第76話 姫乃に説明
食事も終わり、姫乃のお義母さんらしき人とモバタンで会話をし連絡先も教えてもらった。
間違いが起きたら絶対に責任を取らせるからね、と釘を刺された、姫乃の養子先は良い家のようだな、安心してください妹に手を出す兄は居ません、と元気よく答えておいた。
姫乃に電話を替わってくれと言われたので替わったが、姫乃は、私頑張るから!、とか答えていたな、何を頑張るんだろう? 学校の勉強とか?
まぁそれも終わり、俺の身に起きた事を説明した。
――
神となり、封印が自然と解けるまで人として生きていける事。
後遺症なのか記憶が薄れていて中学くらいからの記憶が薄っぺらくなっている事。
ただし中学の記憶は関係する人間に会う事で甦る事。
悪魔と戦い結果的に新しいスキルを手に入れた事。
ポン子とリルルは妖精では無い事。
個人事業として揉み屋もやっている事
お客が天使とサキュバスな事
そして中三の夏頃に暗示を受けたっぽい事
――
色々と説明をしていく、暗示のあたりから顔を下げていた姫乃がこちらを見る、ずいぶん真剣な顔だ、さすがに内容が内容だしな、信じてくれない可能性すらある。
「ごめんなさいお兄ちゃん! 私も、わたしも……お兄ちゃんが中学三年生の夏、養子に行く事が決まり最後のお別れの時に……私の先天性スキル〈示唆〉をかけました、ごめんなさいお兄ちゃん」
急にそんな事を言い始めた、〈示唆〉? 姫乃に先天スキルがあるのは知っていたが、二つあったのか。
「言葉の感じからそそのかす感じか? 姫は俺にどんな事をしたんだ?」
リルルやポン子は黙ってスラ蔵さんとスラ衛門さんに座りながら聞いている、そういや大次郎をクッションとして出すの忘れてたな。
「〈示唆〉を使い〈探索者として自分の安全を最優先にする、そして無茶はしない〉そういう内容をフルパワーでかけてそそのかしました、私はお兄ちゃんに暗示をかけたとかいう奴と同じ様な事を……ごめんなさい」
姫乃は泣きそうな表情でこちらの返事を待っている、俺はポン子を見ると、ポン子がコクリと頷いた、だよな、おっさんの暗示内容は詳しく教えなかったから判ってないようだが、どう考えてもその内容って……。
「ありがとう姫、お前のおかげで俺は生き延びたらしい」
そう感謝の言葉をかけてみた、姫乃はお礼の言葉を言われると思ってなかったんだろう、びっくりとした顔で俺を見つめている。
「ありがとう姫ちゃん、イチローは貴方の〈示唆〉のおかげで今ここに生きている事が出来たのだと思います」
「ありがとう姫様」
リルルはたぶん理由をよく理解して居ない、が、ジャージの時は空気の読める子のようだ、そういやちゃんと説明してなかったな……姫乃への説明を一緒に聞いて貰えば大丈夫か。
姫乃に最近受けそうになったハゲ中年おっさんからの暗示内容や、恐らく過去に受けた暗示と思われる内容によって二年間の探索者生活がどんなものだったのかを説明した。
したら……姫乃とリルルが激オコしてしまった、落ち着けおちつけー。
「ナニソレ、私がお兄ちゃんに〈示唆〉を掛けてなかったら……今頃……お兄ちゃんそこどいて! 私ちょっと用が出来マシタ」
「ご主人様にそんな事が? モバタン研究に目を向けすぎてちゃんと説明を受けなかった事を後悔しますぅ……私がそいつの心を改造しますので連れて来てクダサイ」
まてまて落ち着け二人共、姫乃も立ち上がるな、リルルはちょっと怖いよ!
