第14話 ―――
心もつ者は魔物に立ち向かう術はなかった。
死の神タナトスによって、死神へとなったが、根本的に無力のまま。
それでも、彼らは戦った。
生身のまま、自ら作った武器で、何百年も立ち向かった。
しかし、結果として、数えきれないほどの死神が命を落とした。
徐々に
醜いことに、憎しみは伝染しやすい。
一気に、その憎しみの数も増えた。
そこで、四神がとった行動は『使者』の召喚だった。
当時の人間界――時は紀元前1600年頃、中国最古の王朝である
四神は中国の神話であった『十二支』を具現化し、
「ちょ、ちょっと待ってください、、」
丁寧に説明してくれてるシュアルナさんを俺は思わず止めてしまった。
「もし、使者が干支から来てるなら、なおさら、この子…ルナはおかしいですよね?…」
シュアルナさんの使者であるルナ。
俺がまだ人間だった頃はカラスの姿だったが、今は俺の片手に乗るくらい小さい黒猫だ。どうやら、これが本来の姿らしい。
「そうだな、本来干支には猫はいないな。ネズミに騙され、干支になれなかった者」
「なら…」
「それはイレギュラーさ」
「イレギュラー?」
「ああ、この話は四神たちが、人間界の神話を、ただの神話ではなく、実話にしたものだ。この世界のどこで、干支たちの物語があるという事になってしまう。他人の勝手な都合で左右されない、自分たちの歩んだ道がな。だから、彼らの世界で何が起きているかは分からない訳だ」
「他人に左右されない世界…」
少しばかり、神たちはこのホシでなにがしたいのか、分からない。
「このホシでは、猫の使者は『紛い物』なんて言われている。」
「え、それはどうして?」
「さっきも言った通り、干支にはいないはずの生き物だ。誰もが混乱するのも無理はない。それに使者の誕生から数千年、数多くの使者が召喚された。まさに数億匹なんて言われている。その中で猫の事例は片手で足りるらしい。たった一人でも悪い噂を吐けば、瞬く間に意思の弱いものはそれに賛同し、大多数になり、真実として語られる」
「そ、そんなの可哀そうじゃないですか…」
俺の膝で気持ちよさそうに眠っているルナ。
人間の時も、俺のことを何度も気にかけてくれた。そんな子が『紛い物』な訳がない。
「え、じゃあ、あの時りんごを切ったときに猫の形にしたのって?」
「うん?あーあれはうさぎってねずみに似ているだろう?だから、ちょっと苦手なんだ」
「え、そんなに似てないと思いますけど…」
「そ、そうなのか?私は似ていると思うのだが、、」
初めてシュアルナさんが少し焦っているところを見た気がした。
「と、とりあえず、続きだ」
十二――いや、十三の使者は、召喚した者と血の契約をし、主と共に戦いや、人間の世界で力になるようになった。
人間界では、全ての使者は人間に悟られないようにカラスの姿に変わり、死神ともに行動を共にする。その人間の過去の記憶や、行動を観察し、死神に伝達する役目がある。そして、やむを得ない場合は、人間の体内に流れる血を操り、一部行動を制御する。
しかし、
使者の役目は、この死神のホシで、最大限発揮されている。
それは個の力の表れと上昇。
死神には、それぞれの個の力が存在する。
業火を持つ者、時空を操る者、神にも匹敵する筋力を持つ者、その力の種類は無限とも言われている。
使者を召喚した時、初めて現れる、それが個の力。
「これが、使者の大まかな実態だ」
「大体は理解しました」
「ということは、僕もその使者を召喚しなきゃいけないってことですね?」
「話が早くって助かる。私はこのフェーゾガムを転々とし、魔物討伐と人間界の仕事で生活している。君にはそれの手伝いをしてもらう」
「分かりました、やりましょう。」
「やけにあっさりと受け入れるのだな」
不思議がるようにシュアルナさんが問いかける。
なぜだろう、少しだけ俺を心配しているようにも聞こえた。
でも、大丈夫だ。
もう決めたことだ。
「人間の時に教えてくれた温もり、そして、もう一度生きるチャンスを与えてくれた。二度もあなたに助けられた。だから、」
この世界でどんなことが起きようとも、
僕は、
「俺は、あなたと一緒に戦います。」
「ふっ、やはり君は最高だ、リョウ」
しかし、この時の俺はまだ何も知らなかった。
このホシの恐ろしさを。
血が流れる事は雨が降る事のように当たり前。
骨が折れる事は枝が折れるかの如く簡単な事。
肉を割かれる事は紙を破るのと同等な事。
それなのに、
死ぬのは当たり前じゃない事を。
死神に殺された僕と、死神に救われた俺。 青空零 @aozorarei
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