第5話 狼はだれだ?
図書館に着いた。
図書館のベンチに座り、まずは南美絵について考えようと、心を決める。
もやもやした気持ちを隠して、議論に参加する。
「えっと…南美絵さんについて議論を行いたいと思います、意見のある人は手を上げて下さい。」
疲れきっている皆の顔を見ながら、議題を挙げた。
まず、烏嬢が手を挙げた。
「まず、犯人は南さんか五十嵐さんのどちらかですよね。」
「そうですね。…一人で別行動していた人は、その二人以外に誰かいますか?」
……全員、心当たりがないようだ…………
「では、南美絵さんが狼だと思う人、手を挙げて下さい。」
執事さん、烏嬢、流瑠が手を挙げた。
「何故そう思ったのですか?」
烏嬢が話し出した。
「まず、五十嵐さんが逃げようとして、後ろから撃たれているから…です。」
「んー、でもそれは五十嵐が自分で撃った可能性があるんだよねー」
パーカーが反論した。
…………あれ?撃った?………………
「そういえば、凶器は何でしたっけ?」
「え?」
「ボウガンじゃないの?」
……………………
「ゲホゲホッ…何してんだ?全員集まって」
五十嵐が足を引きづりながら、図書室にやってきた。
…………よしっ!!……………………
「後、30分くらいで、その………なんて言うか………言いにくいものが撤去されるらしい。」
随分、回りくどい言いかたをしたな…
………殺したのはお前なのに………………
「じゃあ僕、必要な写真を撮ってきますね。」
……あ…そういえば…カメラないじゃん……
……やばい…………ないや……どうしよ……
「すいません、ぉ願いします。」
…………ナイス!……………………
ルルがデジカメを渡してくれた。
「15分くらいで帰ります。」
そう言うと、図書室を出て地下へ向かった。
南の遺体に、合掌し、少し申し訳なく思いながら、刺さった矢の部分と南が持っている、ボウガンを撮影し、血の足跡を撮った。…カモフラージュだ
「あとは……」
コレだな、カメラで白い羽を撮った。
白衣が汚れるのが嫌だし。
必要なことをすませて、図書室に戻った。
ドアの前に着くと、中の様子が聞こえてきた。
「五十嵐、テメェ自分で自分に撃ったんだろ、ほら角度が自分で撃てる角度だったじゃん。」
「だから、違うと言ってるじゃないか」
「正確に角度がわからないので、わたくしは意見をいいかねます。」
「って、いうか落ちていた矢で、南の喉をついた、ってホントか?無理がある」
「本人がそう言ってるからそうなんだよ!」
「……ボウガンって当たるんですかね。そんな簡単に……」
「当たるんじゃないか、大抵のアニメだったら百発百中だよ。」
「いや、私、和弓を撃てるんですけど10回に1回くらいで外しますよ。」
「ボウガンって引き金引くだけだから、当たり易いんじゃ……」
「んーそういうものなんですかね?」
よしっ入るか
「撮ってきました、」
「お疲れー、いい写真撮れた?」
パーカーが聞いてくる。
「……」
返答に困る…確かにいい写真は撮れたが…
「まあまあかな?」
たっぷり10秒、間をおいて返事をした。
そして、みんなにカメラの中身を見せるため、
デジカメをパーカーから順々に回していく。
「ほら…角度がって、もう矢はとれてたか。」
角度の線で疑っているのは、パーカーか
「ん?何か…これ、違和感が……」
烏間が違和感を持っている、写真は南に刺さっている矢の写真だ。
「……あ!…まさか……!……………」
多分、なんとなくは分かっていたんだろうな。
――――――――そう――――――証拠は――――五十嵐の矢――――ではなく――――南の矢なのだ――――
「ん…確かににそうだね。もっと汚れていないといけない」
「あぁ、確かに…そういう事ですか、松野さんのおかげでわかりました。」
どこかで聞いたようなセリフだな
「……何々?」
パーカーが聞いてきた。
「つまり、あれだけ、血があったのに矢の尾羽が白い……ってことではなくて」
まぁ、確かに奇跡的に白だな。
烏嬢が説明を始める。
「矢は、五十嵐さんが武器として、使ったのに
五十嵐が自分が疑われていることに気づいて、反論を口にした。
「手に血なんかつかなかったぞ」
「いや、治療の時にベッタリ血がついてました。」
真っ赤な手がとても印象に残っている。
だが、決定的な証拠にはならない。
「それは…殺した時、床に手をついてしまったからだ。」
「いや、手をつく事はないでしょう…だってあなたはボウガンを持っていたんだから、」
「「……は?」」
一同が、疑問符を頭にちらつかせる。
「いや…ボウガンは一つしか無かったですよ、烏間さん?」
いつも、冷静な名取さんが、何を言ってるんだ?