姫乃を強引に座らせて、そうだポン子ぉぉ! と横を見る。
ポン子を見たら即座に大次郎さんを召喚してくれた、なんで俺が頼みたい事を言わずに判るのお前……。
姫乃を大次郎クッションに座らせる、人を駄目にするスライム座椅子型クッションだ、ついでに頭を軽い〈ナデポ〉でナデナデ、リルルも立ち上がっていたのをスラ蔵さんに戻し頭をナデナデ。
「離して下さいお兄ちゃん、私は一発殴らないと気が……きが……むぅお兄ちゃんのナデナデは昔より上手くなってる気がします、誰で練習したのか後で聞きますからね、後このクッションはいけません人を駄目にするやつです、私に下さい」
あげません。
「ご主人様の敵はこのリルルが! ……むふーん出会ったらハゲになる呪いをかけるだけで許してやるです~」
もうあのおっさんはハゲてたけどな。
二人共落ち着いたな。
「という訳で姫の〈示唆〉のおかげで俺は生き残った可能性がある訳だ、だからありがとうって事なんだよ、まぁもう掛けないで欲しいけどな」
「掛けませんよ! お兄ちゃんに死んで欲しくなかっただけなんですから、もう自由に会えるならこんな能力いりません」
「姫様には感謝ですね~、いらないなら私に改造させてくれませんか?」
リルルさんストーーップ、白衣を出すな仕舞いなさい、意味が判らなかったのか姫乃はキョトンとしている。
っと忘れてた、大志兄貴の件も話しておくか。
……話を聞いた姫乃は冷蔵庫の中を確認して戻ってきていた。
「……ひどい話だねお兄ちゃん」
「そうだな、いきなり異世界なんてな……」
「そうじゃなくてね『現代ファンタジーから異世界ファンタジーに召喚されたけど元の世界の能力があるので楽勝です』なんてタイトルだったとしたら、今時そんなタイトルの小説は女子には人気出ないの、もっとこう胸がキュンキュンしそうなラブを匂わせるタイトルにしないと、それか悪役令嬢か聖女を飛ばした方がいいと思うの」
そうか? 俺はそういった俺ツエー作品大好きだけどな、って大志兄貴は小説でなくリアルの出来事なんだが……。
「大志兄貴が異世界で悪役令嬢や聖女と
「それはそれで有りですお兄ちゃん! ならタイトルは『現代ファンタジーから異世界ファンタジーに召喚されたけど元の世界の能力があるせいか転生悪役令嬢や転生聖女に迫られて大変です』にしましょう」
転生要素多くね?
「さて冗談はさておき、お兄ちゃん、いくつか確認したい事があるんだけども」
大志兄貴の事を冗談で片付けないでくれ。
色々あったし説明は簡単にしたから細かい部分を知りたいだろうな、いいぞ聞いてくれ。
「何が聞きたいんだ姫?」
「神の寿命が無いというなら私も神になれば一生お兄ちゃんの側に居られるんだよね? 神になる方法を教えてくれる?」
おうふ……最初の質問が神への成り方だった……これが昔なら、うちの妹まで中二病になったかと思う所なんだが……。
ポン子が姫乃の肩までフワフワと飛び乗り耳に顔を近づけて内緒話をしている、姫乃はウンウンと頷いて。
「うん、解決したからさっきの質問は取り消すねお兄ちゃん、いつか私と結魂しようね?」
「また結婚の話か、お前は小さい頃からそれだなぁ……いくら血が繋がって無いといっても、ずっと妹と思ってた相手を嫁にするのはちょっと難しいんだが」
「お兄ちゃんは私の家族だよ、嫁と夫も家族だし、似たような物だって気にしない気にしなーい」
「いや気にするだろ、第一お前が施設に来てすぐだったか、俺に懐いてコアラみたいに掴まって離れなくて、お兄ちゃんと同じ苗字になるんだー家族になるんだーってワンワン泣いて施設長困らせただろうに、困った施設長がどうせ苗字も一文字同じだからってんで書類上は別として施設の中では山田で通す事になったんだよな、俺はそれ以来お前の事を本当の妹のように思ってきたんだ」
「そんな事もありましたね、とっとと苗字を変えてくれればよかったのに……」
