第53話 公式サイト開設

 ふぅ、未だに部屋の中でワイワイ言ってる三人はポニテ姉さんが台所方面に放り投げてくれた。


 リルルはポニテ姉さんと一緒に三人の方へ行き会話を初めているようだ、向こうの声がほとんど聞こえないのは生活魔法による遮音という効果らしい、便利すぎるよな生活魔法。


 俺は金髪天使さんに向き合い告げる。


「では始めましょうか」


 金髪天使さんはポン子を肩に乗せたまま答える。


「あ、あのモミチロー先生、マネージャーからサキュバスもお客にすると聞きました、で、その……、サキュバスと契約的なその……恋愛というか……結魂というか……えっちぃ事もするんでしょうか?」


 言いよどんだ割に最後はズバッと聞いてきた。


「あーいや、リルルに優先権があるとかで営業は無しでお客としてって事らしいですよ? リルルは男性に慣れてないみたいですしそーいった事はまだまだ起きないと思いますね、俺に対する気持ちも子供が玩具を欲しがるような物かもしれませんし、ま、今はそんな感じのぬるい関係でいいと思ってます」


 リルルはそもそも異性に慣れてなかったっぽいしな、アーンも頬にキスもサキュバスの文化だろう? 人間とは少し感性も違うだろうからなぁ、それに体の大きさが違いすぎてどうにもならんだろーよ。


「そうですか少しだけ安心しました、サキュバスがいると知って少し緊張してしまいました」


 あーそうか、手加減してるとはいえ営業の敵だものなぁ配慮が足りなかったか……。


「それならサキュバスと天使で曜日を分けましょうか? どうだ? ポン子」


 そうテーブルの上のポン子に問いかけてみる。


「そうですねイチロー、確かに気になると言うの――」

「待ってください! 大丈夫です、むしろ先生とサキュバスが一日ずっと一緒の方が駄目です、天使とサキュバスは同じ日内で四人ずつにしませんか? 監視もしやすいですし! ね? 恐らく緊張の意味を取り違えたのかと思われます」


 金髪天使さんがそう言うならまぁいいか、ポン子も黙って俺に向かって頷いてきたし。


「そうですか? ちなみにどんな緊張するか聞いても?」


 俺がそう聞くと金髪天使は少し慌てて。


「いえその、先生を取られてしまいそうな、あ、なんでも、なんでも無いんです、まったく緊張してません、大丈夫です、なのでサキュバスだけの日とか作っちゃ駄目です! 天使の友達も明日から一杯来て貰いますので予約を全部埋めさせて下さい!」


 それを聞くにポン子は。


「予約は、お互い半々づつ入れる予定ですのでー全部は無理ですねぇ」


 と眼鏡を押し上げながら言った。


 丁度その時向こうの四人とリルルが話が終わったのか部屋に入ってきて端っこに座った、まぁ静かにしててくれるなら大丈夫そうだな、話を続ける。


「それならポン子、確か全部で八人だから丁度割り切れるな」


「そうですねイチロー、管理するのに早い事公式サイトを作ってしまいたいですね」


 確かになぁ……そこへ話が気になったのかリルルがテーブルへと飛んでくる。


「ご主人様~昇天屋公式サイトなら一応完成していますよ?」


 とリルルさんがおっしゃった。


「え? まじですかリルルさんや」

「冗談だよね後輩ちゃん、昨日の夜だけで?」


 いくらなんでもそんな早く……。


「いえー昨日作った公式サイトは仮でしたのでー、デザインとか使い易さに問題があったんです、今日ご主人様と別れてから姉様にモバタンを借りて公式サイトに管理者パスを使って入り色々変更したので一応使えます、でもまだ納得いかないんですよねぇ……」


 昨日の時点でもう……出来ていただと……? リルルさん天才やぁ。


 ポン子も呆気に取られている、がモバタンを取り出し確認をする、そういや普段はポン子に預けてたんだったな。


「イ、イチロー、出来てます完璧な公式サイトと管理画面が完成しています、直感的にも使い易くて……、後輩ちゃん貴方は最高の仕事をしました、きっとイチローも喜んでいるはずです」


 俺もモバタンを見せて使わせて貰う、やっべーすごい使い易いし判りやすい、デザインが少し無骨かもだが、え? これを二日で? っと俺を見て何か期待をしてるリルルに。


「有難うリルル良い仕事をしてくれて俺は嬉しいよ、リルルは最高の従者だな」


 そう言って頭を撫でてやる、リルルは嬉しそうだ。


「モミチロー先生、公式サイトの入場パスを教えて下さい、とりあえず、すべて私が予約を入れます、あとで他の天使にそれを振り分けますので」


 と金髪天使さんが言うや、ポニテ姉さんも横から。


「私達も予約入れていい? パスは末妹ちゃんに聞けば大丈夫だよね? ご主人ちゃん」


 と口を出してきた、金髪天使さんはポニテ姉さんの方を向くと。


「無理しなくてもいいぞサキュバスさん、私達天使が全部予約を入れてもかまわんのだぞ」

「あらあら、何を冗談言ってるのかしら天使さん、それこそこちらのセリフだわね、第一今ここにいるのはサキュバス五人に天使が一人、この先の予約もこの比率にするのはどうかしら?」


