第4話 1kill

  植物園に着いた。

 「中々本格的ですね」

 「確かに、色んな植物園があるね。」

  薔薇に野苺、百合ゆり、木が組んである?…あ茸か……何故こんなに使ったんだ?

 「木すら生えているな。」

 「林檎がなっていますよ。」

  林檎を一つ手に取ってみた。

  どうやら、物質化では無く、植物に干渉したらしい。

  少し齧るかじると林檎らしい味がした。

 「うん、中々いけるよ。」

 ふと、五十嵐を見ると何か、黒い箱を持っていた。

  「五十嵐さんそれは何ですか?」

 烏嬢が聞いた。

 「いや…そこの薔薇の茂みにあったんだ」

 にしては、五十嵐の手は綺麗だな。

   「そうなんですか。」

  不信感を顔に出さないで、そう応えた。

 五十嵐はその黒い箱を開けた。

   すると、五十嵐の眼が見開かれた。

 「すまないが、…俺は部屋に戻る。全員脱出出来るかもしれない。」

 何が入っているのだろうが?

 見ようとするとその黒い箱を隠した。

 「すまないが、誰にも見せるなと書いてあるんだ。」

 ありえない……とは言い切れない…………

……しかも…………五十嵐が死んだときしかあの箱の中身は見えないだろう………………

 「一応、見ない方がいいですよ。烏間さん」

  烏嬢がようとしている。

  「!?…気づいてたんですか!」

  「一応、指図は聞いた方がいいです。多分ここでは規則ルールは絶対だ。」  

  「何言ってんだ?取り敢えずこれを俺の部屋で謎解きをする。後は任せた。」

 五十嵐はその黒い箱を大事そうにもって、植物園を出て行った。

 「じゃあ、自分達は上の階に行こうか。」

 「了解です」

 螺旋状の階段を登る図書館だった。

 本棚には沢山の本がぎっしり詰まっている。

 「ん?なにこれ?」

 烏嬢が取った本を見るとなにも書いていなかった。

 …………近くにあった本を取って中身を見ると………白だった。………………

 どの本を取ってもやはり中身は白。

 「どういう事なんでしょうね。」

 烏嬢は片っ端から全部本をひっぱりだしている。

 「さぁ、さっぱり」

 題名は全て聞いたことのない題名ばっかりである。

 ……「誰だよ、テメェ」………………

  「え?どうした?」

 烏嬢にしては荒々しい言葉遣いだな。

 「へ?私なにも言ってないですよ?」

 「?」

 ん?ちょっとまった柑橘系の果物の匂いがする、これはオレンジかな?

 烏嬢が持っている本から香っている。

 「それ、ちょっとかります。」

 やはり、この本から香っている。

 「これは、もしかしたら軽くあぶると文字がででくる仕掛けですかね」

 「へぇ、炙り出しですか、どうして気づいたんですか?」

 「レモンの匂いがしたから……」

 「へぇー、鼻いいんですね。」

 「ふふん、耳を澄ませば心臓の音すら聞こえるんですよ、凄いでしょ」

 「人とは思えないですね…………」

 烏嬢が呆れたように、ため息をつく。


しばらく探索を続けていると


  ………誰かの悲鳴が聞こえた…………

 「うわぁぁぁぁぁぁ、あぁぁぁ」

階下から悲鳴が聞こえた。

 「「!?」」

 「大変です、いきましょう。」

 そう烏嬢に声をかけて、螺旋階段を降りた。

 ………………場所は……地下1かな……多分……

 「地下1です。多分」

 「了解です。」

 烏嬢も走って、ついてきている。 

 走りながら、他の部屋も確認しつつ地下一階へ急いだ。

 地下への階段を飛び降り、「大丈夫ですか?」

 と言いながら、地下一に入ると悲惨な光景が広がっていた。

  

