危険が無い職場編
第50話 揉み屋の準備
「大天使さん! ケモミミ道はそんな単純な物じゃないんですよ!」
がばっっと上半身を起こす、がいつもの俺の部屋のようだ、そうか夢か……。
横を見るとやっぱりリルルが幸せそうに寝ていた、余剰分とやらを吸い出してくれたらしい、やはり吸精されると夢を見るのだろうか、昔はそんなに夢を見なかったしなぁ。
夢と判っていたら素直に大天使さんの狐耳膝枕を堪能したのに……くそっ夢の中で大天使さんに説教をしてしまった、夢を夢と理解できるようにならんものかね。
いつもの様にシャワーを浴びにいく、ふふふ、俺の家には洗濯機があるのだ、もういちいち服を手洗いする必要もない。
知ってるか? 洗濯機って洗剤と洗い物を入れてボタンを押すだけで、干す手前まで自動でやってくれるんだぜ? 人間の文明って素晴らしいよな……。
朝早く回すのは音がご近所に悪いし、洗濯機は朝飯終わってからにするか……、いやもう予備の下着とか一杯あるし、ある程度貯めちゃった方がいいのか?
施設だと悩まなくても一杯洗い物あったからなぁ……、一人分だと洗剤代とかもあるし……むむんこれは難しい問題だな、一般の人はどうしてるんだろ。
まいいや、シャワーシャワーっと
――
髪をタオルで拭きながら部屋に戻ると二人がもう起きていた。
「おはようさん二人とも」
「はよーございますイチロー」
「お早う御座います、ご主人様!」
相変わらずポン子は少し眠そうで、リルルは元気一杯だな。
「んで午前は買い物に行くんだよな?」
「はい、マッサージ用の場所をいつまでもイチローの布団にする訳にいきませんので~ふわぁぁ、良い感じのマットレスとかシーツとか必要そうな物を買いにいきましょう」
「了解、飯は食パン
そうですねーと素直に同意してくれるリルルと、それが普通なんですがとポン子は呆れて言う。
だが呆れるのはお前のパンの食べ方だよ、六枚切りの食パン全部使って五層ジャムサンドってなんだよそれ……普通なら口に入らんのだがなぁ。
あーんパクッ、リルルがピーナッツを塗ったパンを口に運んでくれるので俺もお返しをする。
――
朝ごはんを食べた後、いつものようにリサイクルショップへ買い物に。
店内に入るとススっと一人の店員が近づいてくる、まぁポニテ姉さんな訳だが。
「いらっしゃいませ~お客様、何かお探しですか? もしかして私をお買い上げに!? 高いですよ~私は」
「こんちわポニテ姉さん、えーと揉み屋で必要な物を探しに来まして、ポニテ姉さんは高いとな? それは残念です予算が組めた時はお願いしますね」
笑いながら冗談を混じらせ挨拶をしてる俺達、ポン子がポニテ姉さんに欲しい物の説明等をした。
「それならお勧めがありますよ、クッション性抜群で私達のようなお胸でも、うつ伏せが苦しくない逸品です、こちらにどうぞ~」
確かにそれは必要だな、とポニテ姉さんに付いて行く、ポン子は何か悔しそうな唸り声を俺の頭の上で漏らしている、小さくてもいいじゃない妖精だもの、妖精はスレンダーってイメージがあるのは俺だけかね?
