第54話 初日の結果

 金髪天使さんがぐっすりと寝てしまっているので、しょうがなく俺の布団をロフトから下ろし部屋の隅に配置、そこに金髪天使さんを移した。


「ふぅ、じゃ次はポニテ姉さんいきましょうか? あれ? どうしたんですかみなさん」


 ポニテ姉さんだけでなく三人娘も何か驚愕した目でこちらを見てくる、どうした?


「いや、天使があんな姿と声を……ええ? ご主人ちゃんってマッサージの素人なのよね? 妖精天使ちゃんから聞いた話だと今日がお店として初めてって……」


 ポニテ姉さんがそう聞いてきた、そりゃそうだ。


「ええ初めてですよ、練習も付け焼刃ですし、まぁ俺が持ってるスキルの相性がよかったんじゃないですか?」


〈マラカス〉が機械でやるマッサージみたいな効果だもんなぁ、そして〈ナデポ〉で効果を増す、そこにぐっすりとした眠りを迎えればそりゃぁ……あれ? 結構すごいのかこれ。


 上着を脱いだポニテ姉さんがマットレスに寝る、サキュバスだし〈ナデポ〉はさっきより強めで行くかぁ、慣れてるだろうしな。


「じゃいきますよーポニテ姉さん」


「よろしくね? ほどほどでね?」


 判ってますってば、じゃまぁ昨日は十倍&十倍でも大丈夫そうだったしそれくらいでいくかね。


 そうしてポニテ姉さんを揉み解す。


「ちょ! ご主人ちゃん? まって? 少しまって?」


 一心不乱に揉み解す! 俺はまだ素人だ集中しなきゃな。


「うひっ、昨日のより、つよ……質がなんかちがっ……」


 動画では胸の大きい人はここらの筋肉をほぐすのが良いと言ってたな、よいしょ。


「しんど……ぅとピリピリがぁ……やめ……」


 体の中心を一回りしたし次は手と足をやっていこう、揉み動画の匠いわく順番に螺旋を描くごとしだったかな?


「はにゅぅ……こりゃわぁ……やっばぃ……じっくりぃとしみこむぅぅ……」


 うむ、最初の場所に戻るとポニテ姉さんの緊張していた筋肉が全体的にほぐれているのが判る、さてもう一周螺旋のごとくっと。


「にゅぅ……も、むりぃぃ……すぅ……zzzz……」


――


 ふぃーこんなもんかなっと、時間を見ると、ありゃ少し二十分オーバーしちゃってる、時間管理も出来ないなんてまだまだだなぁ、あれポニテ姉さんも寝ちゃってるなぁ。


「はー結構疲れる、ポン子少し休憩いいかな?」


「あ……はいイチロー少し休みましょうか……」


 ハハ、ポン子の奴モミチロー先生忘れてるぞ、三人娘さん達にもお茶を勧めるが断られてしまった、何か震えてる? まだ天使が怖いのかな? ……天使と悪魔の溝は深いんだなぁ。