 血溜まりの中で南美絵が死んでいた。

 首に矢が刺さり、そこから、血がどくどくどながれ、どんどん血溜まりが広がっていく。

 「…………酷い……………………」

 烏嬢が口を押さえて、恐怖による嗚咽を抑えている。

 後ろから階段を駆け下りてくる音が聞こえた。

 「なにがあったんですか!!」

 荒木ルルマの声がした。

 他の人も全員そろってしまった。

「え、え、何?」

ルルマがルルに死体を見せたくないからか、手で妹の目をかくした。

 「う……」

 ラヒが口をおさえる。そしてトイレの方へ走って行った。

 パーカーも顔があおざめている。

  …………あれ?五十嵐がいない?……

  出来るだけ血溜まりを踏まない様にしながら

 そっと、五十嵐の部屋を開けると……血塗れの五十嵐が倒れていた。

  「!?…大丈夫ですか?」

 烏嬢が五十嵐に駆け寄った。

 「……み…………ル…………ナ…………」

  「は?」

 思わず、変な声を出してしまった。

  「何をです?」

 多分、黒い箱のこと思いつつ、きいてみた。

  「…………………………」

  「五十嵐さんっ!」

  烏嬢が五十嵐を揺さぶる。

  「…………大丈夫……生きていますよ。」

  矢を受けたらしく、出血が酷いが、死んではいない。耳を澄まして五十嵐の心臓を聞くと、少し心拍数が上がっているだけで、応急処置で間に合いそうだ。

 「そうですか、」

  烏間が少し安心したした様に見える、 

 …………いや、言い直そう………………

 ………表面上は安心したように見える…だ…

…………信用はできない…………

 

 「どうしたんですか?松野さん?」

 烏嬢が話しかけてきた。

 「いや…少し考え事をしてたんだ」

 「あのー…救急箱もってきました、」

 名取執事が救急箱を持って来てくれた、

 中々、回りをちゃんと見ているんだな、

 ……他の人まだ何も行動してないのにな…

  「ありがとう、助かります。」

 感謝して救急箱を受け取ると、五十嵐の傷の様子をみた。

 ………太ももに矢が刺さっている…………

 ……これくらいなら、傷を水で洗って消毒して包帯巻いてたら大丈夫かな………………

 「すいませんが、傷を洗う水持って来てくれませんか?」

 「あ、私行く。」

パーカーが言ってくれるようだ。

 間もなくして、水が入ったペットボトルを3本もって来てくれた。

 「持ってきたよー」

 「あ、ありがとう」

  非常時なのに呑気な喋り方だけは変わらないな。

 まず、身体に矢尻が残らないように、矢を抜いた。

 ………矢尻に返しがついていない!……

 これなら、応急処置は簡単に出来る。

 ……やはリ、太い動脈は切れてないようだ。…………

 余り傷から血がでてこなかった。

 傷をすぐに水で洗い、消毒して上からぐるぐると包帯を巻いた。

 ……矢を受けて、余り動かなかったのかな。……

 矢が肉をほとんど抉っていなかった。

 「はい、完了です。」

 取り敢えず、五十嵐の件は終わった。

 問題は…南美絵だ……

  首に、矢が刺さっている、矢の羽はこれだけ辺りが血だらけなのに電球に照らされ、白く輝いている。

 「…………誰が……殺したんだ?」

  ラヒが呟く。

 「一番、怪しいのは…五十嵐さんですよね。」

  ルルマは五十嵐が狼だと思っているようだ。

  …もし……南美絵が狼だった場合………

  …五十嵐は脱出することができる。……

  しかし、五十嵐矢を受けている。

  つまり、逃げようとしたってわけだ。

  「んー、でも後ろから矢が刺さっているから逃げようとしたんじゃないかな?」

……いや、じゃあ何故南は死んだ?……

 「たしかに…………」

 烏嬢が頷く。

  「わたくしは、南美絵さんが狼だったんだと思いますよ。」

  「いや、矢は五十嵐が自分で自分に刺したんじゃ……」

 ……ありえる、パーカーは頭がきれるな…

 流瑠が、うぅ、と唸って、床に座り込みそうになった。

 すぐに、ルルマが流瑠を支える。

  「あの…………場所変えません?私もう限界で。」

 流瑠が限界なのか…

 兄貴に目隠しされてても凄く不安なんなんだろうな。

 ……いや…何でこんなに自分は…………

 

おかしい……人として………


  自分はここに来るまで何をしていたんだ?

 …………思い出せない………………

  「あのー、松野さん大丈夫ですか?」

  心配そうにルルマに訪ねられた。

  「あぁ、多分大丈夫…」

  「図書館にでも移りましょうか。」 

  「そうするー?松野」

  「うん、そうしよう。」

  「烏間さんもそれでいいかな?」

   何故、あの時、烏嬢がていることに気づけた?

  「はい、いいです。」

  ……………何か……忘れて……いる?

 

  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る