第35話 リルル先生の長考
「私が先生ですか? 何か恥ずかしいですね」
リルルは体と尻尾をくねらせている、白衣を着たJDな教育実習生だろうか、だがしかし下はショーパン素足で女の子座りだ。
そこでポン子が何かを思いついたかのような顔をして。
「後輩ちゃん、〈夢見がち〉スキルの下に色々な効果の物を作るんですよね? その場合効果ごとに必殺技みたいに呪文やら名前がついたりするんでしょうか?」
「それぞれ独立したスキルにする事も出来ますが、だいぶ弱い物になってしまうんですよ、それなら〈夢見がち〉の下部にそれぞれの、そうですねポン子先輩のいう必殺技のようにして存在させるのが一番かと思われますね」
夢見がち夢見がちと言われるたびに心に何かが刺さっていく、ここは名前を変えて貰うしか……。
「リルル先生」
手を上げて発言した。
「はいなんですか? ご主人様」
すかさずポン子が。
「後輩ちゃん! そこは先生と生徒になりきったプレイをするべきです、やり直して下さい、イチローもその方が嬉しいはずです、コスプレ衣装を出すのも有りですがそれはまた今度にしましょう」
た、確かにコスプレの成りきりプレイは大人気だと姉さま達が言ってました……とリルルが納得している。
ポン子に染められていくリルルを眺める事しか出来ない俺を許してくれ、そもそも仰向けに寝て素肌の胸をさらけ出して、さらにその上に素足の妖精を座らせている男だしな、そんな資格ないよね。
リルルはこちらをじっと見て、何かを期待しているようだ。
うむまかせておけ、手をあげて発言をする。
「リルル先生」
リルルは嬉しそうに答える。
「はい、なんですか? 一郎君」
「〈夢見がち〉という名前もっと他にどうにかならないでしょうか……」
うーんと少し考えるリルル。
「そうですねぇ、夢という部分が無いので少しロスが出てしまいますが〈中二病〉とかどうですか? 内容的にはそれほど逸脱しないのでいけると思いますが」
私はどちらでもいいですよと、続けるリルル。
〈中二病〉〈夢見がち〉スキルを得た自分を想像してみる、俺が神族になって数百年後だとしよう。
『お前まだ中二病なのかよwww、第何次だそれwwww』
『数百年生きてて、まだ夢見がちとかうけるwwww』
あれ? どっちもひどくね?
究極の二択すぎて厳しすぎる、そもそも今現在でもそんなスキル名は嫌だ。
「リルル先生的に効率の良い方でお願いします……」
どっちかなんて選べないしリルルが楽な方でいいか……。
「はい、では〈夢見がち〉で決定ですね一郎君、フフ」
なんだかリルルは先生役がやれて嬉しそうだ。
こういった子供がやるようなごっこ遊びって友達がいないと、あ……。
リルルの過去を思い涙を流していると、ポン子が手をあげて発言する。
「後輩先生、イチローの必殺技なんですけど、〈ニコポナデポ〉と〈ラッキースケベ〉はどうですか? とポンちゃん先生は提案します」
自分も先生で尚且つリルルが後輩役だとそれとなく教えているポン子、ってちょっとまてなんだそのスキルは。
なんですかそれ? と素になって聞いているリルルにポン子が詳しく説明しだした。
おいまてやめろ。
さすがに口を挟もうとしたら、俺の口の上に飛んできたポン子が座ってそれを阻止する。
強引に手でどかせる事は出来るが……女の子には優しくと妹や施設の子に散々言われてるし……うぬぬ、このまま口を開けたらポン子を食べてしまいそうだ、大人しくするしかないか、しょうがないね。
ポン子は説明が終わるとテーブルの端にいるスラ蔵さんの所まで帰っていった。
リルルは悩んでいる、いや本気にせんでいいのよ? リルル先生。
「魔眼も無しにやるのは……ふみゅー、神がもっている超自然的な資質を利用すれば……ううーん、予知が出来たとしてスケベにどうやって……ムムム、それなら……あれにバイパスをかければ……こっちに……」
リルルは長考に入ってしまった、ポン子も冗談だったのだろうけどリルルの真剣さにびっくりしてるように見える。
ポン子に語り掛ける。
「リルルには冗談とかまだ判らないだろうから、あんまり無茶言うなよポン子」
