第10話 作戦を練る夜

作戦を練る夜

ステイシーはクロエにある提案をした。それはマヌエラとアビゲイルを迎え撃つため二正面での作戦だった。ステイシーは冷静に現況を分析し、クロエの持つ情報も考慮して二人での作戦を提案したのだ。クロエがアマゾンに潜入し実戦を行う。ステイシーはその背後で情報収集を行う。そして合流地点や連絡地点を決めておくのだ。この作戦は主に破壊工作から敵の継戦能力を削り更に足止めや撹乱をするのも重要になる。まずはクロエがマヌエラのゲリラ部隊とアビゲイルのブラックマンバ戦闘員と交戦する。ステイシーはマヌエラ及びアビゲイルの情報について収集しながらバックアップを行う。そして合流場所は海岸線にした。密林で密会するよりも解散しやすく、水辺に身を潜めることも出来る。ステイシーが用意した拠点もアマゾンから程近いビーチなのでより良かった。ブラックマンバの残党は海岸の孤島に隠れ家があると言う噂もあった。ステイシーはその調査も担当してくれる。凄腕スパイの手腕発揮と言うわけだ。クロエも精鋭ソルジャーとして鍛え上げられた敵勢力の兵士を一人で相手にする。クロエはステイシーの腕前を信頼していた。最終的にはクロエとステイシーが合流して共闘する形になる。


「ステイシーの事だ。また要らん情報まで仕入れてくるに違いない。だがそれもお前の良いところだな。」


ステイシーは必要な情報だけではなく、丁寧にターゲットの身辺の情報や付随する知識、派生内容まで仕入れてくる。余計な話も多いが、確かな情報でクロエもステイシーの集めた情報はアメリカ軍の入手した情報よりも信頼出来ていた。ステイシーも自分の情報を元に行動してくれるクロエは信頼していた。ここまで上手く活用してくるのはクロエしかいない。そして驚異的な戦闘力はCIAでも高く評価されていた。クロエは超人的な戦闘能力を持ち、ステイシーは圧倒的な暗殺術を持つ。やはり実戦を積んだだけありクロエもステイシーもベテランである。優れた戦闘能力と高い情報収集能力が困難な作戦を成功に導くのだ。


「私が敵の情報を極限まで集める。ブラックマンバのアジトや支部についても調べてみるよ。そしてマヌエラの各拠点なんかもね。」


マヌエラのアジトだけでもかなりの数があるようだ。それを見極めるのは難しい。だがステイシーはそれをやってくれる。


「頼んだぞ。」


「いつものことだよ」


影を追うような任務だがステイシーなら結果を出してくれる。クロエは連中と戦闘をするだけだ。成功の鍵は情報にある。以前の任務でもクロエは戦闘、ステイシーは情報を担当した。お互いの信任が必要である。


「良いか、ステイシー。私は時おりスマホに連絡を入れる。お前は私のスマホにその時点まで仕入れた情報を随時送れ。お前が動きやすいように連中の陽動作戦もしてやるさ。」


「さすが頼もしいね~。クロエといれば何だって大成功だよ!情報はまかせて!」


クロエが戦闘、ステイシーが諜報にあたり、随時連絡を取る。そして最終的に合流して共同作戦にあたる。基本的には単独行動だと言うことを取り決めた。アメリカ軍基地からは現地での作戦はクロエが決めて良いことになっている。作戦が成功さえするならば何をしても良いことになっていた。つまり基本的にはクロエがパートナーを決められることになっていた。CIAも同様にステイシーには制限の無い活動が出来るように命じていた。現場での判断も重視するからだろう。基本的に状況に会わせて戦略を練るのは作戦を進める上でとても合理的なことなのだ。柔軟な対応が出来る精鋭を送り込み不利になるようならば支援は惜しまない。アメリカの作戦支援はいつも万全だ。表と裏で支援してくれるのは頼もしかった。だが失敗すれば全力で関与は否定する。クロエもステイシーもケジメの付け方は心得ている。クロエは銃を頭に突きつけ躊躇いもなく引き金を引く。ステイシーはナイフで首を迷いもなく切り裂く。こうすることで自分達は消去出来る。


