第83話 新たな力
家に帰り飯を食い終わった俺はポン子やリルルに木三郎さんと諸々反省会や相談をしている、大次郎さんとかスライム達も勿論クッションとして参加! さすがにスライム達を戦闘に出してやられちゃうと大変だものね仕方ない。
「それでな、俺はこれを買っちゃおうと思うんだ」
そう言って皆にモバタンで協会主催のオークション画面を見せる。
「〈杖術〉スクロールですか? イチローは〈剣術〉系が欲しいとか言ってませんでしたっけ?」
「うう、お小遣い二百回分近いです……お高いです……」
『シャッ……』
残念そうにお値段を見ているリルルさんとそれを慰める木三郎さん、すまんお小遣いが安いんだリルル、もうちょっと稼げる様に頑張るから待っててくれ。
オークションの期限が今日で終わる奴があるんだが杖術ってあんまり人気ないうえに今回複数個出てるから他の戦闘スキルスクロールより安いんだよな、今回狙う奴だとたぶん四十万で入札すればいけそうな感じ、剣術とか、メイスなんかの撲殺系の棍棒術とかは余裕で百万超えてくる、杖術は棒が武器のせいか火力が足りないってイメージがあるのかね……。
「戦闘系のスキルを覚えると体の動き全体もフォローされるらしいからな、取り合えず一個取っておこうかなって、他のは買えそうにないし安い雑魚スキルでの補正値上げはもっとお金がある時にしようかなと」
「そうですねイチロー、後で行ける町で強い装備を買おうと回復を買う金をケチり、途中の雑魚敵にやられてセーブからやり直しなんて事もありますし、リアルな現実なら多少無駄が出来ても少しづつ強くしておくべきですね、縛りプレイをしてる訳でもありませんし」
ロールプレイングゲームの話かな? 施設の頃は共用モバタンだったから独占するようなゲームは出来なかったんだが、今度ちょっとどんなのがあるのか見てみようかな、アクションゲーム苦手な俺でもRPGなら得意かもしれん!
「それで――」
『ピンポーン』ガチャっと鍵の開く音。
もうこれで姫乃じゃない事が確定しました、誰だろ?
「お邪魔しますモミチロー先生!」
金髪天使さんだった、まだしばらく忙しいとか言ってなかったっけか、彼女はささっと部屋に入ってきて俺の側に座り込み空間庫からリボンのかかった棒? を取り出し。
「揉み屋最終日にサキュバス達と一緒にお祝いをお渡しするつもりだった天使一同からのプレゼントです、サキュバスが防具を天使が武器にしようという話になってまして、先生は棒を武器にしている様なのでこれにしました、剣を使っていたなら私のお古とかの聖剣をプレゼントでも良かったんですが……棒はさすがに持ってなくて……取り寄せになりました、どうぞ受け取って下さい!」
ニコニコと笑いながら俺に棒を渡してくれる金髪天使さん、そうかぁ……安くても俺が剣を使ってたら天使が使う様な聖剣が手に入ったのかぁ……。
「ありがとう御座います金髪天使さん、頂きます」
受け取った棒はいつも使っている棒と同じ長さくらいでやけに軽い、いや重いのに軽く振れるという摩訶不思議な棒だった。
「不思議な感触の枝ですね金髪天使さん、これはやっぱり神界の素材なんですか? 結構すごい素材だったり?」
実は神界のすごい木の枝だったりしないだろうか? なんちゃってな。
「ああいえ、それは癒し好き同好会の総力を持って北欧方面に勤めている天使に頼み込んで手に入れた物でして、ユ……せ……あーえーと、すごい大きな木から取れる枝を槍の柄のような棒に加工した物ですね、すっっっごい大きい木の末端なんで残ってる力はそんなにすごくは無いのでお気軽に使って下さい!」
そう言い放った金髪天使さん、何故かテーブルの上のポン子は険しい表情をしていた。
そして金髪天使さんはさらに何かを空間庫から取り出そうとしている、この流れはポニテ姉さんと同じだ! まさかマラカス第二段か? ……金属の輪っかだった、アクセサリーかな。
「そしてこれは私個人からのプレゼントです! 魔道具なブレスレットになります」
そう言って俺に渡してくる金髪天使さん、俺はそれを受け取り、ブレスレットなら着けて見せるのがいいかな? 左手の手首に装着してみた、魔法効果があるのだろうピタっとくっつくように締まりズレて来ない。
そんな俺を見て金髪天使さんはブレスレットの説明を始めた
「そのブレスレットは転移魔法の基点になる効果と、一定の操作をする事で私に救難信号を届ける効果があります、つまり……いつでも何処でも私がお助けしに行く事が出来るのです! そう、まるでそれは守護天使のごとく……ところで先生は守護天使を増やす事について予定は変わりましたでしょうか?」
増やすってポン子を増殖させるってやつだっけか、増えたポン子を想像してみる。
『『『『イチローお弁当お代わり!』』』』
ぶるるるっ、体が震えた。
「あ、いえ、やっぱりポン子は一人でいいかなって思います」
金髪天使さんはそれを聞くとちょっとションボリしていた、ポン子に増殖して欲しいのだろうか。
そうして金髪天使さんはブレスレットの救難信号の出し方等を俺に教え、前に約束していた天使の転移基点用の魔道具を壁に設置し、そしてまだ一杯仕事が待っているので……と帰って行った、サキュバスに続いてチャイムの鳴らない訪問者が増えるのか……。
ポン子は未だに険しい顔をしている、こんなポン子もなんか珍しいな、リルルは天使が苦手だから静かなのは判るけど。
ちなみに木三郎さんは空気を読んでマラカスを使わずに大人しくしててくれた、空気を読むウッドゴーレムとかすごいよな。
「どうしたポン子、いつもなら横からチャチャの一つも入れてくるのにそんな難しい顔をして」
「いえね、イチローが杖術スキルを買う事を決めたその時に、世界……いえ棒の上位互換っぽい武器を持ってくる、あの
ひどい言い草だな……。
「それくらいの偶然なんてあっても可笑しくないだろ? そんな金髪天使さんを不運の申し子みたいに言わないであげろよ、可哀想じゃんか」
そんな俺の発言にポン子は俺ジト目で見てくる事で答え。
「イチローは神界の事件を知らないからそういう事が言えるんですよ……発端は私ですがあの天使が関わって事件の規模が膨らむとかよくあったんですから……」
お前が発端の事件とやらを起こさなきゃいいんじゃね?