 二人の目の間に火花が散っている幻が見える気がする、てか戦闘絡まなきゃ天使怖くないのかよポニテ姉さん、君の連れの三人は金髪天使さんの威圧にビビッて震えてるんだが……と思ったらポニテ姉さんも足がちょっと震えてるな、やせ我慢か。


 そしてリルルを数に入れないでくれ、ポン子の事はあえて無視してるし……、やばい女子の口喧嘩戦争が始まる前になんとか止めねば、一度始まると後を引くし流れ弾が俺に来るんだ……俺はそれを施設でよく知っている。


「ふっモミチロー先生は今日が初めての仕事だ、先生の負担を考えわざと今日は一人で来たのだ、そんな配慮も無いのか君らは、それに数を言うなら私の所属する〈癒し好き同好会〉のメンバーは三百を超えるぞ、勿論それ以外の天使も来るだろう、比率が何だって? ふんっ」


 金髪天使さんが威勢よく発言をする、それを受けたポニテ姉さんはすごく余裕がある表情に変わった。


 後まだ会って少ししかたっていないのに金髪天使さんには〈負けフラグ〉が似合うと思ってしまうのは何故なんだろうか……。


「へー三百人はすごいわねぇ、サキュバス側なんて、たかが日本の本州の一部をナワバリとした私達の氏族全員と、他氏族からもご主人ちゃんに揉まれたいって言い出しただけだもんねー、あ、ちなみにうちの氏族だけで千は軽く超える訳だけど、で? 比率が何だって?」


 こっそりリルルをつつき本当にそんなに居るのか聞いてみた、同じ場所には住んでないがある程度ばらけてる同じ氏族のすべてと、近場の氏族からも来るなら数千に届くんじゃないかとの答えが来た。


 すげー数だな、しかし物理的に数千人は揉めない訳だが……。


 ポニテ姉さん震えも止まってるな、精神的に有利になったのが判ってるのだろう……でもちゃんと人数的に少しだけ手加減してるのか……。


 金髪天使さんが泣きそうな顔になっている……どうしようどうすれば……ここはやはり俺が道化となるしかないな!


 俺は自分に暗示をかける、俺はイケメン俺はイケメン俺はイケメン、よし!


 二人の目線の間に飛び出し言ってやる。


「ちゅっ、まてよ!」


 かんでしまった……しにたい……。


 しかし続けなければなるまい、二人が黙って俺を見ている今が止めるチャンスだ。


「俺の為にケンカはよすんだ可愛いお嬢さん達、しかし俺にはどちらかをなんて選ぶ事は出来ない、ここは両方を選ぶという事でどうだろうか? パチリッ」


 と、最後にウインクをしてみせた。


 ……。

 ……。

 ……。

 ……。

 ……。

 ……。


 まって金髪天使さんとポニテ姉さんだけじゃなく震えてたはずの三人も冷めた目で見てくるんですが……ってリルルさん!? 冷めてないけど、不思議な者を見る目で俺を見るのはやめてそれが一番辛い……。


 ポン子が俺の肩に乗ってきてポンポンと首を叩く、慰めてくれるのはポン子だけだよ……。


「イチロー、あの技はイケメンにしか効果的に使えないんです、残念ですがイチローには難しい、空気を読む所から勉強しましょうね、大丈夫私がついています」


 トドメを刺しにきやがった……、げふっ俺はもう……だめかもしれん……。


「んん、すまんなサキュバス殿、私は少し言い過ぎたようだ謝罪する」


「いえ、こちらこそ大人気なかったわ、ごめんなさいね、半分づつで十分だわよね」


 俺が項垂れている上で二人は和解をしている、俺いらなかった説。


「そうだな……ここには人間が居ないのならば我らが敵対する道理も無し、どうせならこの部屋を天使とサキュバスの非戦闘地帯として正式に登録するのはどうだろうか」


「それはいいわね! 帰ったら氏族長に伝えるわ」


「うむ私も上司に伝えてみよう」


 部屋の主を無視して何か決まっていくのですが……、いやまぁケンカしないでくれるなら有難いのだが何故か釈然としない。


 ポン子に肩を叩かれて。


「モミチロー先生、仕事の時間ですよシャッキリして下さい!」


 お前がトドメを刺したんだけどね? やるよ? やりますよ? ええやります! もうねなんかねふっきれたかな、ちょっと今日は感情が安定しないので〈ナデポ〉に過剰供給しちゃいそうだなー、ハハハ。


 金髪天使さんをマットレスにうつ伏せに寝かし、スラ蔵さんを枕に、そして昨日からずっと練習をしてきた揉みをすべて全力でぶつける事にした、〈ナデポ〉強化! 〈マラカス〉電気振動睡眠を瞬間連続発動!



 そうして俺の部屋に金髪天使さんの声が響くのであった、誰か生活魔法で部屋全体に遮音お願いね……。




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