第6話 ニューゲーム
…………………………………………………………狼では……ない…………よかったぁぁぁぁぁぁ………
烏間 奈夜は五十嵐の死体がある部屋で、配られた封筒を開け何も入っていないことを確認して安堵した。
狼は当たっていたらしく、ヒントは
あぁ、羊で良かったと思っていると
誰かが突然、衝撃的な言葉を放った。
「今回は何も入っていない人が犯人だよね。」
……………………え?……………………
気付かぬうちに身がすくんだ。
「いや…違うよ。何か入っててそれが狼のカードだったらソイツが狼さ。」
ラヒがそう答えた、
ホッとした、 が今ので五十嵐の死に様を思い出してしまった。
ふっとあることに気づいた。
……今、反応した人は…羊だ……
あぁ!、ちゃんと見てなかった。
とりあえず、今日はもう部屋に戻ろう。
疲れ過ぎて、何かが麻痺している気がする……
「じゃあ、先に部屋に帰ってます。」
そういうと、少し乱暴に扉を開けた。
地下におりると南が死んでいた床を踏んで、自分の部屋を開け、ベッドに飛び込んだ。
10秒もしないうちに、烏野の脳はシャットダウンされ、スリープ状態に移っていった。
「○○○○○○○○○○○○?」
「○○○○○○○○○」
「○○○!!」
「○○○○○?」
「○○○○○○○○○だ!」
「○!?」
「○○○XX!!!」
――――――――――――――――――――――
翌日……
「ンー!」
あぁ、起きないと、
…とりあえず、キッチンにでも行こうかな…
キッチンに入ると、すりガラスが真っ黒になっていなかった。…つまり昼か朝だという事だ。
キッチンの冷蔵庫を開けると、卵やハムがあったので、今生き残っている人数分、ハムエッグを作ろうと思い、二つのフライパンにサラダ油を引いた。
まずハムを軽く焼き、その上にトロッとした生卵をのせた。 ハムの油分がフライパンの上でパチパチと跳ね、キッチンに食欲のそそる香りが立ち上る。
七つ繋がったハムエッグがあるフライパンのコンロの火を消した、まだ余熱でパチパチといっている。
冷蔵庫からバターを取り出し、流しの台の横にあったスライスされていた
「…あ、食器がない…」
流しの下が開くのだが、そこには大小様々な包丁しかなかった。
そういや…紙皿を持ってきたかも…
地下1階にもどり、自分の部屋に持ってきた、紙皿を見つけ、ついでに割り箸を回収すると、松野さんの部屋をノックして他の人を起こしてくれるよう頼んだ。
松野さんはあくびをしつつ、了解ですと言い、南さんの部屋をとばしてラヒさんの部屋の扉をノックした。
自分は1階に行き、キッチンに入ると千ちゃんがいた。
「おはようございます。」
「ん? あぁ、烏間ちゃんおはよう。」
「この、目玉焼きは烏間ちゃんが作ったの?」
「そうですよ。ご飯がなかったのでパンを使いました。」
「おぉ、私朝はパン派なんだよねー」
「それは良かったです。」
早速、持ってきた紙皿にトーストとハムエッグを一つずつのせ、千里ちゃんに渡した。
「おいしそう!いただきます。」
割り箸をパキッとわり、半熟ハムエッグをトーストにのせた。
そして、それを豪快にかぶりついた。
「おいし!烏間ちゃん料理、上手!」
千里の口が黄身がついてしまっているので、
紙ナプキンを渡した。
「ふふ、ありがとうございます。」
そういうと、千里をまねてトーストにハムエッグをのせ、おなじようにかぶりついた。
半熟の玉子から濃厚な黄身とハムの塩味がマッチしている。
昨日から何も食べていなかったのでハムエッグトーストはすぐに腹におさまった。
「ンー、おいしかったぁー」
「ごちそうさまでした。」
紙ナプキンで口のまわりを拭いた。
千里は黄身で、汚れたナプキンをクシャッとまるめると、それをゴミ箱に放った。
「ちょっと私、デザート持ってくる 当てがあるんだ」