「ステイシー、マヌエラの本拠地はどこだとにらんでいるんだ?お前個人はどこにあると思う?新設されている拠点もあるとのことだが。」


「私はマヌエラ達の本拠地はジャングルの奥地に存在する廃墟の城だと思ってる。本当の本拠地はその地下道。迷宮になっているよ。」


「よく調べたな」


「マヌエラの手下とヤったときにね。勿論アソコは干からびるまで搾ってやったよ。一応マヌエラ一味だから手下といえども許さないからね。」


「恐ろしいやつだな。それで、マヌエラの各拠点で主要なものはあるのか?」


「マヌエラのアマゾンの拠点は本拠地の熱帯雨林奥地の廃城及び地下。各地では主にジャングル、海岸、沼地、滝、山岳の五つ。その下に小さい基地が存在してる。基地の傘下には熱帯雨林を細かく分けたエリア毎の詰め所が。そして更にその下には武器庫や倉庫群、集積所なんかがある。広大なルートで結んであるから密に連絡を取り合える。だからまずは倉庫群なんかを追うと良いと思う。トラックは補給のためにしょっちゅう出入りしてるからね。見張りは倒すんだろうから。それを尾行したりすれば目的地は自ずと見えるんじゃないかな。あとは物資なんかは出来るだけ破壊してね。トラックも爆破すれば良いと思う。近くの村を襲撃して略奪をしてるから小さい集落に行けば情報を得られると思う。私ももっと詳しく現地で調べるよ。」


「かなりの規模だな。確かに戦略物資を奪うのは効果的だし、現地での情報も必要になるな。」


「実際部族達と接触すると変わった情報もわかるからね」


「ブラックマンバについてはどうだ?」


「ブラックマンバは中南米担当のアビゲイルのもとでマヌエラが頭角を表した時期からコンタクトを取ったみたいだ。アビゲイルもマヌエラの本拠地の廃城地下施設にいる可能性が高い。アビゲイルの本拠地については全くわかっていないところが多い。せいぜい孤島に基地があるとか言われている程度かな。あくまでも噂だけどね。」


「孤島?アビゲイルのことだ。カムフラージュに違いない。だがまずは廃城を目的地とするか。アビゲイルもマヌエラといる可能性が高いな」


「アビゲイルについてはマヌエラの出方次第でアジトを特定したらどうかな。」


「ああ。マヌエラの背後にいる以上はあの女のアジトに身を潜めているだろう。ブラックマンバのアジトも大量にあるだろうからな。それら全てを破壊するのも大切だ。サラマンダーの基地にブラックマンバはどのくらいいると思う?」


「表向きはサラマンダー兵士が常駐してるだろうね。内部からはブラックマンバ兵士も戦闘に出てくるだろう。それにアビゲイルが個人で雇った傭兵もいるそうだよ。」


「私兵部隊だけでなく傭兵まで雇ったか。絶対にこの作戦でアジトを掴んでやるぞ。しかしその島は気になるな。」


「探りを入れてみるよ。」


「頼んだぞ。もしかしたら足取りが掴めるかもしれない。」


「了解。」


「本作戦に失敗は許されない。成功すれば名誉が手に入る。しくじれば我々は死ぬ。いつものことだが相変わらずプレッシャーのある仕事だ。」


「それとクロエ。もう一つ話があるんだ。国際的テロリストブラックマンバは精鋭ゲリラサラマンダーと中南米の麻薬売買を一手に牛耳る巨大麻薬シンジケートのタランチュラも手を組んでいるよ。」


「麻薬は金になるからな。ブラックマンバにとっても丁度いい資金源なんだろうな。しかし三つの勢力が手を組んで取引とはな。」


「アビゲイルとブラックマンバは絶対にこの世界から消すべき存在だ。マヌエラとサラマンダーも放っておけば必ず驚異になる。私達で闇を払おう!」


「では出発までは休むか。久しぶりに語り合おう。」


「うん!私もクロエと話すのを楽しみにしていたよ!」


ステイシーは少女のような笑みを見せて酒を持ってきた。今夜は飲み明かすつもりなのだろう。私も作戦の前に色々聞きたいことがあった。さみれた椅子に腰掛けクロエはビールを飲んだ。真夏の暑さに心地よい冷たさだ。ステイシーもビールを飲んでタバコに火をつけた。


「お前は男と上手くいってるようでよかった。前は色々あったよな。大丈夫だったか?」


「本当に辛かったよ。でも、私はこのままではいけないって気づいたんだ。彼がいる限り私は後戻りしないよ。」


「仲良くな」


「クロエこそ上手くいってるんだね。」


「私達は幼馴染みだからな。ジャックとは長い付き合いでお互いのことを知り尽くしている。私の許嫁でもあったし、良いやつだよ。」


「クロエって幼馴染を大切にしてるよね。

やっぱり相性が良いんだろうね。見ていて微笑ましいもん。」


「ただ注文が多いな。もっと挟んでくれとか、先を舌で良く舐めてくれとか、もっと腰を振ってくれとか。あの性欲にはついていけないぞ。」


「クロエったら大胆。良いわね幸せそうで。私ももっと愛し合わなくちゃ。」


「その意気だぞステイシー」


クロエとステイシーの話はお互いの私生活のことだった。過酷な任務についている間、本国に残してきた婿のことが気になる。それに娘のことも。スマホには三人で撮った写メがいつも保存してある。クロエの最愛の人ジャックは優しい爽やかな好青年だった。クロエにとっても良き婿で常に体のことを気にかけてくれる。親子三人での生活は至福そのものだった。彼は人柄がとても良いことで知られていた。ステイシーの婿ジェイソンはパワフルな熱血漢だ。正義感が溢れ、間違ったことは許せない。その心意気にステイシーは惚れた。娘もたくさん出来た。

