸念は判ります、サキュバスのヒモになってしまうのが怖いのですね? ではちゃんと対価を設定するという線引きをしたらどうでしょうか?」


 なるほど対価を……いやまて誰が誰のヒモだって? 間違ってないがそこまではしない……しないと思う……しないよね俺?


「うーむ仕方ないか、ポニテ姉さんあたりに頼んで貰っていいか? 対価は四十万以内でなんとか収めて下さいって伝えてくれ……またスカンピンコースだなぁ」


 はいと返事をしてからリルルは魔法モニターを出してどこかに連絡をしている。


 木三郎さんはポン子に両手を出していて、何かに気づいたポン子がマラカスを渡していた。


『シャシャシャシャシャーシャシャシャシャーシャ』


 すまん何が言いたいか判らんが……たぶんご迷惑をかけたとかそんな事を言っているんだと思う。


「無事でよかったよ木三郎、お前のおかげで女性二人は無事だった、よくやったな! お前の事を誇りに思うぜ」

「イチローの言う通りです、貴方は最高の仕事をしました、胸を張って下さい」

『シャッ! シャシャッシャ!』


 うんうん、やっぱり何言いたいか判らんや。


「ご主人様連絡終わりました、姉さんの仕事が終わったら来るそうです」


「ありがとうリルル、それじゃまぁ夕飯でも食ってポニテ姉さんを待つとするか」


「賛成ですイチロー、屋台で買ってきたあれやこれを出していきますね~」


 ポン子が鼻歌を歌いながら空間庫から屋台飯を出し、木三郎さんは手足に残っているツナギや靴の残骸を外してから飲み物の準備をし出した、そういやお茶の入れ方を動画とかで研究してたな、まだまだ素人だが勉強熱心なんだよな木三郎は。


 干物をダンジョンで使うの忘れてたな……それは空間庫に戻しておこうぜポン子。


 屋台のお焼きを食べる、これ美味しかったからまた買ったんだ、中身が色々あって楽しい、今は焼き豚お焼きだ。


「ほいリルルあーん、しかしあれだな……金髪天使さんには謝らないとな……あーん」


 リルルのお返しあーんでお焼きを食べながら金髪天使さんの事を考える、プレゼントを一日もたたずに消費してしまった事になる、今度会ったら謝らないとな。


 ポン子は焼きそばを食べながら。


「ずるずるもぐもぐ、私は逆に安心しましたけどね、不運ついてないがこの程度で済んで良かったとさえ思ってます、そして昨日の懸念はやっぱり正しかったと思いました、はぐはぐ、次はフランクフルトとたこ焼きにしようかなっと」


 なんだろう金髪天使さんってそんなについてない人なの? なんかちょっと可哀想だな、頑張って揉みで癒してあげようっと。


 そんなご飯も終わりお茶を飲みながら各自好きな事をしていた時だった、壁の魔法陣が光り、ポニテ姉さんが現れる。


「やほーご主人ちゃん、皆もこんばんは~、わぉ大きいゴーレムだね彼が例の話の子ね?」


 こんばんはポニテ姉さん、木三郎をペチペチしてるポニテ姉さんに早速事情を話していくと、ジャージやら靴やらを買ってきてくれる事になった、木三郎のサイズを測っているポニテ姉さんに対価の話をするもお金はいらないと言われる、その代わり後で頼みがあると言われた、俺に出来る事ならと答えておいた。


 ――


 ――


 ほどなくして帰ってきたポニテ姉さん、木三郎にジャージと靴と他にも何か渡している。


『シャシャ?』


「うん、それは木三郎に譲渡する物だ、君の物だよ……んでポニテ姉さん他のは……股引や靴下やロンT? あージャージが破れた時とかに下に着てると隠せて便利かもですね、配慮ありがとうございます、それで対価代わりの頼み事というのは?」


 ポニテ姉さんが苦笑いしながら言うには、前回の焼肉の後に格ゲー姉さんが持ち帰ったお裾分け用の俺の精力がサキュバス界にちょっとした騒動を起こしてしまったらしい、細かい事は言わなかったが要はバブル期の株価のような事が起きたとか、なので株を大量放出して株価を下げたいとかなんとか、それ俺の精力の話ですよね?