みたいな顔で烏嬢に質問する。
「もしそうなら、ベッドの下に隠したんじゃないかと私は思う」
パーカーは間違っている。
そうじゃない。
流瑠が手を挙げてから、パーカーに話しかけ
た。
「いや、千さん、それはないかなぁ」
女子同士ではかなり、砕けた会話になってるな
「えっ?何で?」
「ルマにぃ…じゃなくて…兄貴?……が松野さんが治療をしている時に、時に名取さんにベッドの下を確認してもらったんだよ。」
……流瑠が随分、態度が砕けてきたな…
「はい、
「…五十嵐さんは、黒い箱の中に隠したんだと思います。」
「うんうん、僕もそう思うよ。」
「黒い箱って何ですか?」
ポーカーフェイスの五十嵐の顔を見つつ、ルルマに植物園での出来事を教えた。
「ふーん、そっか」
パーカーはふんふんと頷いている。
「わかった、私も…つまり南さんが下で狼が来るのをボウガンを持ってかまえていて、五十嵐はそれを知っていて五十嵐は南さんの不意をついて殺害、五十嵐は自分に矢を刺した。そして自分のボウガンを黒い箱に隠した。」
「はい、そういう事です。」
烏嬢が合いの手を入れる
「それなら、どうやって南を下に誘き寄せたんだよ!!」
五十嵐が最後の抵抗を言った。
これは、大体予想がついている。
「五十嵐さん、くじ引きの時南さんに何か内緒話しをしていましたよね。……僕耳がとてもいいんですよ。」
内容は聞いていないが大体、なんて言ったかは大体わかる。
「そうですね、…まず狼は俺だって言い、地下に行くと言ったんでしょう」
そして、南さんは脱出したかったから、誰にも言わなかった。
探索しているフリをして、武器庫の飛び道具を南は取ろうとしたがそういうものはなく、仕方なく手持ちのナイフを手にしていた。
そこに、ボウガンを持った五十嵐がきたのだ。
ボウガンの矢の速度は毎時200km避けれる訳がない。
そのあと、五十嵐が南にボウガンを持たせて、南のナイフを黒い箱に隠した。
「いや、違ぅそんなことは言っていない。」
五十嵐は顔色を変えずに否定した。
……まぁ、コレも本命ではない…………
五十嵐は一つ、致命的なミスをしている。
「まぁ、そこはどうでもいいことです。」
五十嵐が怪訝そうな顔をする。
「何故なんですか?」
烏嬢が聞いてきた。
「今から説明するよ。」
「五十嵐サン、矢、ツルツルしているのに、どうやって刺したんですか?」
「は?」
「あの矢、やけに木で出来ている部分がツルツルしていますよね?」
「あっ…そうだったな、それが何か関係しているのか?」
まず、五十嵐に暗に細い物を上手く掴めるのかと伝える。
五十嵐が焦りはじめた。
……よし、誘導できた………………
「俺は尾羽の所を持って、刺しただ!!」
「自爆しましたね、五十嵐さん」
…写真では、尾羽は一切乱れていない……
そう、五十嵐に尾羽を持った、と言わせたかったのだ。
五十嵐はまだ自爆したことに気づいていないようだ。
「あっ、そういうことか。」
パーカーが1番始めに気づいたようだ。
デジカメを流瑠からもらうと南に刺さった矢の写真を見つけて、みんなに見せた。
「あぁ、」
五十嵐が気づいたようだ。
顔が青ざめていく。
「あっ、そういう事ですか。」
「なるほど…」
他のみんなも気づいたらしい。
犯人は決定してしまったようだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