「お疲れ様ですご主人様、お茶うけに姉様に頂いたクッキーはいかがですか」


 リルルがそう言ってさきほどの箱を持ってきてくれた。


「そうだなえーと、クィーン姉さん手作りのクッキー有難うございます、頂きますね」


 さっき食べた時は味なんて覚えてない感じだったからな、クィーン姉さんに顔を向けてそうお礼を言った。


 リルルが一枚掴んでフラフラと俺の口の側に飛んでくる、生活魔法で浮かせば楽だろうに、毎回こうやって自身の手でやろうとする。


 パクリッと食べる、あー美味しいなこれ、これを自分で作るってすげぇなクィーン姉さん、リルルにもお返しをする、そしてポン子は一人でお手玉のように口に吸いこんでいく。


 なんとなく俺から距離を置いているような三人娘だったが、僕姉さんがそそくさと側に近づいてきた。


「美味しい? 僕もお手伝いしたんだよ?」


 クィーン姉さんを見てみると、僕姉さんの後ろまで来て頷きながら、材料の準備をお手伝いというならそうね、と言っている……。


 何かを期待してワクワクした顔で待っている、うんまぁサキュバスの文化ならそうだよね、僕姉さんに向けてクッキーを一つ。


「僕姉さんはい、あーん」


「あーんぱくっ、……はぅ何この今までにない心に湧いてくる気持ちは」


 僕姉さんが何やら悶えている、その後ろにいるクィーン姉さんにも。


「クィーン姉さんにも、はいあーんして」


「あわわ、あ、あーん、ぱくっ」


 顔を真っ赤にしているクィーン姉さん、勝気な顔の人がそんな表情するのは萌えるなぁ、って文化なんだよね? なんでそんなに恥ずかしそうなんだろ。


 寒気がしたと思ったら可憐姉さんがいつの間にか俺の背後を取っていた、そして何かを……する前に僕姉さんとクィーン姉さんに捕まり端っこに連行されていった。


 そんなこんなでクッキーを食べつくした頃に金髪天使さんとポニテ姉さんが起きてきた。


「お早う御座います二人とも、俺の揉みはどうでした? 後ポン子は例の奴やりなさい」


 そうポン子を促すと、手をポンっと叩いて忘れてたと言わんばかりに空間庫から〈ドッキリでした〉の紙を出し金髪天使さんの側に行った。


「ゴットマッサージ職人なんて実はドッキリでしたー」


「勿論知ってたわよ」


 わぉ、金髪天使さんは真顔で答えていた、ポン子はガックリとしてい……なかった、ですよねー、とか言ってる。


「気づいてたのに俺らに合わせてくれてたんですね、そうです俺は初心者の揉み屋だったんですよ申し訳ありませんでした、満足できないようでしたらお代はいりませんので……」


 金髪天使さんは近づいてきて俺の両手を彼女の両手で握りしめてきた。


「何を言うんですかモミチロー先生、確かに貴方は初心者だったのかもしれない、しかし昨日のお試しを受けて私は貴方の揉みの中に神を見たのです、日本全国で按摩を受けてきた私が言うのですから間違いありません、貴方はこのまま進めば必ず神の揉み師になれます、というかすでに昨日と比べて格段に技の練度が上がっています、この技術にお代を払わないなんて冒涜ものですよ!」


 すごい熱を込めてそう言ってきた、後ろにいるポニテ姉さんも。


「そうだよご主人ちゃん、あの技術にお金を払わない輩が居たら私がひっぱたくよ、私もリサイクル店のお仕事が空いている時は予約入れる事にしたからね、あれはやばい……思い出しただけで筋肉が反応しちゃう……はぅ……」


 ポン子はそんな会話をしてる俺らに声をかけてくる。


「じゃぁモミチロー先生はあの三人相手に仕事の続きをお願いします、私はちょっとこの二人と揉み値段のお話とかがあるので」


 そう言って二人を促し玄関のあたりまで連れて行くポン子、なんだろ? 俺の揉みの値段を初心者職人価格にするとかかな?


 まいいや、三人娘の方に向き。


「どなたからににしますか?」


 そう問いかける、三人はお互いに譲り合うという博愛精神を見せる……罰ゲームを受ける順番を譲り合っているようにも見えるのは気のせいだよな?


「じゃ、じゃぁ僕からお願いします、優しくね、ポニ子姉さんの時より優しくお願いするからね? ご主人君先生」


 ふむ、なら五倍&五倍くらいで抑えていくか。


「任せて下さい僕姉さん! 真剣に揉ませてもらいますね!」


「いやだから! 気合いれなくていいからー!」


 よし集中モードでいくぞ!


 ――


「にゃぁぁぁ……それだめにゃぁぁ……やざじぐっていっだのにぃぃ……」


 僕姉さんは猫さんになってしまった、いかんいかん集中せねば、その時。


 玄関口の方から空気の圧のような物が流れてきた気がした、これは殺気か! ぐぐっすごい圧を感じる、体が震える、横を見るとリルルが目を回してテーブルの上で気絶をしている、まじか……、なんだこれ一体何が……ポン子達の方を見ると。


 ポン子が背中に羽を出している金髪天使さんとサキュバスに変化してるポニテ姉さんを引っぱたいていた、そして俺に向けて何でもないよと手を振り、また二人と会話をしている……殺気は消えていた、がしかしまだ圧力は感じる、そう、ものすごい圧力を俺の背中に二つ感じる、振り向くとクィーン姉さんが俺の背中に抱き着いて目を瞑り震えていた、あ、はい、当てておられるのですね。


