第78話 異世界焼肉

 オハナシの終わった俺も姫乃もゲーム大会に混ざりネット対戦とやらをしてみた、ネット対戦はアカウントの戦績で相手とのマッチングも変わるらしく、ある程度上手い人らは姫乃のアカウントで、ある程度上手くない俺と格ゲー姉さんは俺のアカウントで対戦をする。



 でもおかしいんだよ、俺や格ゲー姉さんの対戦相手は普通にコマンド技を出してくるんだ、こっちの弱さに合った人とマッチングするんじゃないの?


 え? これが最低ランク? だって遠距離魔法攻撃とかしてくるよ? さっきテレポートとかしたよ? ……仕方ないので壁のディスプレイは上手い人らに明け渡し、俺と格ゲー姉さんは俺のモバタンの画面で対戦する事に、勝っても負けても楽し気に笑う格ゲー姉さんとの対戦はすごく楽しいです。


 十コンボ? 二十コンボ? ナニソレ、俺もカードゲームならなぁ……コンボデッキとか組めるんだけども、あ、負けちゃった、やるなぁ格ゲー姉さんこれで九勝九敗じゃないか、次が最強を決める戦いになりそうだな!


 え? 切りがいいので賭け? いや賭け事は……ああ、お金じゃないのね、ふむ、みんなにお裾分けしたいから多めに吸わせて貰う権利? いやそんなの賭けなくてもいいんじゃ……いえ受けますよ、本気でいくよ! ……っし勝利! じゃぁ俺の勝ちですが権利は決めてなかったですよね。


 俺は勝者の権利として格ゲー姉さんにまた対戦しに来てくれる事を主張します、勿論態々来て貰う訳ですし吸精はいつもより多めにっってワプ、ちょ格ゲー姉さん? 


 急に抱き着かないで下さい、今までモバタンの画面を見ていたはずなのに今はお胸様しか見えないんですけど! 抱き着いたまま体を揺らさないで、嬉しいのは判りましたからー! さっきまでワイワイネット対戦の応援してた人達の声が聞こえなくなってるのも怖いからー、ほら離れて、ね? ふぅ……。


 ネット対戦を応援してるはずの人達を見てみると、ポン子とリルルは対戦中で、他の方達はこちらを見ていた。


「うーん普通なら脳エロとして排除する所なんだけど……僕には判断が難しいなどう思う?」

「そうですね……わざと本を汚した場合退館処分を下す所ですが、相手が子供でうっかりやったなら注意で済ませるといった所でしょうか?」

「お兄ちゃん感触はどうでしたか?」


「はい! すごく柔らかかったです!」


 しまった、笑顔の問いかけについ真面目に答えてしまった!


 姫乃は、やっぱり胸か……私の成長期はいつ来るのか、と嘆いている。


 大丈夫だ姫、人間の成長期は遅いと二十歳過ぎてもあるらしいぞ、と慰めたら強制的に姫乃と対戦を十回連続で組まされてしまった、いやいや姫乃よそれは駄目だ他の人もやりたがるだろ? がしかし、周りの人にどーぞどーぞと譲られた。


 ――

 ―


 ……そうか格ゲーってのは人が宙に浮いたまま落ちてこないゲームだったんだな。


 そんなこんなで皆で楽しんでたら、荷物を両手に持ったポニテ姉さんが到着した、いらっしゃいポニテ姉さん、こいつは俺の妹のような存在で姫乃ですよろしくしてやって下さいね。


 壁を背に真ん中が俺で左右に姫乃と格ゲー姉さん、対面にポニテ姉さんと左右に図書委員さんと僕姉さん、台所側にクィーン姉さん、ポン子とリルルはテーブルの上。


「では異世界焼肉を始めたいと思いまーす、飲み物は持ちましたね? かんぱーい」


 ちなみにお酒は無しだ、俺も姫乃もまだ飲める年じゃないしな。


「異世界? どういう意味なのかなご主人ちゃん?」


 ポニテ姉さんがそう聞いてきたので、大志兄貴の事を教えておく、たぶん依頼者が例の中年ハゲであろう事も加えて、天使側にはポン子がすでに報告している。


「私も色んな物を食べてきたけど異世界産のお肉は初めてね……大丈夫なのよね?」


 リルルに鑑定してもらいましたが毒や危険そうな成分は無いらしいです、さすがに肉を改造とかは言い出さなかった。


 まず大志兄貴がくれた肉を人数分焼いて一斉に食べる事にする、とりあえずアーンも無しで。


 では頂きます、うわ、やっべなにこれ美味しいな、前に食べた高級弁当は確か魔力の宿った食材も使用してるって話だったが……この肉は次元が違うな。


 周りの人を見てみるが妙に静かだ。


「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」


 全員無言で肉を咀嚼している、そこにポニテ姉さんが語り出す。


「私ね、昔氏族長のお供として高位悪魔貴族のパーティに参加した事があるの、この肉はそこで食べたドラゴンの肉に匹敵するんだけど……ご主人ちゃんこれ何の肉なの?」


 そんな事を聞いてきたが。


「特に何も書いてなかったですね、ただ肉を送るとだけで、こんだけ美味しいとあっという間に無くなりそうですよね~」


 そう俺が笑いながら言うと、周りに居た全員の目が光ったような気がした、そこにクィーン姉さんが口を出す。


「ちょっと待った! せっかくのパーティが台無しになったら私泣くわよ、このお肉は後何枚あるかを数えて公平に個人個人に分配します! これは料理を担当した私の決定ですくつがえりません!」