「ですかねぇ、でもね私思ったんですよ、前にイモムチローは物語の主人公になれないって言いましたよね、だから安全に行こうと、でもねやっぱり主人公になって欲しいという気持ちはあるんです、だって私の大切な相棒のイチローですから」
最高の笑顔を見せながらそう言ってみせるポン子。
ポン子……お前……そんな風に俺の事を……、泣けるじゃねーか。
ポン子は愛しい子供を見るような目で語りを続ける。
「そしてさっき撫でたら気持ちよくなる手を持っていると聞いてピーンときたんです、イチローも主人公になれるって! そう、ラブコメの主人公にね! ラブでコメな作品には〈ニコポナデポ〉と〈ラッキースケベ〉がどうしても! どうしても必要だったんです! だから冗談でもあり本気でもあるんですよ!」
ポン子お前、そんな風に俺の事を……泣けてくるな……。
「探索者として強くなる物語の主人公とかじゃ無いんだな」
「イモムチローが? 冗談は顔だけにしてよねイチロー、だいたい強くなったら深い階層に行くでしょう? イチローが命を賭ける作品なんて私は嫌ですよ! いいじゃないですかラブコメは滅多に人も死なないし……あ……ボッチのイチローには異性の相手がいませんでした……くぅー失敗した、ポン子ちゃんやっちゃった、テヘペロッ!」
下げて救ってまた下げてきやがった、絶対最後のポーズがやりたかっただけだろ。
だが一つ訂正させて貰う。
「今はボッチじゃないですー、可愛い妖精が二人も仲魔にいますしー」
「人間の、いや同じ大きさの異性相手が居ないでしょって言ってるんです、今は飴のおばちゃんくらいしか居ないじゃないですか」
「やめてくれ! 想像したらどうすんだ、このペッタンコ」
「な、誰がまな板ですか! これでも人間サイズならBに手が届いたり……したらいいなーって神様に御祈りしてるんですよ!」
寝転んでる俺とテーブルの端のスライムに座っているポン子は、お互いにボクシングのファイティングポーズを取りシュッシュと口で言いながらジャブやストレートを繰り出して牽制する。
勿論俺は胸の上のリルルが揺れないように慎重にだが。
だってリルルさんの長考が長くて暇なんだもん。
ボクシングに飽きた俺とポン子はリルルを見て。
「長考終わらないな」
「終わりませんねぇ」
リルルは未だに一人で何か考えながらブツブツを呟いている。
「そういや、リルルの性格が最初と少し変わってるよなぁ、召喚したては猫被ってたのかねぇ」
「ああいえ、それはたぶん白衣と眼鏡のせいかと、恐らく後輩ちゃんは自身の恰好に性格が釣られるタイプなのでしょう、普段着とスーツでは気分も変わりますよね、なりきりタイプという事です、女優として育て甲斐がありますね」
「なるほど、ジャージの時は素に近く、白衣眼鏡で強気研究者とかか?、あれ? となると一杯あるというコスプレをした時は?」
「後輩ちゃんは一杯属性あって、先々が楽しみですねーイチロー、まぁ被害に遭うのはイチローでしょうし私は観客で楽しみますね」
楽しみであり、怖くもあり、革製のボンテージとか持ってない事を祈る。
その時は全力でお前を巻き込むからなポン子。
「そうだ、さっきはペッタンコなんて言って悪かったよポン子、よく見たらうっすらあるもんな」
「私こそ冗談は顔だけなんて言ってごめんなさい、イチローにも良い所はありますもんねスライム踊りとか」
「はははポン子こいつめー」
「うふふふイチローったら」
……。
「……なぁポン子、観客が一人しかいない劇で役者は一生懸命演劇をしているけども、お客さんがモバタン弄って劇を見てなかった時の役者の気持ちとかが、今の俺にはよく判るんだが」
「奇遇ですねイチロー、二人でやってる時は気にもなりませんでしたが、いざ第三者の存在があると反応が欲しくなってしまいますね、つまり私たち――」
「ポン子先輩! 出来ました! いえ出来ませんでした!」
その時リルルが顔を上げ急に叫んだ。
落ち着け、出来たのか出来てないのか判らんぞ。
ポン子はびっくりしつつも答える。
「後輩先生、急にどうしたんですか?」