 いつのまにか俺の精力は株になっていたらしい。


 どうも精力がバブルってるイチローです! ってそれだといつか弾けて大暴落しちゃうんじゃ?


 ポン子にバブリチローと呼ばれた、弾けたらお前も一緒に貧乏になるんだからなーその時は弁当半分ね、とお返ししたら謝ってきた。


 対価の話に戻ってリルルを見ると仕方なしとばかりに、朝に俺の内部の調整作業後に吸っている神の器に漏れて貯まっている分を提供しましょうと言ってきた、という事らしいので朝にまた来て貰えます? じゃあそれでよろしくお願いします。


 でリルルさん俺の内部の調整っていつまでやるの? 人としての結界部分にヒビが入ってるから封印が解けて神になるまで終わらないんですか……人としての生の間は永遠って事じゃんそれ……迷惑をかけるねぇリルルさんや。


「ご主人様それは言わない約束ですよ」


 リルルが即そう返してきた、ポン子色に染まってきているね君、ギャルっぽくは無いけど。


 ポニテ姉さんは転移で帰って行き、木三郎さんも着替え終わった訳だが……百九十近くある背でがっちりした体格の銀髪狐面がジャージを着ている……これあれだ、練習中の覆面プロレスラーだ、執事要素何処行った! いや、さっき入れてくれたお茶は美味しかったけどさぁ。


 さすがに明日白夜ダンジョンに行くのは止めておこうという事になり、計画を前倒しにしてゴブリンの次に行く予定だった通称〈草原ダンジョン〉に行く事にする、階層の全てが超広大な草原フィールドが連なっているダンジョンで角ウサギやらウルフ系やら牛系やらトラとかの猫系やら、動物系の魔物がそろい踏みで、奥の階層だとゴブリンやら亜人系魔物の集落や砦なんかも有るとかなんとか。


 俺が行こうとしてる一階層は肉と毛皮と骨や牙がメインドロップで、肉ダンジョンと呼ぶ人も居る、牛やイノシシ系の魔物が一杯出る階層は魔力肉狙いの人がかなり居るとか、俺らはさすがに一階層で安全を確保しつつ狩る事から始めるけどね。


 このダンジョンで各種毛皮や骨や肉を協会に売って買取種類の実績を積み上げる予定だ。


 さて、寝るまでの間は自由時間だ、リルルは木三郎をカードに戻して研究をしているし、ポン子は壁ディスプレイでアニメを見ている、じゃぁ俺は……契約魔法陣めいしの調査と確認をせねばな、二十八枚も有ると忙しくてまだ全部の画像見れてなかったんだよね、図書委員のカードデータも移さないといけないし、ああ忙しい忙しい。


 むむ! 画像ごとの順番を変える事が出来る設定もあるのか……これは非常に重要な問題だな……お気に入り順にするべきか……いやいやコスプレの内容を揃えるべきか……これは大問題が起きたな……いやこっちのヘルプに……スライドショーの設定ごとに順番を登録出来るだと! この性能は神だな! ああいや地獄在住のサキュバスだし……この性能は邪神だな! とでも言った方がいいのだろうか?


 アニメを見ているポン子から一言、イチローの思考がよこしまなのではと突っ込みが来た、俺また口に出してなんか言ってしまっていた? え? セクシー水着カテゴリーに入れるかアニメコスカテゴリーに入れるかそれが問題だ、とはっきり口に出していたと……? それは申し訳ない、いやだって悪の女性大幹部ってどうして水着系の服装してんだよと思わないか? ……ポン子は思わないらしい解せぬ。


 モバタンにも大量に画像があるしそれの整理もせねばならん……出来が良さげなのはすでにポニテ姉さんや金髪天使さん経由で送ってあるけども、まだまだチェックしきれてないボツにするには惜しい画像が一杯なんだよな、これらは俺がきっちり確認しておく事が礼儀だと思うんだようんうん。


 ――


 そんなこんなで明日に備えて寝る事に、今日は良い夢を見れそうだ。


 ちなみにポン子は、一勝十一敗になった、おめでとさん。

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