第73話【閑話】サキュバスの集い2
そこは地獄、サキュバスの一氏族が治めている土地だ。
大きなお屋敷の広間にサキュバス達が集っていた。
たくさんのサキュバスが列を為し並んでいる、皆真剣な表情で先頭を見ている、列の先頭にはテーブルの上に大きな箱が置いてあり手がギリギリ入るかどうかの穴が上部に空いている。
一番前に並んでいたサキュバスが神妙に唱える。
『神様仏様ルシファー様、どうかこの私に当たりを引き寄せる力を与えたまえ~』
『地獄に居るサキュバスが祈る相手がそれでいいのか』『当たるならなんでもいいんじゃないの?』『確かにそうだわね』『外れろ~外れろ~』『まだそんなに当たりは出てない、残りがあるはず』『早く引くか後で引くか悩ましいわよねぇ』
先頭のサキュバスが箱から一枚の結ばれた紙を取り出し、横に居た進行役と思われるサキュバスに渡す。
進行役は紙を解き中を確認する。
『はい真っ白、外れ~、貴方の今後益々のご活躍をお祈り申し上げま~す』
『『『就活かよ!』』』『よしまだまだいける、私の番はよこーい』
列に並んでいる者達は真剣な顔のわりにノリが良く皆仲良しだ。
『次の方どうぞ~』
『はい、地獄××氏族所属の〇〇です、私は営業部に所属しており、毎日営業に励んでおります、最近では流行を取り入れ、男の子の人気アニメでランキングの高いコスプレを取り入れる等、自分本位で無く相手の需要を掘り出す事にも力を入れております、また仕事以外でも〈ヨガ同好会〉にも所属をしどんな事でも受け入れる事の出来る精神と体を鍛えております、そしてここでは副会長をしています、本日は貴重な時間を頂き有難うございます、どうぞよろしくお願いいたします。』
『『『だから就活かよ!』』』『ヨガもいいわねぇ』『うちの体操同好会もお勧めだよ!』
サキュバスは皆ノリが良く仲良しだ。
進行役が声をかける。
『早く引いてくださーい、失格にしますよ~』
『あ、はいすいません、これでお願いします』
進行役が紙を解く、そして
ガランガラーン大きなベルの音が部屋の中に鳴り響く、クジを引いた先頭の就活生は大喜びで、後に並ぶサキュバスは落胆している。
『おめでとうございまーす、二番、二番が当たりました~』
そう言って進行役のサキュバスは自分の後ろにあった番号のかかれた板の二番の位置に名前を書いていく。
その板の一番上には〈昇天屋予約優先権〉と書かれ、番号が三十まで書いてあった。
クジが当たったらしきサキュバスは離れて行き小集団に合流する、そこに居る者達はみんな笑顔で楽しそうに語り合っている、当たりの集団のようだ。
そして外れた者は別の場所に集まっている、そこは何人かのサキュバスを囲むような配置だ。
その囲まれた中心には、レースクィーンのコスプレや図書委員など各種コスプレをしたサキュバスやショートカットの元気の良さそうなサキュバス、他にも数人が質問攻めにあっていた。
『で、で、その味は本当に美味しかったの?』『帰ってきた時気絶してる子が居たけど……』『あ、私、吸い過ぎ禁止令が出されたって聞いた!』『それほんと?』
『落ち着いて皆、確かに味はやばかったわよ? あれは毒ね、サキュバスを墜とす毒ともいえるわ、ちょこっと吸うくらいで丁度良いと思うわ、禁止令は本当でクジが当たったら説明があると思うわよ、私の料理もあれくらいの味を出したいわねぇ』
『ごくりっ……』『そんな毒なら私も欲しい』『だよねー、それにしてもクジの倍率やばすぎだって……』『揉みのお客をもっと取る事は無理なの?』『本業にしちゃえばいいのにね』『それいいね! お金なら地上で頑張って稼ぐから聞いてみてよー』
『ダメダメ、彼の意思を尊重してあげないと、僕たちはお客としてそれを受け入れるだけだよ、順番はまぁ……気長に待つしかないかなぁ』
『押し付けはよくないわよねぇ』『むー私の地上のキャバ嬢の稼ぎ全部渡してもいいのになぁ……』『貴方確か年間億以上稼いでたわよね?』『地上のお金に興味なんて無かったけど私も働かせて貰おうかなー』『新しい店舗の計画あったよね? 一緒に立候補しようか』『私メイドカフェの方に頼んでみようっと』
クジが外れたにも関わらずキャイキャイと
『でね、その揉みがすっごいの、ふわふわ~っとしていつのまにか寝ちゃってて、惜しい事したわ、この眼鏡にかけて次は起きててやるんだから!』