「はい、あ、ポンちゃん先輩先生? さんの言ってた〈ニコポナデポ〉と〈ラッキースケベ〉ですが、残念ながら〈ニコポ〉は洗脳系の魔眼等がないと難しいです、ですが〈ナデポ〉は出来ます!」
出来ちゃうらしい、ポン子もびっくりしている。
「〈夢魔〉の快楽や欲望を操作する力、それと睡眠の能力と神の力をこう混ぜまして、ぐるぐるっとしてポーンってパシパシって弄れば出来ちゃいます、相手を撫でると幸せにそして感度が増し気持ちよさが倍増していき、さらに睡眠と起きている時の狭間状態にする事で気持ちよさを好意と勘違いさせそれを増幅させる、という感じになりますがいかがでしょうか?」
俺とポン子はポカーンと口を開けている、リルルさんまじ天才や。
「あれ? ご満足頂けませんか?」
さすがのポン子も言葉を詰まらせ。
「……いえその、まさか本当に出来ると思わなくて後輩先生のすごさにびっくりしてしまって……」
ちょっと内容が良くないのでリルルに注意をする。
「すごいんだけどもリルル先生、人の意思を捻じ曲げてしまうようなスキルは止めて欲しいなーと思います」
「はい、一郎君ならそう言うと思って第二案も用意してあります、ご安心下さい!」
二の矢が準備されているらしい、安心できないの俺だけかね、ポン子は楽しそうに拍手をしている。
「第二案は単純です、一郎君を好きな異性相手にのみ反応するという制約を入れて、尚且つすでに好意があるので睡眠の力は使わずに欲望と快楽と神の力のみで作る〈ナデポ〉になります、すでに一郎君を好きなのですから捻じ曲げるも何もありません、只々相手を幸せに、そして気持ちよく、えっと……恋人とエッチな事をする時に便利ですよ?」
「素晴らしいですね後輩先生、予想以上の出来でポンちゃん先生も大賛成です」
「いえやっと……それは探索者の役に立つのか?」
「勿論です一郎君、恐らくですがこの技に確定した場合〈夢見がち〉に耐久値アップとか精力アップがつくと思います、前の天使達がやったスキル修正だとほとんど能力上がらないですから十分かと、それにまだまだ技はありますし、もっと能力上がりますよ?」
あがるのなら反対も出来ない……か。
「それで後輩先生、〈ラッキースケベ〉の方はどうでしょうか? ワクワク」
セリフにワクワクとか入れるなよポン子。
「はい先輩先生、〈ラッキースケベ〉は一応作る事が出来ます、出来ますが……リソースの消費がかなり多くなってしまいます、現状の一郎君の自己生産分では一月に数回発生させられるかどうか……、一郎君が恋人を作って毎日リソースの生産をすれば数日に一度はいけるでしょうけど」
あーそういや悪魔や神のスキルはリソースが燃料になるんだよな、今の俺でも自分の精神の動きで多少は生産してるが。
「俺も悪魔みたいに個人で他者からリソースが奪えると?」
「一郎君奪うというよりは生み出すです、貴方の悪魔と神の力の権能により吸収できる性質が変わってきます、神の方は封印のせいかよく判らないんですけど、悪魔の方はインキュバス系ですので、えーとそれ系のエッチぃ事で精神が動いた場合のリソースを近くにいると吸収できます」
つまりイチローはラブなホテルで働けばリソース吸収し放題ですね、とかポン子が言っている、やだよそんなの。
「それに〈ラッキースケベ〉を作ると、ほぼすべての材料を使い切ってしまうので、〈夢見がち〉スキルの能力がそれだけになってしまいますがどうしますか? 一郎君」
「それはもう取るべきでしょうイチロー! ラブコメ主人公まっしぐらだよ!」
ポン子が演技を忘れて暴走している。
「〈ラッキースケベ〉は却下でお願いしますリルル先生」
ノォォォォとポン子が何処かでみた絵画のような表情で叫んでいる、いやさすがに、たまにあるラッキーの為だけには取れんだろ。
「そうですか、上手く構成できたので残念ですが一郎君の意思に従いましょう」
リルル先生は素直に引き下がってくれた、マッドじゃない先生でよかった。
「では〈ナデポ〉以外の技の候補を説明しますね」
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