○○○○は躊躇なくポケットの中の開始ボタンを押した。
「狼は誰だ」が始まった。
――――「まず広間まで来てね。」――――
陽気な電子音がこの部屋のどこかにあるスピーカーから聞こえる。
全員がぞろぞろと動き出した。
広間のドアを開けると一台の大きいゲーム機と、
その回りをぐるっと鉄の柵が囲んでいる。
――――「では、狼に指さし、してね。」――――
――――「私語を喋った人と誰にも投票しなかった人はいてはいけませーん」――――――
結果、
五十嵐に8票
自分に1票
五十嵐は何かを言おうとするが
より、何も言えないらしい。
ただ、五十嵐の顔が泣きそうになっているだけだ。
―――「はーい、五十嵐さんが死刑ですね」――
五十嵐は絶望と恐怖で顔が死んでいる。
―――「ほら、五十嵐まだ諦めてはいけませんよ。…一度だけチャンスをあげましょう。そこのゲーム機で私に勝てたら脱出させてあげましょう。」――――
五十嵐の目に少し希望の光が宿り、五十嵐は自ら、オリの中に入りゲーム機の前まで移動した。
――――「ルールは簡単、そこにある人形を自分の陣地に引き込む事。……あなたの本業に似ているからやり方はわかるよね。」――――――
五十嵐はボタンをいつでも押せるように構えている。
――「よーいドン」――――
ゲームは始まった。
五十嵐は猛烈な勢いで注目を集める、というボタンを押している。
「死にたくない、絶対に!!」
そう自分を鼓舞しながら、次は味方にするというボタンを駒が半分くらい集まったところで、押した。
それを繰り返して五十嵐は100のうち70を手にいれていた。
五十嵐はホッとした安心感が顔に出ていた。
―― ―― ―終了30秒前までは― ―――― ―
駒が突然喋り出した。
「あいつ、〜〜だな。」
「そだね〜、〜〜だよね。」
「あいつより〜〜〜〜だな。」
駒はいっせいにクルッと五十嵐に背を向けた。
五十嵐は注目を集めるボタンをカチカチおしたが、まったく効果がなかった。
どんどん駒は五十嵐を離れていく。
五十嵐は泣きそうになりながら、ボタンを押し続ける。
残り…………5秒………………
その時一つの駒がこういった。
――「五十嵐、終わったな」――――――
残り…………1……秒…………
五十嵐はその声を聞いて、 自分から離れていく駒を手で払った。
大量の駒が地面に転がった。
結果
五十嵐の勝ちだ。
五十嵐は安心して、ガッツポーズを作った。
―――「また、やったんだ…ふふっ」――――
機械が愉快そうに笑う。
―――「もちろん、反則負けですよ。」―
「そんな事、ルール説明で言って無かったじゃないか。」
五十嵐は勝ち誇った顔をしている。
―――――「は? 負けに決まってんじゃないすか」――――――――
―――「まぁ、言っても仕方ないですね」ー
唐突に、五十嵐の頭上から銀色のナイフが降ってきた。
五十嵐の目に突き刺さる。
「うぅ!?」
五十嵐は状況が理解できず、目に手をやった。
五十嵐が絶叫をあげようとした瞬間、
バコっと五十嵐の下の床が抜けた。
床の下は水が貯められていて、五十嵐が水に落ちた。
それと同時に水面で歓喜したように
溜まっていた水は徐々に透明度が下がっていく。
自然に笑いそうになった顔を泣く真似をして隠した。
残り7人の内一人だけが戦慄を感じなかった。
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