『おー快楽に強いサキュバスが寝てしまうって……』『その子美味しいだけじゃなくマッサージのテクもあるのね』『なんで私はさっきあのクジを引いてしまったのだ……もう少しかき混ぜたら当たっていたかもしれないのに』『それは運だから仕方ないよ』
『最後に撮影会をやってね、えへへ、浜辺のビーナスって言われちゃった、次はもっとすごい水着で行くわ! ヒモとか!』
『それはたぶん脳エロで禁止されると思うの』『同感』『むしろ肌を隠す方がいいのでは?』『隠すって事はワンピース型の……』
『『『つまりスクール水着!?』』』
『いやいやスクールは童顔タイプじゃないと似合わないでしょ』『でもなんで揉み屋なのに撮影会?』『はて? 揉み師でありカメコでもあるのかな?』
『どっちでもいいじゃない、印象に残るチャンともいえるよね』『後々クジが当たってもコスが全部二番煎じになりそうだね……』『それはあるね……いや全員同じ系統の服でアイドルユニット撮影とかどうかしら?』『天才現る、それだ!』
『やっぱり男の子だったよ対戦ゲーム好きそうだった、でも下手っぴなんだって顔を少し赤くして言ってた、可愛いよね、私も下手だって言ったら今度一緒に対戦しましょうって約束したからお客じゃなく普通に押しかける予定なんだー』
『それは良い事を聞いた』『後々一緒に遊ぶ約束の出来る可能性のあるコスプレ……』『RPGは駄目だよね』『ボードゲームのコス? 意味判らないわね』
『レースゲー……もう先にやられてるね』『テニスウエアとか?』
『スポーツ系はワンチャンありそう』『協力プレイ必須なのも良いと思うのよ』
『あーあれでしょ、ここクリア出来ないの手伝って~って奴』『そうそう』
『あ……あざと過ぎない?』『男の子相手ならいけるいける、女子相手は駄目ね』『あー男子はクリアしたいんだーとか本気で思ってそうよね』『協力して狩りをするゲームはどうだろ? ゲームで敵から素材をはぎ取り、リアルで彼の服をはぎ取るの、キャー』『『『脳エロアウト!』』』
『うん、私は余りの美味しさに天国へ飛び立ったの、フライトアテンダントなだけにね、なんちゃって、そして未だにリソースに変換せずに留めて少しづつ味わっているのよ…‥‥』
『『『『『『『『『え?』』』』』』』』』
色々な場所でキャイキャイと騒いで居たサキュバス達だが、全員が押し黙り一人のサキュバスに注目をする。
見られているサキュバスは自分の失言に、あっ、と気づき。
『こ、これは私のだから! あげるのは無理よ? 無理やりとかルール違反だからね!?』
『うんそうね、無理やりなんてしないしない』
『『ただ貴方がウンと言うまで』』
『『『私達は説得するのをやめないだけよ~』』』
『『『うふふふ~』』』
『全部よこせなんて言わないわ、ほんのちょっとちょびっと匂いだけでもいいから』『ね? 判ってくれるよね?』『大丈夫私がもしクジに当たったら貴方にもお
一人のサキュバスは全方位を囲まれて少しづつ近づく同胞に怯えている。
『それ絶対にお裾分けしないやつでしょー--!』
少し離れた場所に、それまで囲まれていたサキュバス達が居る。
『あちゃー、あれは止められないよね、僕は全部変換シチャッタアトダカラナー』
『分けてアゲラレナイのがザンネンネ、代わりに料理でもしてあげるかなー』
『ですねぇ、貸出は本くらいしかデキナイワー』
『不器用というか正直過ぎですよね、パレオを
『え? え? 何の話? ……うーん今度対戦ゲームしに遊びに行った時にお裾分け用に少し多めに吸わせて貰おうかしら?』
『『『『あなたほんとに、良い子だねぇ』』』』
格闘ゲームコスをしているサキュバスは首を横にコテンと倒し意味が判らないという表情をしている。
遠くで大勢に囲まれたサキュバスは陥落寸前のようだ。
それまで囲まれていた者達の話は続き。
『そういえばレジェンドの周りには誰も集まらなかったわね……』
『新世界らしいしね……僕もちょっと怖いし』
『あー大丈夫、部隊長に特級の変態リストを渡すように進言しておいたから』
『それで元に戻ってくれたらいいのだけれど……、あれ? 変な子が変になったら普通になるのかしら?』
『レジェンドさんは普通ですよ? 新世界を見つけたとか楽しそうでしたし』
『『『『あなたほんとに、良い子ねぇ……』』』』
広間での、クジ引きや、交渉や、雑談はまだまだ続く。
サキュバスの
◇◇◇
三章おまけはこれで終わりです、お読み頂きありがとうございます。
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