クロエもステイシーも自分を愛してくれる存在は大切な宝物だった。


「クロエにとっての婿はどういう存在なの?」


「ジャックは私を楽しませてくれる男だ。一緒にいて楽しいし、退屈もしない。アメリカで旅行したときも私を宝物だと言ってハグしてくれた。」


「ラブラブじゃないの~良いね~私も負けてないよ。彼とは時間がある限りデート。そしてモーテルに泊まるの。ドライブデートなんか良いよね~。ワクワクしてきた。」


「前にモーテルで巨大なワニが出てくる映画を見たんだ。あれはトラウマだ。人を襲うワニがな。」


「あれ~?クロエったら以外と怖がりさんなのね。大丈夫よ。目的地とするかに人食いワニはいないから。安心して彼とプレイ出来るわよ。」


「そんなことを言ったんじゃない。はぐらかすな。いくらなんでもモーテルの中にワニはいないだろ。」


クロエは子供の頃に見たホラー映画悪魔の沼がトラウマだった。モーテルの隣に隣接する沼でワニを飼育する経営者が利用に訪れた人間を次々と餌食にしていくのがストーリーだ。その南部独特の不気味な雰囲気が心理的にきつかった。クロエは南部出身のアメリカ人だが実話を元にしたこの映画は苦手だったのだ。クロエはそれ以来モーテルには近づかなかった。ジャックと見たことがあるが何度見てもこれは受け入れられない。主演俳優達の迫真の演技には度肝を抜かされた。暗い雰囲気が苦手なのだ。つまりクロエはモーテルには泊まるのが嫌なのだった。


「クロエに勝ちたいときはモーテルで戦おう。ワニを用意して驚かせるの!気を失わないでね。」


「行くものか。」


クロエはステイシーの冗談に微笑んだ。緊張を解してくれる彼女はやはり心地よかった。ジャックと同じで自分を癒してくれる。


「クロエは怖いもの知らずでワニも食べたちゃうけれど一番敵わないのはジャックかもね。あのクロエを気絶させちゃうほど絶倫なんだもの。激しいんでしょう?」


「ジャックの体力には私とてついていけない。私を抱えあげて攻めるのは流石に奥まで入ってとても気持ちが良い。自然に喘いでしまう。」


クロエはジャックの腹筋が割れた体を思い出した。あの体に抱かれると幸せな気持ちになる。戦闘のプロではなくただの女になれる。ジャックはクロエを深く愛していた。クロエは彼の気持ちを尊重している。ジャックはクロエを駅弁の体位で抱き上げ凄まじい攻めを繰り出すのだ。クロエといえどもこうなってはただ喘ぐしかない。ジャックの体力は物凄くクロエでさえ動けなくなるほどの絶倫ぶりだ。あの太い腕で抱きつかれる感覚はまさに至福で幸せな一時だ。アルティメットソルジャーとして特殊生体兵器、究極生命体として誕生しながらも普通の女として接してくれた。特殊な環境で育ったクロエには今一わからない感覚ではあったが、その尊さを彼が教えてくれたのだ。


「帰ったらまた私と…」


「クロエったらかわいい~!ジャックとそんなにしたいんだね~確かにこう離れるとね~」


「ジャックは私の知らない世界を見せてくれるからな…」


クロエはジャックと交わることで自分の知らない世界を見ることが出来た。パソコンで見た男女の交わりは初めて見たとき意味がわからなかったが生殖行為なのだと教えてくれた。そして身体中を使ったプレイも色々と教えてくれた。口や胸、尻を使うのには驚いた。世界中の男女がこうしていると言う。クロエはジャックと何回も繰り返し交わった。そして娘が生まれた。クロエは自分のお腹の変化にも驚いた。妊娠と言うものがここまで大変だと言うことに気付かされた。娘が生まれても子育てはジャックに任せっきりだった部分がある。私にも責任はあった。極秘任務とは言え家庭を省みなかったその点を深く反省してクロエは母として妻として家族と触れあう決意もしているのだ。




「私を体まで愛してくれたジャックや自分の血を分けた娘を私はもっと愛し合って、愛していく必要があるのだ。」


「素敵な話だね。」


ステイシーはクロエの気持ちが良くわかっている。家庭を大切にしたいが任務のため出来ない。それならば会えるときに精一杯愛し合いたい。軍人家庭の運命だった。それはあまりにも切ない。


「宿命には抗えないか…」


「いや、私は運命を変えてやるさ。」


「明日は早いから今日はもう寝る。」


「それがよさそうだ。」


クロエはステイシーとプライベートの話を楽しむと気持ちを切り替え、翌日からの戦闘任務のために早めに眠りについた。


etc.....

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る