千里は弾んだ声でそういい、キッチンを出て行った。
紙ナプキンはゴミ箱をそれて、地面に落ちた。
千と入れ違いに松野さん達がやってきた。
「おはよー」
「おはようございます」
「おはようさん」
「はい、おはようございます」
そんな感じの会話が何回か続き、皆、同様に半熟ハムエッグで口を汚しながら口々に美味い、とか美味しいとか言って烏間は自炊しててよかったなあと感じた。
「烏間ちゃん、おまたせ!」
千里が手に果物のようなものを持っている。
「それは?」
ラヒがきいた。
「ワイルドベリーだよ!」
「あ、知ってますそれ」
流瑠がいつのまにかプラスチックのボウルに水をはっていた。
そこでワイルドベリーを水で洗い、余っている紙皿にそのベリーを盛った。
「いただきます。」
普通のイチゴより2回りも小さいそのベリーは、まさに果物だった。
甘酸っぱいのではなく、みずみずしくてほのかに甘い。
松野さん達もいただきますと言って、とれたてのワイルドベリーを口にしている。
「美味しい」とか「うまい」とか言って…………緊張感が皆無だな…………もしかしたら毒が入っていたりとか、今の状況なら充分あり得るのに……
「「「「ごちそうさまでした。」」」」
満腹で周囲の緊張感が緩むのがわかる。
「あのね」
「なんですか?流瑠さん」
流瑠は一枚のカードを取り出した。
そこには、 忘れたのか? とだけ書かれていた。
かすかにそのカードから柑橘系の匂いがする。
「…………忘れた?何を?」
松野さんは流瑠からカードを受け取り、思案中だ。
何か思いついたのだろうか?
「ガスでもいけるかな?」
「何がですか?」
虹さんが聞いた。
「多分、これあぶり出しだと思うんだ」
「そうですね、柑橘系の香りがしていますし。」
それに、これ 1日目も見た。 ……昨日の事を思い出しそうになった。
……怖かったぁ……で……表すことの出来ない……恐怖を感じた……
「図書館でもこの仕掛け見ましたね」
「そうだな、流瑠さんこれ図書館で拾った?」
「そうです。」
流瑠がうなづく。
「とりあえず、あぶってみよう」
コンロに近づき、火をつけた。
松野さんがそのカードをガスの火で軽くあぶった。
紙に文字があらわれた、……今回のヒントは…
とだけ書かれているようだ。
「なんて書かれているんですか?」
ルルマが聞いた。
「今回のヒントは、とだけ書かれている」
「どゆこと?」
千里ちゃんはしきりに首を傾げている。
「んー、流瑠ちゃん他にカードは無かったんですか?」
「はい、ペラッてひとつだけ床に落ちてました」
「一枚な」
ルルマが訂正した、ほんとに仲の良い兄妹だなと思う。
「じゃあ、一度「――はーい、皆さんグッドモーニングです。――――」
松野さんの話は不気味な機械の館内放送に遮られた。
「今日は何……―――「私語厳禁です。」――」
ラヒさんはビクッとして、首すじをさすりながら天井の隅にあらわれたスピーカーを睨みつけた。
――――「まず、昨日の松野の推理は…………」
デレデレデレンと間を置き、
「正解でしたぁ!皆さん拍手 」――――
誰も動かなかった。
――――「拍手」――
突然、首すじに電流が走った。
「「「ッッ!」」」
名取さんの顔が怒りに歪んだのを見て、
今のは、機械によるものと分かった。
流瑠ちゃんが拳を握りしめているのに気づいた。
胸の中で反発心が生まれるのを感じる。
そのうち、気のない乾いた拍手が聞こえてきたが、 自分は何もしなかった。
松野さんが何か言いたげな表情をした。
――――――「天罰」――――――
機械が小さく低い音を発した瞬間、
首からジュッという、肉がやける音がきこえ、
あたりが真っ暗になった。
頭の中で、状況を把握できぬまま、烏間は床に崩れ落ちた。
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