「なんだろ、イチローにすごく侮辱された気がするんだけど……」
気のせい気のせい。
リルルはポニテ姉さんの肩に乗り移り何か話をしている、本当に仲直り出来てよかったなぁリルル。
素晴らしいマットレスと他シーツやら諸々を買った俺達に、ポニテ姉さんが店外の死角に案内してくれる、空間庫が使えるようにだった、有難い、ポン子がそそくさと仕舞っている。
そしてポニテ姉さんが。
「ご主人ちゃん
どうかな? と聞いてくるポニテ姉さん。
「リルルが構わないなら俺は良いですけども」
リルルを見ると覚悟をした顔つきをして。
「私行ってきますご主人様、姉様達と仲直りもしたいですし、でもちょっと怒りたいですし、そんな所は見せたくないです」
「了解だ、じゃぁリルルの事をお願いしてもいいですか? ポニテ姉さん」
「まかせて! あ、それとね、その三人も午後が空いてたら予約していいかな? 初回割引になるよね? マネージャーさん」
「勿論です! 今日の予約は二人だけでしたので有難い話です、サキュバス割引に、初回割引、紹介割引と後輩ちゃんの姉割引も効きますよ」
もう割引が適当だよなポン子、最初から普通の値段を提示すりゃいいのに……。
そのうち貧乳割引とかしそうだよね、身内意識で無料とかな。
「なんだろう、イチローに馬鹿にされた気がする」
気のせいだってば。
店の前でリルルと別れる、ポニテ姉さんの肩に乗ったリルルは楽しそうに足をフリフリしながら笑顔で会話をしている、仕事中に肩乗せ妖精とかいいのかね?
ふとお店の看板が目に入る。
【夢のような安さの殿堂 魔法のような品質 リサイクルショップ〈ドリームヘル〉へようこそ】
と書いてあった、あーはいはい。
その看板をじっと見ながらポン子に問いかける。
「なぁポン子、このリサイクルショップってさ」
「サキュバス資本っぽいですねぇ」
天使も悪魔も地上に進出しすぎじゃね。
「いいのかそれ?」
「人間にサキュバス的な事をしてないならいいんじゃないですか? 彼女らだって地上の資金が必要な事もあるでしょうし、サキュバスは必要悪とみなしてますしねー、ま、営業はお互い手加減無用になりますけどね」
昼と夜飯を買いに俺丼屋に向けて歩き出しながら、頭の上のポン子と会話をする
「お互いって天使は追い払うだけだろう?」
「結婚相談所を勧めてたじゃないですか」
「あー、なるほどな、でもよ、いつもそんな営業合戦してたらもっと天使だ悪魔だの情報が表に出そうなもんなんだが、そりゃ確かになるべく隠れてやってるんだろうけどよ」
ちょっと不思議だったんだよなぁ、そこらへんが。
「権力利用してマスコミ関係は封鎖してますし、それに羽の生える飛行スキルや獣化スキルなんてのもあるファンタジー現代世界で、自分達の事を態々天使と自己紹介しなきゃぁ、悪い奴らを退治する国の特殊機関とでも思わせるのは難しい事じゃないんですよ」
「なるほどなぁ、そういや俺は営業戦争を理解してたから羽を見て天使と思ったけど、金髪天使さんは自分の事を天使だとは言ってなかったような?」
「知ってますか? とある掲示板では天使やサキュバスの事を国家の特殊秘密機関とか秘密組織とかで〈ガーディアンエンジェル〉とか〈ラブエージェント〉とか勝手に名づけされてましたよ、非公式ファンクラブもあるそうです」
ある意味間違ってないのが笑えますね、とポン子の笑い声が聞こえてきた。
ポン子はモバタンを使いこなしてるよなぁ……俺も負けずに情報収集頑張らねば、しかしまぁ和製英語って適当だよな。
――
俺丼屋でポン子と店主が意気投合してしまい、しかも夕食分まで買ったので三十分以上かかってしまった、もうお昼になりそうだ、急ぎ足で帰っていると、目の前に人が現れて。
「おい、山田一郎おま――」
邪魔なので迂回して先を急ごうとしたら、まて、と服を掴まれた、なんだこいつ。
イラっとして相手に問いかける
「いきなり服を掴むとか失礼じゃないですか」
「ああん? なんだその口の利き方は……チッ本当に解けてやがるな……」
目の前にいる男はくたびれたサラリーマンといった恰好だが、目つきがすっげー悪い中年の男性だった、俺の服から手を離し、目線を俺に合わせて……。
目が少し光っているような気がする、そしてその中年男のおっさんは。
「山田一郎、俺はお前に探索者としての有り方を教えてやる善意の第三者だ! 理解したな?」
何言ってんだこいつ?
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