 争奪戦になったらテーブルの上とか酷い事に成りそうだしな、英断かもしれん。


「体の小さい妖精だからと量を減らされないなら私は賛成します」

「そ、そうだね、勿論僕も賛成するよ?」

「貸出は予約を入れるのもの有りですね、私も賛成します」

「美味しすぎてびっくりしたよね、ついリアルで必殺技を出しそうになったよ~」

「魔力を帯びた食品は何度も食べてますが……お兄ちゃんの兄貴……大兄貴はすごい人なのかもしれないですね」


 そこに苦笑しながらポニテ姉さんがつけ加える。


「私はドラゴンとかも食べた事あるし、少な目でいいわよ、割り切れる数になるか判らないでしょうしね~」


 大人な事を言った、その言動にみんなから拍手が起きた、俺もしておく、そして他には誰も私も少なくていいとか言い出す者は居なかった。


 リルルは、高位魔物の肉なら調査するべきか食べるか迷います、とうんうん唸っている、ぶれないなぁこの子は……。


 無事に分配も終わり、皆そそくさと自分の分の謎肉を食べ終えてからは和気あいあいとした焼肉会になった、勿論サキュバスの文化を大事にしながら。


 姫乃もアーンをしてきたが昔を懐かしんでいるのだろう、甘えっ子めが。


 ポン子が俺に焼き依頼をしてくる。


「イチローもっとお肉を一杯並べて焼いて下さい、今こそ私の腹の見せどころです」


 腕じゃないんだな、まぁ片方のプレートを埋め尽くす勢いで肉を並べてやる。


 ポニテ姉さんが持ってきてくれた肉も美味いなぁ、焼肉弁当じゃない、ちゃんとした焼肉なんていつ以来だろうな……施設の飯は予算が厳しいらしいからなぁ……施設長が自腹で食べさせてくれた……五年以上前になるか、いつでも焼肉が食べられるくらいの探索者になりてーな。


 クィーン姉さんの作った料理も美味しい、野菜を一杯使ったサラダに、もやしやキュウリのナムル、春雨やワカメの入ったさっぱりスープ、ご飯はオニギリを各種用意してくれている、タレの味を変える為のダイコンおろし、口の中をサッパリさせる酢の物、枝豆や焼きそばなんかも用意されてる、いつも美味しいご飯をありがとうクィーン姉さん。


「しかしさっきの肉は美味かったな、異世界に行ってすぐあんな肉送ってくるとかさすが上級探索者」


「いくらなんでも早すぎな気もしますが、美味しかったから良しですイチロー」


 俺とポン子が大志兄貴について会話しながら食べているとポニテ姉さんも会話に参加してきた。


「異世界と物資のやり取りをするとかご主人ちゃんも大概おかしいからね? 異世界転移は昔からあったようだけども、行ったり来たり出来る存在なんてほとんど聞いた事ないわね」


 まったく無いとは言わないんだな。


 ほどなくメインは食べ終わりデザートの時間になった、俺やポン子や姫乃にはバニラアイスが。


 サキュバスの人達は俺の精力を、って俺はデザートらしい……俺の手に軽くキスをしていく彼女ら、その行為を驚愕の目で見る姫乃、うんリルルと一緒に一生懸命説明をした、かろうじて姫乃が納得してくれた頃には俺のバニラアイスは液体になっていた、美味しいバニラジュースでした。


 そしてポニテ姉さんが明日も仕事だと帰るのを境に皆帰っていく。


 料理のお礼をクィーン姉さんに言うと、また作りに来るわよーと恒例の投げキッス、姫乃がバレーの様なブロックをしていた。


 僕姉さんからの撮影は無いの? という質問は華麗にスルー……は出来ず、今度、また今度にしましょう、ね? 納得して帰ってくれた。


 図書委員さんも今日は閉館の時間らしい、帰る前俺にカードを渡してきた、私の貸し出しカードよ、とウインクして帰って行った、それは契約魔法陣めいしに似てるが魔法陣が無く画像や映像だけが入っているカードで、中身のデータを契約魔法陣めいしに移す事も出来るらしい、いや確かに撮影の時にそんな感じの事言ったけどさぁ……。


 カードの中をちらっと確認すると何やら色々な本を持った図書委員さんのセクシーグラビアアイドルっぽい画像がいくつも入ってる、まったくしょうがないなぁ……よし大事に仕舞っておこう。


 姫乃が何を貰ったのか見に来るが今度は俺がブロックをする番だ、ブロックブローック! こういうのは十八に成ってからだ、お前にはまだ早い、え? 俺はほら、もうすぐ十八だから。


 必死に俺のカードに手を伸ばす姫乃を躱しながら、格ゲー姉さんともお別れする、また遊びにきて下さいね、そうですね俺と貴方はライバルだ! 次も負けませんからね、と手を振る。


 挨拶に気を取られたら姫乃にカードを奪われて中を見られてしまった、素早く取り返す。


「む~確かにちょっとエロティックでセクシーだけどそれくらいなら普通に雑誌とかに乗ってるんじゃないかな? せいぜい十五禁くらいじゃない? まぁなんでそれをお兄ちゃんに渡してくるのかという問題はあるけれど……」


「それがサキュバスの文化だからだ!」


 と答えてみたらリルルに確認しにいきやがった、お兄ちゃんの言葉は信用ならんのかね、しかしリルルは肯定したので最終的には納得してくれた、営業も文化だしな。


 しかし姫乃は気づかなかったようだ、図書委員が持ってる本が全て十八禁の官能小説だった事に……ネタが細かいよ! 今度遊びにきたら突っ込みを入れつつ貸出カードの交換を随時していこうと思う。

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