 下を見ると僕姉さんがやっぱり震えていて、うつ伏せからこちらを振り向きながら。


「うう、何今の……姉さんと天使さんすごい怒ってたよね、ケンカ? ……あのね匂いとかしないよね?」


 と聞いてきた。


「ケンカでは無いようです、それと匂いですか?」


「あ、しないならいいの何でもないから忘れて! 続きお願いします、ご主人君先生!」


 よく判らんがまぁ続きを、って未だに背中の圧力が消えない訳ですが……。


「あの、クィーン姉さん? もう大丈夫ですよ」


 そう声をかけてあげると、瞑っていた目を開け周りをキョロキョロと見渡し、さらには自分の体勢に気づくと恥ずかしそうにこう言った。


「……あててあげたのよ」


 と。


「クィーン姉さん、ご馳走様でした」


 そう答えてあげたら、さらに恥ずかしそうにし、俺の背中を軽く叩いてから離れていった。


 さて僕姉さんに揉みの続きだ……。




 ……可憐姉さんはどうしてたって? そりゃお前、ハァハァと息を乱れさせ床に転がりながら悶えているよ……、あの殺気たまりませんとか呟いてる、俺の辞書に載ってる清楚可憐の意味が書き換わりそうなのでやめて欲しい。


 見た目はすごく清楚可憐なのになぁ……、俺、後であの人にも揉みをしなきゃいけないんだぜ……。


「すみません僕姉さん、お待たせしました、待たせた分、誠心誠意、心を込めて全力で揉ませて頂きます」


「いやだから手加減をね? ご主人君先生? 聞いてる?」


 いよっし中断した分がんばるぞー。


「はなしを~きいて~……ふぅにゃあぁぁっぁぁぁぁ……」


 ――


 クィーン姉さんの揉みも終わったが寝てしまっている、仕方ないので俺の布団で寝ている僕姉さんの横にごろりと移す、僕姉さんの寝方が猫が丸まっているようでちょっと可愛い、クィーン姉さんは寝言が色っぽい感じだ。


「さてではいきますね、可憐姉さん」


「ばっちこーい!」


「……あの……うつ伏せでお願いします可憐姉さん、昇天屋は背中と手足が基本の揉み屋なので」


「私はまったく気にしません、なんならこの胸を――」

「胸がどうしたのかしら? レジェンドちゃん」


 ポニテ姉さんと金髪天使さんにポン子が帰ってきたようだ、値段の相談終わったのかな? しかし殺気を出すほどの値段っていくらだよ。


 その声を聴いた可憐姉さんはぐるっと態勢を入れ替えうつ伏せに。


「いえ胸の座りがよくないのでちょっと態勢を直していただけです、ご主人様先生よろしくお願いします、あ、お尻もいっちゃって下さい、お尻は歪みの第一歩ですから」


 俺の中の清楚可憐なお嬢様とかいうイメージをぶち壊していく可憐姉さん、そうだよな人は見た目じゃ判らんよな……。


 お尻の事は聞かなかった事にして始める、ま、やるからには本気でいく! そうだなポニテ姉さんと同じくらいでいいだろ。


 ――



 可憐姉さんは寝なかった、が何やらマットレスの上でぶつぶつ言ってる、耳を傾けると。


「私は新たな扉を見つけてしまったかもしれません、余計な物などいらなかった、ただ精神のみを揉み解す、そう、新世界、ご主人様は新世界の神だったのですね……」


 とかなんとかブツブツ言っている、うん聞かなかった事にしよう。


 すでに部屋に戻ってきていたポン子に語り掛ける


「終わったぞーポン子、値段は決まったのか?」


 ポン子は俺を呆れの目で見ていたがそれに答える。


「ああ、ええ、まぁ少しお安くしました、二人には反対もされましたが、高すぎてもイチローが委縮しちゃうだろうしね、それにあと諸々の決め事も……ね」


「あー、予約の順番とかそういうのもあったな、それで殺気だしたケンカが始まったのか? 勘弁してくださいお二人共」


 そう言って金髪天使さんとポニテ姉さんを見る。


「そうね、でも大丈夫、もうポニ子殿とは協定を結んだから、モバタンで連絡先登録もしましたし」


「そうだよご主人ちゃん、ケンカなんてしてる暇ないしね、お姉さんにおまかせだよ、あ、ご主人ちゃんの連絡先も登録させてー、まぁ私と契約してくれたらモバタンなんていらないんだけどねー」


 と流し目をしてくる。


 ポン子を見るとモバタンを出して連絡先を登録してくれていた、金髪天使さんも急いで出してきたので同じく登録した。


 しかしまぁ初日の営業はなんとかこなせたかね。


 モバタンで支払いを受けていたポン子に聞いたら、俺のスライムダンジョンのレア無し最高収入価格を少し超えていた。


 まじかぁ……。

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