「俺の嫁になるとかの発言も小さい子にはよくある事だと、施設員のお姉さんとかが言ってたから気にしなかったんだが……、この年でまだ言うって事は本気なのか?」
「施設に来た頃から本気でしたよ、苗字が一緒にってのも結婚したら同じになるじゃないですか」
ええ……? そういう意味で変えさせたのか……? 数歳の幼子が? いやいやそんな訳……。
「そうかぁ……うーん」
「お兄ちゃんは私に好かれると嫌ですか?」
姫乃が泣きそうに……いやちょっと泣いてる。
「いやうん……あー……そうだなぁ……姫乃の事を一人の女性として見れるかどうか考えてみるよ、
「妹は変わりませんよ、私はお兄ちゃんの妹でもあり嫁に成りたいのですから、只の嫁より倍の愛情を約束します、お買い得です!」
「ええ……そーいう事じゃないと俺は思うんだがなぁ……」
「まぁ今はライバルも居ないみたいですし、じっくり女性としての魅力で攻めますからご安心を、中三の夏に暗示ですか……桜子先輩や他の人達にはお気の毒ですが、あのままなら私が会えない間にゴールを狙っていたでしょうし……恨みっこ無しです」
後半は声が小さくよく聞こえなかった。
「急がないでくれるなら有難いけどな、姫の誕生日もまだ先だしな、んで中三の夏に暗示食らった事で何かあるのか?」
「いいえ! まったく! これっぽっちも問題ありません! ふふふ、味方キーパーからゴールキックを相手のゴール前フリーで貰った気分です……って揉み屋の件を忘れてました! サキュバスってどういう事ですか!?」
それディフェンス居なかったんならオフサイドじゃね?
手に入れたスキルと技が揉みに適していた事と、リルルからサキュバスに縁が出来た事、護衛をして貰ったりもして、リルルがいるので営業も禁止されてるっぽい事等を離した。
「いくらスキルが適していたからって!〈夢見がち〉? ぶふっそんなハレンチな〈ナデポ〉? フフッ種族のサキュバスを〈マラカス〉? プッお客にするなんて〈救世〉どうかと思う、あれ普通? んだけど!」
「笑うのか攻めるのかどっちかにしなさい姫乃、後〈救世〉さんの事を普通と言うのはやめてさしあげろ、再生も付与出来るから回復魔法代わりに使えるんだぞ」
あははははと思いっきり笑い出した姫乃、テーブルに伏して笑いを止めようとして失敗をして吹き出し体を痙攣させている、そういや笑いってのは拷問にも使えるって映画か何かで見たきがするなぁ……どっちかにしろとは言ったがちょっと笑い過ぎじゃね?
「姫に〈救世〉!」
取り合えず姫乃に〈救世〉をかけて笑い疲れているだろう体を回復してやる。
光の粒が姫乃に吸収されて各種付与がかかったはずだ。
「わー〈救世〉さんすごいね、息をするのも辛かったんだけど、それに身体能力も上がってる気がする」
そうだよ〈救世〉さんはすごいんだ、ただ、揉みに使えないし、最近戦闘も無いから影が薄いだけなんだ。
起き上がった姫乃はリルルの方を向き。
「リル助はお兄ちゃんに営業とやらをかける気なのかな? かな?」
姫乃はリルルに優しい顔で圧力をかけるという高等テクを見せている。
「えっとえっと姫様、私はそのじゅ、十年後くらいにやろうかなってその……恥ずかしいので……」
「よし! それならおっけいよリル助、私が嫁になった後ならいくらでも来なさい、どうせお兄ちゃんは嫁を一杯迎えるだろうし、私が上位に入ってればおっけー」
迎えないよ? 今でも恋人とか居ないからね? 妹とリルルには好かれてるらしいが、サキュバス達は捕食者っぽいし、愛か好意か判らん子が十年後と……後は……妹はやっぱり妹なんだよなぁ……まぁいいや先の事は先の俺にまかせるか……。
「……あれ? 女性として見るならお泊りも駄目じゃね?」
俺がそんな事に気づいて姫乃を見るも、姫乃は凄い勢いで横を向いてポン子と雑談を始めた……ちょっと? ……姫乃さん?
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