第12話【閑話】施設にて

「ま、こんなもんだろ」


 独り言をつぶやき椅子に座る男。


 そこに扉からコンコンコンとノックの音が聞こえる。


「はいどうぞー」


 扉を開けて一人の女性が入って来る。


「失礼します、施設長、書類のチェックはもう終わりましたか?」


「ああ、終わってるよ今ハンコ押すからちょっと待っててなー」


 男は執務机の引き出しを開けて何やら探している、女は問う。


「一郎君すぐ帰ってしまいましたね、ここを出て行ってから何度か来てましたが、あの子の様子を見るに、正直、その……もう生きて会えなくなるんじゃと思ってました、昔みたいに元気になってて良かったです」


 と嬉しそうに女は言った。


 見つけたハンコを書類に押しながら男は返す。


「探索者は危険な職業だ、ましてや施設出身は支援してくれる人も金も無い、装備の揃ってない新人探索者の何割かは、数年以内に見かけなくなるしな」


 男の言葉を聞いた女は背筋に冷たいものが走る。


 男はそれ以上何かを言う事はなく、ペタンペタンとハンコを押す音だけが響く。


「どうにかしたくても、施設職員が特定の個人の支援などしたら、うるさく言ってくる人達が居ますからね……」


 顔を下げ沈んだ声でそう言った女だが、顔を上げた時には笑顔を浮かべ。


「ああでも、始めたけどすぐ飽きた趣味道具を、処分する代わりに誰かにあげるのはなんら問題ないですよね、武器になりそうな物が混じってるだけですし」


「はてなんの事やら、俺は飽きっぽいだけだよ、ほら書類もって帰りなさい」


 そう言って書類を女に差し出す男、女は素直に書類を受け取り。


「はい確かに受け取りました、あ、そうだ施設長の趣味道具部屋、小さい子がかくれんぼとかで入ると危ないので、鍵をちゃんとかけて置いてくださいね?」


「了解気をつけます」


 では失礼しますと、女は部屋を出ていった。


 男は立ち上がり窓辺に寄り、施設の庭で遊んでいる子供達を眺めながら。


「生き残ってみせろよ、一郎」


 呟くのであった。

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