第58話 揉み屋二日目
「クィーン姉さん! 俺のタイムはそんなに早くないはずですよ!」
がばっと上半身を起こす、俺の部屋だ、夢か……レース会場のレースクィーンが全員同じ顔な時点で気づけって話だな。
横を見るとリルルが寝ている、どうも吸精すると寝てしまうらしい?
まぁよし今日もいい天気だ、シャワー浴びてくるかぁ。
――
朝飯はやっぱり食パン、うーむ自炊もするべきなのだろうか、調理器具は揃えたんだが、考えてみたら俺って施設でも、みんなのオヤツ用のボウルプリンとか、ボウルゼリーとか、ホットケーキとかお菓子系くらいしか作った事ねーんだよなぁ。
十時まで昨日の画像の整理とか、匠揉み職人の動画をチェックする、リルルさんが画像の背景合成や調整をすぐさま覚えたのがすごかった。
出来が良い画像はポニテ姉さんの連絡先に送っておいてっと。
相も変わらず壁のディスプレイに飛ばした揉み動画で勉強をする、この揉み動画の匠さんは本当に素晴らしい人だな、揉み技の秘儀を丁寧に解説してくれている、冗談で言ってる自身が仙人だとか気力がどうのって所は笑いを判ってないとは思うが。
それでもこれが無料で見れるっていいのだろうか……この匠さん投げ銭設定してないのよな……うーんすっごく投げたい。
脳内でイメージした相手にエアマッサージトレーニングで時間を潰す。
テーブルの上でリルルがモバタンを使って何かしている……白衣と眼鏡してるけど、大丈夫だよね? アニメとか見てるだけだよね? リルルさん?
ポン子が一緒に居るから大丈夫だとは思うけども……。
――
十時になった丁度くらいにチャイムが鳴った。
『ピンポーン』
そして俺が出る前に鍵が開いて人が入ってくる、インターフォンさんが泣きそうだ。
「お邪魔するわねー」
あれ? クィーン姉さんと後ろにサキュバスらしき二人か、午前は新規のサキュバス二人に天使が一人だったはずなんだが。
「いらっしゃいクィーン姉さん、今日は予約入ってなかったですよね?」
「ええ、今日は新規のこの二人の案内と、ごえ……ご飯でも作ってあげようと思って来たのよ」
まじか、手作りご飯とは有り難い話だ、昼休憩が一時間の設定だから朝買っておくか昼に走って買いにいくか迷ってたんだよなぁ、今日は走って時間を計ってみる予定だったんだが。
昨日のクッキーも美味しかったし楽しみだな。
「それはすごく有り難いです、あーでもポン子は人間の二人前以上は食べちゃうのですが材料とか大丈夫でしょうか?」
よく食べる子はよく育つんですよ、とかポン子が言っている、お前は一部育ってないけどな。
「気のせいかな? イチローに侮辱された気がする」
気のせいだってば。
「ちゃんと妖精天使さんの事は聞いているから大丈夫よ、台所借りるわね」
そう言ってクィーン姉さんは、自分の空間庫から材料やら、うちに足りない調理器具やらを出している。
まぁ俺はご新規のお客さんの対応だ。
眼鏡をかけた三つ編みの大人しそうな学校の制服? ぽいサキュバスさんと、普通のお姉さんといった感じのサキュバスさんだった。
そこにポン子がモバタンの画面を見せに来てくれる、リルルは白衣と眼鏡を仕舞い、飛んでお姉さん達に挨拶しにいってる。
モバタンを見てなるほど、と、普通のお姉さんっぽいけど日常系アニメのコスなのね……確かにすげークオリティだった。
サキュバスさんは例のごとく挨拶をしつつ
「これ私の
サキュバスに図書委員は無いようだ、そして五枚目ゲット、嬉しい。
――
「掃除洗濯料理お風呂に添い寝、何か困った事があったらいつでもお姉ちゃんを呼んでね?
男主人公の家事を色んな人が手伝ってくれる系のアニメらしい、六枚目ゲット、新規カードゲットはいつでも嬉しい、コンプまで後何枚だろうか……。
台所から良い匂いがしてくるが、そういや台所の換気扇を回すのなんて二年間で初めてかもしれない。
「では揉みを始めさせて頂きますね、こちらにどうぞ」
――
一人目のサキュバスさんの揉みの途中に、新規の天使さんが来ていたようだった、集中すると周りの音が聞こえなくなるからなぁ、まぁポン子が対応してくれるからいいんだが。
その天使さんは〈癒し好き同好会〉のメンバーらしい、リルルの事があったサキュバスさん達は判るんだが、この天使さん〈ナデポ〉が普通に発動するんだよな……。
え? 金髪天使さんから色々聞いてリスペクトしてます? どんな風に説明したんだろ金髪天使さん……。
サキュバス二人も天使さんも揉みが終わった後に少し寝てしまった。
――
そして起きた天使さんは帰る前に俺と握手をし、これが神に至るかもしれない職人の手……、とかなんとか感動しながら帰って行き。
サキュバスさん二人は十二時ぎりぎりまで撮影会をする事に……。
――
「なぁ図書委員、俺にお前の貸し出しカードを作ってくれよ、はい! その驚いた表情頂き! 誰もいない図書室で眼鏡を外し自分の三つ編みを解いて遊んでいるシーンでいこう、おーけい髪を解いたそのセクシーな貴方を知ってるのは俺だけだ! 目元が本当にエロティックだ俺はそれを隠す眼鏡が憎い! なら今それを撮りまくるしか!」
パシャパシャと遠慮なく何枚も撮っていく俺。
「ありがとうございましたー」
うむ、なぜかモバタンを被写体に構えると性格が変わってしまう。
――
「はいそのポーズ最高! もう! 日常に潜む小悪魔お姉さんめ! アニメの主人公が惚れたら日常系物語がラブでコメになっちゃうでしょー! どうしてくれるこのキュートなベイビーは……そうか! 主人公じゃなく俺が惚れてるからいいんだね! おっとその目線さいっこー」
パシャパシャと遠慮なく何枚も撮っていく俺。
「ありがとうございましたー」
うん、クィーン姉さんとリルルはまた今度ね、今日はまだ午後もあるから、ね? いやほんと! 着替えなくていいから!
サキュバスの二人は最後に俺の精力を二人同時に吸って片方が気絶をし、残った方が魔道具を使い転移魔法で飛んでいった。
消費型の転移魔法道具があるらしい、便利だね。
お昼になったので部屋を一旦片付けてみんなでご飯を食べる、クィーン姉さんが空間庫から料理を出してテーブルに並べる、空間庫って時間を止める事は無理だが遅延させる事は出来るそうだ、まだ湯気が出てて出来立てっぽいままだ。
「はい、一杯食べてね、お代わりもたくさん用意してあるからね」
そうニコニコした笑顔で言ってくるクィーン姉さん、レースクィーンの恰好にデフォルメされた
「美味しそうですね、ありがとうクィーン姉さん、一緒に食べましょう」
「すごく美味しそうで量も完璧です、挑みがいがあります」
「姉様の料理久しぶりで楽しみですー」
俺とポンコとリルルが一斉に言葉を放つとクィーン姉さんが照れた感じで返してくる。
「も、もう! こんなの普通のご飯なんだから、ほら! 冷める前に食べちゃいなさい」
そう言ってご飯とお味噌汁をよそってくれながら、料理の説明をしてくれる。
豆腐とワカメとネギのお味噌汁、ホカホカツヤツヤのご飯、出汁巻き卵、豚バラとモヤシのコショウ炒め、焼いた塩鮭は皮がパリっとしてて魚の油が艶々と光っているし美味そうだ、キュウリやキャベツの浅漬け、きんぴらごぼう、焼き海苔、出汁に浸かった揚げ出し豆腐には大根おろしとそこに万能ねぎがパラっとかかっている。
あれ? 今お昼だよね、とかそんな突っ込みを入れる奴が居たら俺が引っぱたく。
確かに少し朝食っぽいなと俺も思ったが、こんなに美味そうなら何の問題もないだろう?
「頂きます、ムシャムシャガツガツモグモグ、ご飯のお代わりください、リルルあーん」
食べさせ合うのは出汁巻き卵でやる事にした。
「もぐもぐもぐもぐお代わり特盛で、モグモグモグモグモグお代わり特盛で、もぐもぐもぐ……」
ポン子はひたすら食べている、しかも例の高等技術であるらしい吸い込む食べ方をしていない、作ってくれた人の前だからだろうか、一瞬で吸い込まれて消えるしなあれ……。
「アーン、モグモグモグやばい鮭の皮が最高に美味い、もぐもぐもぐ、あ、クィーン姉さんもあーん」
クィーン姉さんは、何故かサキュバス文化なのに恥ずかしがるんだよなぁ……。
「美味しいです姉様」
「そう? ありがとう末妹ちゃん、ご主人ちゃんも妖精天使さんも一杯食べてね……え? あ、あーんパクッ、う、うん我ながら美味しくできたわね」
「お味噌汁お代わりくださいクィーン姉さん、豚バラと適度な歯ごたえの残ったモヤシが最高に美味い、味付けなんてシンプルでええんや……」
「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ、ご飯特盛お代わり、この揚げ出し豆腐はお店で出せる美味しさです、もぐもぐもぐもぐ、お味噌汁お代わり」
リルルとクィーン姉さんは食べ終わってるが俺とポン子は食べまくった。
――
食後のお茶を飲みながら雑談タイムだ、ちなみに使い終わった食器類は俺がちゃんと洗ったぞ、作って貰っておきながら片付けまでまかせたら、妹や施設の女の子達に怒られてしまう。
たしか……〈家事を勝手にやってくれる妖精さんは何処にも居ないんだよ?〉だったっけか、確かにそうだと思ったもんだ、でも他の男の子達には一切そういった忠告はされてなかったような……ふむ、お兄ちゃんだからしっかりしろって事かね?
まぁでもダンジョンでカードテイム出来る中に家事妖精って呼ばれてるのが居たような気がするんだよな……今度モバタンで調べてみるかね。
「やー美味しかったですクィーン姉さん、ちょっと食べすぎちゃいましたハハ」
「男の子なんて一杯食べるくらいでいいのよ、美味しいって言ってくれるのが一番嬉しいわ」
ポン子がお腹をさすりながら満足そうに言う。
「美味しいご飯を作れる人は尊敬します、レースクィーンで料理上手、最高ですね」
レースクィーンは料理に関係ないだろ?
「姉様はお料理上手いです、私にもそういう事を教えてくれたらよかったのに……」
リルルさんは褒めてるようで過去をほじくってる、せっかく仲直りしたんだからやめてさしあげて?
「リルルもこれから教わればいいんじゃね? ね? クィーン姉さん」
「え、ええ、生活魔法を上手く使えば調理も出来るでしょうし、ご主人様が好きそうな料理を教えてあげるわよ?」
「それすごく良いです、お願いします姉様!」
ふぅ……まだ少し過去を引きずっているんだよなぁリルルは、ま、これからもフォローしていくか。
私が好きそうな物はどうでしょう、とポン子が主張し、リルルは笑いながら勿論それもです! と答えていた。
そうしてお茶を飲みながら雑談等をし一時まで過ごす。
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