「まぁいいじゃないかポン子、この棒も今使ってるやつよりかは良さげだし武器強化用の消費スクロールを使ってしまおうと思うんだ」
「あーそれがいいですねイチロー、いつまで取っておいても仕方ないですし、私は高級な回復薬はボス戦の前に使い切る派ですし」
ちゃんとボス戦で使ってやれよ。
リルルがすちゃっと立つと俺に向けて。
「ご主人様! 私! 私に! 私に使わせて下さい~! 術理がどういった物なのかを間近で確認しておきたいんです!」
『シャシャッシャ』
テーブルの上で手を上げてピョンピョン跳ねながらそう主張してくるリルル、横で木三郎が応援してる。
「いいよじゃぁ頼むなリルル」
減るもんじゃなし、リルルに頼む事にした、テーブルの上にスクロールと棒を置きポン子やスライム達は避難した。
リルルは白衣と眼鏡を装備してから、ってかあの白衣も眼鏡の鑑定機能みたく何か魔法がかかってるのかもしれんなぁ、スクロールを広げている、しばらくするとスクロールが消えていき棒に光がまとってキラキラしてからその光も消えていった。
「終わったみたいだな、リルルも何か判ったのか?」
そう聞いてみた。
「はい……一番肝心な部分が判らないという事が判りました……あれは神の? ……となると模倣は無理でしょうか……法則は予想とほぼ変わりません……コア部分の力の代わりを……でもそれだと……」
『シャーシャ?』
リルルさんが長考に入ってしまわれたのでそっとしておき、ポン子と話す。
木三郎さん、その状態のリルルはそっとしておいてあげて。
「これで棒+1ですねイチロー、改造もしましたしマークなんちゃらに指定するのですか?」
「いや、俺の手が加わってないし試行錯誤感も無いからなぁ……プラス棒とでも呼ぶか?」
「プラス棒でもラシル棒でもイチローの好きにするのが良いですよ、こっちの古い棒は私が空間庫に預かっておきますね」
なんだよラシルって、何処からきたんだその名称。
「ありがとうポン子、後はオークションに入札してっと、良し完了、他の杖術の値段を見るにたぶん落札出来るはずだ、手に入ったら受け取りは明日行く白夜ダンジョンの側にある協会受け付けにしておこう」
「イチロー明日スキルが落札出来ていたら地下五階よりも深い階層に行くんですか?」
「そうだな……五階で慣らしをしてからもっと深い階層に行こう、武器を持ったゴブリンもそこそこ出るらしいから注意しつつな、そこらで武器ドロップするとぼちぼち美味しい値段になるそうだ、頼むぜポン子、木三郎さんも、リルルは……まだ長考中だな」
「まかせて下さいイチロー!」
『シャシャシャッ!』
元気よく返事をするポン子と木三郎。
リルルは未だにブツブツと考えている。
モバタンで杖術について調べると……突かば槍 払えば薙刀 持たば太刀なんて言葉が出て来る、俺がうっすら覚えていたのとはまるで違ったな……まぁよし。
それと『ギャル転生令嬢な私の執事は完璧主義者』を皆で壁ディスプレイを利用して読んでみたが、中々に面白い話だった、木三郎さんも楽しそうで何より……ゴーレムが感情を表現するとかモバタンで得られる情報からは無かったんだよね、上級以上の情報はほとんど表に出て来ないから進化した個体ならあるのかもだけど。
ギャル完を読んでいる時に姫乃からのチャットメッセージがまたあった、『今お風呂からあがった!』とか報告されても俺にどうせいと? メッセージ数が一日二十回を超えたら多すぎ注意報を出そう、『湯冷めする前に暖かくして寝なさい』と返事をしておく。
おやすみなさい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます